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吉原のお風呂に通っている

吉原の風呂に通っている。
というとあまり聞こえは良くないけど、週に一回エグめの肉体労働があり、汗だくになってしまうので着替えを持って昼休憩の時間に吉原の銭湯に行っている。20分くらい入浴してからまた歩いて会社に戻っている。

吉原は言わずと知れた風俗街。酉の市で何度か訪れているが、こんなに定期的に通ったことはなかった。
吉原大門を歩いていればドブからでてきたような全身ベタベタの自分にも中年のキャッチが「どうぞ」と声をかけてくる。昼間でもやっていることに最初は驚いた。最近は声をかけられる度に何がどうぞなんだろうなぁとその都度不思議な気持ちになる。
ソープが多いのか。ゲイの自分からしたら守備範囲外すぎてよくわからないが、お酒の案内もあるのでキャバなどもあるのかもしれない。キャッチーで色気のある店名がつけられたちょっと派手めの建物の前に中年男性が立ち、笑顔を向けてくる。
女の子に声をかけられたこともあった。「涼んで行きませんか」とのこと。年齢は20代半ば。まあまあの美女だった。まぁ彼女が相手してくれるのかどうかは知らないし、興味もないが、たくましいなぁと関心する。資本主義ここに極まれり。

性欲という三代欲求の一つが作り出した街なんだなぁと思いながら歩くと感慨深くもあるが、よく見ていると蕎麦屋や商店などもあったりして、日常的な面も垣間見えたりして面白い。ちなみにらーめんらんどには一回行ってみたいなと常々思っている。

下手な鉄砲方式なのか、本当にキャッチから声をかけられてしまう。まあ「ゲイです」という札をかけて歩くわけにもいかない。一度気になって吉原にゲイバーはないのかと調べたが、うまく棲み分けができているらしく見当たらなかった。ちなみに浅草の方にはその手の店がたんまりある。

立ち飲み屋でおぴたんという飲み友達に「今日ね、吉原のお風呂に行ったの」と言ったら「そういう混乱するようなこと言うのやめてくれない?」と怒り気味に言われて笑ったことがあった。銭湯で備え付けのボディーソープで汗を洗い流すたびに「間違ったことは言ってないんだけどなぁ」と思い出してニヤニヤしてしまう。

力仕事のあとの水風呂は最高だ。熱った体を一気に冷やしてくれる。その銭湯には天然温泉もあり、湯が滑らかでずっと入っていたいといつも思ってしまう。勢いでビールが飲みたくなるが会社に戻らなくてはいけないので我慢する。

昨日は吉原神社でお参りをして帰ろうと思い立ち、花園通りを経由した。花園通りにもそれらしいお店が並び、暑い中でもキャッチが声がけをしていた。
そして髪を濡らした私を見てキャッチが言った。「お兄さん、もう一軒いかがですか」
ちげーわよ、私は風呂に行ってきただけよ、と思ったが、彼らのお店もまたお風呂なんだと気付き、笑いながら会釈して彼らの前を通り過ぎた。

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