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水を買うようになった

僕が体験した話です。

16歳の時、ガソリンスタンドでアルバイトをしていた。
生まれて初めてのバイトだったが、他のアルバイト方や社員さんにとても良くして頂いた。(店長には何故は嫌われていた)
ガソリンスタンドまで自転車で通っていた。時間にして20分ぐらいだったと思う。
平日は17時から22時、休日は朝から夕方で働いていた。
先程、書いた通り職場はとても良かったのだが、一つだけバイトに行くのが億劫だった。
それは、通勤時に坂があり、中々な勾配だった。
行きはいいのだが、帰りに坂を登って帰らなくては行けなかったので帰りは少し億劫だった。
その出来事が起きたのは、8月頃だったと思う、まだまだ暑さに辟易していた。
その日は、17時から22時の出勤だった。いつも通り出勤し、仕事を終え、自転車を走らせ帰っていた。
8月の夜はまだ暑く、湿気も酷く、汗だらけで不快感を纏ったまま坂の前までついた。
一呼吸と気合を入れ、坂を登っていく。
(余談なのだが、その坂を登り続けていたので、その頃はお尻がかなりリフトアップされた。自分でもビックリするぐらい)
生温い風、段々とペダルが重く、息が切れて、汗が滴り落ちる。
中間部を過ぎたあたりで、もう一つ気合を入れ、立ち漕ぎをして、一気に登って行く。
坂を登りあがった、息が乱れ、汗がより一層、滴り落ち、不快な暑さが体が纏わりつく。
平坦になった歩道をぼーっとしながら、自転車を走らせていく。
走らせていく先に自販機がある、いつも見慣れている自販機。
その日、何故だがその自販機が目に留まった。自販機の近くまで来たら、自転車を降り、自販機の前に立った。
汗は凄くかいていたが、喉はさほど渇いていない。別に飲み物を買いたい訳じゃなかったが、何故か自販機の前まで来た。
取り出し口に目をやる、何かある。それはペットボトルの水だった。
躊躇なく水を手に取る、凄く冷えていて、今しがた買った様な感じだった。
僕はペットボトルの蓋を開けて、一気に飲み干した。空になったペットボトルを自販機の横のゴミ箱に捨てて、また自転車を走りだした。とても当たり前の様に。
しかし、いつも自分ではありえない行動だった。
性格上、得体の知れない食べ物、飲み物は絶対に口にしない、喉が渇いていてもそんな事はしないし、その時はそんなに喉は渇いていなかった。
そもそも、なんで買う気もないのに自販機まで足を運んだのか、とても違和感だらけだった。
僕はその出来事が起こるまで、自分でお金を出して、水を買う事がなかったのだが
その日を境に水を買うようになった。

水は誰かが買って忘れていったのかと思ったのですが
その自販機は歩道者の所にあって、車が止めるスペースがない。
車道に停めて買いに行くことは出来るが、ガソリンスタンドから坂まで対向車、自転車にすれ違っていない。
ガソリンスタンドから坂は一本道なので絶対にすれ違うはず
すれ違う前に誰かが買って取り忘れていたら絶対にぬるくなってるし、水滴も外についてたはず。
ガソリンスタンドから坂は5分以上はあった
自販機の近くに民家はないので買いに来る人はいないはず
そもそもなんでそんな不便な所に自販機があったのか
今はまだあるのかと思って、グーグルマップで調べたらなくなってました。
とても変な体験でした。自分の中では水の妖精が今後、僕に水を買わせようと仕向けたんだなと思ってます。笑

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