見出し画像

膝から下の足

一緒に働いていたaさんから聞いた話

「怖い話が好きなですよ」とaさんに話したら教えてくれました。
その時、僕は食品加工場で働いていました。その仕事は時給制ではなく、出来高制で一枚でいくらという感じで
出勤時間も何時からでもよく、休みも自分で決められて環境はとても良かったです。
僕は大体、朝8時から18時位まで働いていました。
遅くなって19時過まで居た事もありました。
aさんも大体同じ時間帯で働いていて、他の方は大体8時から16〜17時で帰る人が多かったと思います。
一応、24時間、開放していたのでたまに夜に作業している人もいました。
そんな加工場だったのですが、新しい加工場を作るという事で、移転となり、そこで作業をする事がなくなりました。
理由は自社で収穫をした物を加工していたのですが、収穫する場所が遠く、運搬作業が大変なのと、事業拡大の為、今までより広い場所にする為の事。
新しい加工場は少し遠かったのですが、通い働いていました。
新しい加工場で作業しているとaさんと怖い話になり、aさんから色々と怖い話を聞かせてもらえました。
aさんは幽霊が見れたり、感じる事が出来るみたいでした。
色々と聞かせてもらってる中「そういえば、前の加工場にもいた」と教えてくれました。
僕が「えっ、そうなんですか」と目を丸くしながら話を聞きました。
加工台で一人で作業をしているとたまに現れる。基本的に下を向きながら作業をするのだが、足元に自分ではない足がいつの間にかに現れる。
ビックリして、恐る恐る下から上に足を見ていった。膝から上がない、膝から下の足がそこにはあった。
一瞬、顔を背け、また足元に目を戻したら既にいなくなっていた。
その日を境に誰もいないのに足音が聞こえたり、物が勝手に落ちたり、足元に膝から下の足が現れたとの事でした。
一度だけ、僕もその加工場で同じ様な体験した事があった。
一人で作業していると、誰かが加工場に上がってくる足音がした。時刻は18時ぐらいだと思った。
その加工場は、一階が休憩室になっていて、二階に加工場がある、加工場に上がる際に短い階段を上がり、そこからスロープで上がって行く。必ず誰かが上がってくると足音で分かる。
足音がして、社員さん帰って来たのかと最初は思ったのだが、一向に加工場に顔を出さない。
「可笑しいな、聞き間違えかな」と思って作業を続けていると、20分後にまた足音がした。
スロープを上がってくる足音、すぐに社員さんの声で「お疲れ様」と挨拶が飛んでくる。
「お疲れ様です」と僕は返し「今、戻ったんですか?」と聞いてみた。
社員さんは「そう、今帰って来たんだ」と返って来た。
その時は最初の足音は勘違いだと思っていたのだが、その話を聞いて、膝から下の足が上がって来た足音だったかもしれないと思った。
スロープを右手に上がると加工場、左手に行くと部屋がある。
そこの部屋は加工品の仕分けや、搬送の準備をする部屋。元々は飲食店の宴会場の所だったがコロナで一旦、店じまいをしていたので、使わせてもらっているとの事だった。
そこの部屋はドアが開いている事が多く、膝から下の足がそこにはいっていくのをaさんは度々、見たと言う。
飲食店と食品加工の経営者が同じで、飲食店が運営していた頃、aさんはたまに隣の飲食店で食事をしていたと言う。
コロナが以前よりかはおさまって来たので飲食店が再開する事になった。一度だけ、加工場の人達とご厚意で悟飯頂いた。お肉がとても美味しく、プライベートでも足を運ぼうと思えるほど。
aさんが旦那さんと旦那さんの両親を連れて、再オープンした飲食店に食べに行った。料理に舌鼓を打ち、楽しい食事会になった。
aさんがトイレに行こうと席を立った。狭い通路で男性トイレが手前で奥に女性トイレがある。
その通路に入る手前でaさんが気持ち悪さに襲われる。aさんはこの気持ち悪さの原因は分かっていた。
「幽霊がいる」その時に感覚だった。いつもなら、そう感じたらその場から離れたりするのだが、トイレに行くには通らないと行けない。
「嫌だな」と思いつつ下を向きながら通路を歩く、歩くにつれて気持ち悪さと悪寒が体を襲う。
男子トイレを過ぎた辺り、足元にあの膝から下の足が出てきた。aさんはビックリして、急いで女性トイレに駆け込んだ。
どぎまぎしながら、個室で用を足し、走るように帰っていった。
そこからも、膝から下の足が度々、出てくるし、足音、物が落ちたりしたと言う。
ある日、aさんが一人で作業をしていると、また足元に、膝から下の足が現れた。
aさんはその日、とてもイライラしていた。
そんな中、また膝から下の足が出てきて、無性に腹立たしく思った。
心の中で「いつも、いつも邪魔なんだよ!どっか行け!」と呟いた。その瞬間、膝から下の足が消えてしまった。
その日、以降、膝から下の足や、足音、物が落ちる現象がなくなったと言う。
膝から下の足は未だにあの加工場、飲食店で彷徨っているのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?