【超詳細】学生HRプラットフォーム「Handshake」の成長をたどる

「2018年~2020年のアメリカ全大学生の49%がHandshakeで内定を獲得」

驚異的な実績を出している人材マッチングプラットフォームHandshake。

総資金調達額250億円超え、推定評価額14億ドルのユニコーン企業の創業から成長戦略まで超詳細に書いたNoteです。
※初noteですので、アドバイスあればどしどし送って下さい。
本人、成長したがっています!!

はじめまして!早稲田大学2年商学部の纐纈翔奏(こうけつ かなで)と申します。学生HR事業で起業したいと考えていて、Skyland Venturesの木下さんに相談したところ、Handshakeの事例が参考になるとのアドバイスを頂いたのでnoteに成長フローをまとめました。


1. Handshakeとは

Handshakeは新卒キャリアや学生インターンに特化した人材マッチングプラットフォームSaaSを提供するスタートアップです。
アメリカ最大のアーリーキャリアネットワークとして学生、大学、企業の3方向へサービスを展開しており、2021年10月現在、累計1800万の学生、1400の教育機関、60万社の雇用主(Fortune500のすべての企業含む)という数のユーザーを獲得しています。サービスの内容とビジネスモデルを簡単にまとめました。

 1-1. Handshakeサービス紹介

学生へのサービス(すべて無料)

①大学キャリアセンターとの連携による包括的な就労支援プラットフォーム
②パーソナライズ化された、国内全てのインターン、新卒採用の情報提供
③人事担当者とのメッセージ機能、一対一のミーティング設定
④アーリーキャリアにおけるスキル、コネクション形成
⑤同じ境遇の同級生、先輩とのコミュニティ形成

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企業へのサービス(無料)

①プラットフォーム内の求人掲載
②プラットフォーム内のオンラインのイベントや説明会、面接
③学生へのダイレクトメッセージ機能
④応募者のトラッキング機能

(有料)

課金制度「Talent Engagement Suite」→カスタマーサクセス
以下、実際のサービス例
・より高度なアナリティクス機能、それに基づく求人広告改善提案
・キャンパス訪問や、応募者フォローの際のROI増加のための具体的方法
・「School Explorer」雇用主が求める人材はどこにいるのか、場所、大学名に縛られない提案による顧客の目標達成への貢献

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キャリアセンターへのサービス(有料)

①学生、求人情報管理ツール提供
②場所に縛られない求人情報の提供
②他大学との比較によるベンチマーク設定
④求人情報の安全性向上(詐欺まがいの求人の排除)
⑤Handshake経由での学生の内定獲得による、キャリアセンターの実績

従来サービス


Handshakeモデル

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 1-2. 差別化戦略

競争を勝ち抜くために差別化は必須です。Handshakeはどのように競合優位性を保っているのでしょうか。

①無料の求人掲載
従来の人材マッチング事業では、求人掲載費を企業に請求するモデルがほとんどでした。LinkedInもそのモデルになっています。しかしHandshakeはどんな企業がどんな求人を誰に何度アピールしても料金はかかりません。またオンライン説明会、面接、学生とのメッセージ機能も全て無料。企業からはプレミアム課金制度「Talent Engagement Suite」でより優れた人材採用を目標とするカスタマーサクセスで収益を得ています。

②プラットフォーム上の情報の信頼度

大学キャリアセンターを顧客にすることはただユーザーボリュームを獲得できるだけじゃありません。大学が管理している情報なので求職者の情報がウソをつけないようになっています。またキャリアセンター員と学生のやり取りが逐一アップデートされるため、その都度適切な方向性で学生を支援できるのです。
また大学側も求人の内容が詐欺まがいでないか、過去の苦悩からつい不安になってしまうことも多くあるそう。Handshakeにアップロードされた求人は蓄積されたビックデータから正当だと判断されたもののみであり、最大限の保証はされていると言えるでしょう。

③パーソナライゼーション

Handshakeは不完全雇用、キャリア不平等の問題(後ほど解説)を解決する独自のアルゴリズムを導入しています。

パーソナライゼーションに必要なのは膨大なデータです。学生が手動で入力するデータ(興味関心、能力、スキル、年齢、大学等)の他に大学が持っている学生の正確な情報(履修クラス、単位、成績等)を組み合わせて、仕事とその個人との関連性を確かめます。Handshakeはよりできるだけ精度を高めて、関連度100%に近い仕事のみを選択して表示するのかと思いきや、そうではないのです。
Handshakeはセレンディピティを考慮してアルゴリズムを設定しているという。
セレンディピティとは、「素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。 また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。」という意味。
つまりHandshakeが学生に表示する仕事は全てが関連度超高めのものではないということです。具体的には約60%の精度になるようにアルゴリズムが調整されているようです。
これにより、自分で気づいていない興味や得意分野を知るきっかけも与え、学生の視野を広げる仕組みになっているのです。


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 1-3. 資金調達まとめ

2014年:ミシガン工科大学卒業後、Garrett Loard(現CEO)、Scott Ringwelski(CTO)、Ben Christensen(取締役)によって設立

2015年5月(シード):True Venturesのリードで350万ドルの資金調達

2016年2月(シリーズA):Kleiner Perkinsのリードで1050万ドルの資金調達

2016年12月(シリーズB):Spark Capitalのリードで2000万ドルの資金調達
               評価額1億800万ドル。

2018年10月(シリーズC):北欧最大のプライベート・エクイティ・ファン
             ドであるEQT Venturesのリードで4000万ドル
             の資金調達。同時に欧州市場へ進出。
             評価額2億7500万ドル 。     

2020年10月(シリーズD):GGV Capitalのリードで8000万ドルの資金調達
             推定評価額5億5000万ドル。

2021年5月(シリーズE):Spark Capital, Lightspeed Venture partnersのリ
            ードで8000万ドルの資金調達
            推定評価額14億ドル。

創業後、7年で累計2億3400万ドル(約265億円)の調達

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 1-4. 累計ユーザー数遷移

(初期の大学提携数、企業数はデータ見つけられなかったので概算で算出しました)

2015年5月:350万ドルの資金調達 25万の学生ユーザー(以下stu)、約15校の大学と提携(以下edu)、約5,500社の雇用主(以下emp)

2017年1月:2000万ドルの資金調達 stu400万ユーザー、edu200校、emp8.5万社

2018年10月:4000万ドルの資金調達 stu1400万ユーザー、edu700校、emp30万社

2020年10月:8000万ドルの資金調達 stu1700万ユーザー、edu1,000校、emp50万社 

2021年10月現在:stu1800万ユーザー、edu1400校、emp60万社(Fortune500のすべての企業含む)

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2. 起業までのバックグラウンド

 2-1. アイデアの原体験は在学中

Garrett Load(現CEO:以下Garrett)はミシガン工科大学在学中に、Handshake設立の原体験を得ました。
コンピュータサイエンスを専攻していたGarrettは、作動するサーバーやコンピュータコンポーネントを探して大学のゴミ箱を漁っていました。彼の宝探しを偶然聞きつけたある教授が彼に興味をもち、二人は仲良くなります。その出会いが彼のキャリアに大きなコネクションをもたらすことに。

教授が推薦状のおかげで、Garrettは一流研究機関のロスアラモス国立研究所でのインターンという貴重な経験を得ることが出来たのです。コネクションも仕事の経験も無かったGarrettにとって、その出会いはまさにゴミ箱の中で見つけた小さな運という感じでしょう。

この話からビジネスにおけるコネクションの大事さがわかりますし、「パーティーで話せば盛り上がる良い話だ」と彼自身も言っています。しかし彼は同時に、学生のキャリア機会に不安感を覚えたのです。

「学生に対するキャリアの機会が不平等である」

「自分の様に偶然のコネで機会を得れる学生だけが望むキャリアへと進めるようではだめだ。」
人脈や運が大きくキャリアを左右するようでは全く平等じゃない、個人の能力も発揮できない職に就くしかなくなってしまうと彼は感じました。
また名門大学に通う学生だけが広くキャリア選択の権利がある、興味の向く分野へ自分の身を置くことが出来る、または企業からダイレクトオファーが来るようなケースも当時から少なくありません。多くの学生は選択肢が狭く、彼らの持つスキルや個性を最大限に活かすことのできる機会提供がなされていませんでした。

「距離に縛られないキャリア選択を提供する」

各都市にオフィスを構えられるのは大企業だけ。その他の遠方の求人情報は学生に伝えられず、制限された情報しか彼らは知りません。
またGarrettのいたミシガン工科大学はかなりの田舎で、最寄りの都市ミネアポリスやミルウォーキーまでは車で6時間。
説明会や面接のために毎度遠出をしなければならない同級生をみて、オンラインプラットフォームを作る決意をします。

コネ、人脈、運だけに左右されない就労機会の民主化
国内全ての仕事を選択肢にできるオンラインプラットフォームの提供


自身の体験から、学生が直面している就職活動でのペインを見つけ出し、新しいアーリーキャリアネットワークの構想を得ます。Garrettは卒業後、同級生のScott Ringwelski(CTO)、Ben Christensen(取締役)とともにStryder(現Handshake)を設立しました。

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 2-2. アメリカ国内の大学生、就活の現状

①不完全雇用

不完全雇用・・・自分の能力を十分に発揮できていないか、自分のスキルを活かせない仕事を仕事をしている状態のこと

全米の43%以上の卒業生が、大学卒業後の最初の仕事で不完全雇用であり、そのなかの50%が卒業後10年経っても不完全雇用のままというデータも。(2018年Strada-Burning Glass調査より)

まさに自分にあった仕事をしていない、自分の長所を活かせていないという大きな課題があるのです。


②不平等なキャリア機会

なぜキャリアが平等ではないのか。それはアメリカの大学の学費の高さにありました。四年制大学の平均学費は州立で年間24,000ドル、私立で32,000ドルです。一般にレベルの高い大学ほど高くなり、州立のUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が35,000ドル、私立のハーバードは45,000ドルです。最も潤沢なキャリア機会が与えられる私立名門大学へ四年間通うには、それだけで約2000万円。仮に行けたとしても大抵は奨学金を借りることになり、卒業時の負債額は平均して30,000ドルとなっています。
私立大学に通う学生のみにオファーが殺到し、その他の学生には選択肢が少なすぎる。しかしそもそも私立大学には行けない学生のほうが圧倒的に多く、その割合は非常に不均衡でした。


③オンラインマッチング機会の需要増加

アメリカの広大な土地を考えると、車や電車、あるいは飛行機にまで乗って面接を受けに行くのはあまりに合理的ではありません。それこそ費用が高くなります。
Web上で採用担当者と求職者が繋がれるサービスの需要は伸び続けていました。

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 2-3. 競合LinkedIn をどう捉えるか

Handshake発足当初から、HR事業の最大手LinkedInは既にそのポジションを築き始めていました。当時のLinkedInは既に全世界に3億人(現在は7.3億人)のユーザーを獲得していました。

「専門家同士のネットワーク上でコネクションを見つけ出し、活かすことの出来るサービス」をつくろうと始まったLinkedInは、ある程度のキャリアを築いてきた中堅社員をターゲットとし、彼らがビジネスコネクションを築けるSNSを作り上げました。

これに対しHandshakeは初めからターゲットは学生でした。まだキャリアのない、就労経験もないユーザーに対し、初期のキャリア、コネクション形成をサポートするプラットフォームを提供することに決めました。

パイオニアであるLinkedInと競争するのではなく、争いを避けるように学生リクルーティング市場へジョインします。

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 2-4. 既存のサービスのネックを全て解決する

Handshakeの戦略は至って単純です。既存のサービスのネックとなる部分を全て改善したプロダクトをつくる。これだけです。具体的には

学生
①不完全雇用
②キャリア機会の不平等
③場所の制限による求人情報へのリーチ不足

大学
①他大学の情報不足
②非効率な学生情報管理ツール
③安全性の保証されない求人情報

企業
①求職者のウソの情報
②オンライン空間の採用イベント、面接
②魅力的な学生がどこにいるかわからない

どのような順でプロダクトを作成、改善し、これらのネックを解消したのか。
ここからは成長フローを時系列で見ていきます。

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3. Handshake成長フロー

大学のためのプロダクト作り

2014年に創業後、一番最初に行ったのは、大学のキャリアセンターが使用する学生の就活情報管理ツールの作成でした。
マッチング事業で最も重要なユーザー数(学生)を獲得するため、またキャッシュを確保するため、学生の就活を支援するキャリアセンターに目をつけたのです。
当時の各大学のキャリアセンターが使うツールはバラバラで、使い勝手も悪く、Handshakeが付け入る隙きは山程あったそう。

Handshakeはフロントエンドにとにかく重点をおいてUI/ UXの快適さを追求し、使いやすさを売りにプロダクト開発をはじめました。創業者3人がエンジニアということもあり、当時は彼ら3人だけで作りはじめ、出来上がったら大学にもっていき営業をひたすら繰り返す日々。
現場で聞き出したニーズを満たすようにさらに改善していきます。

コンサル会社との提携でブースト(シード期)

コツコツと改善を続け1年半後、顧客大学数が10を超えた頃、Handshakeに転機が訪れます。
2015年5月、初めての資金調達(350万ドル)を行うとすぐに、社内チームをエンジニア中心に40名まで増員、さらにコンサル会社Headwayを外部スタッフとしてチームでプロダクト開発を一気に加速させます。一年半の提携期間を終える頃には、顧客大学数は大幅に増え、学生ユーザーは25万人から400万人に。学生情報が充実すると企業の数は一気に8.5万まで増え、マッチングプラットフォームとして間違いなく転換期となりました。
1年半の間プロジェクトの管理は主にHeadwayが行っていたようです。
他社ツールからHandshakeへ乗り換えた際のデータ移行、学生がイベントや求人情報の自分とのフィット率がひと目で分かるダッシュボード作成(画像は実際のダッシュボード)、営業活動の資料作成等、仕事は多岐に渡りました。

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※HeadwayはUI/UX設計からプロトタイプ設計、MVP作成、さらにはユーザー検証、社内チームが採用されるまでの人員補充までしてくれる、いわばスタートアップ専用の何でも屋といったところでしょうか。気になる方は下にリンク貼っておきましたのでどうぞ。

マッチングプラットフォームはユーザーの数がモノを言うWinner takes allの色が特に強い事業モデルです。
先行して動くことが何より利益をもたらすと考えたHandshakeは、
Headwayという強力な外部リソースをフル活用し、一気にプロダクト開発を推し進め見事ユーザーを獲得したのです。

そしてこれまでプロダクト開発ばかりに資金を使っていましたが、このタイミングでWeb広告を打ちはじめたようです。

準一流キャリア、マイノリティのシェアを伸ばす

Handshakeは大学だけでなくコミュニティカレッジに対してもサービスを開始しました。

コミュニティカレッジ・・・公立の2年制大学で、少ない学費で教育機会を与えるために始まった。学費は年間5,000~10,000ドル。学費の高騰により現在はアメリカの大学の約4割がコミュニティ・カレッジに通い、卒業後4年制大学に編入するケースが多くなっている。

母数の多いコミュニティカレッジへのサービス提供はマッチング実績を大きく伸ばすことに。
実際、2018~2020年卒の大学生の49%はHandshake経由で内定を獲得しています。

またマイノリティな教育機関とも連携をとり(現在100校以上)、就労機会の民主化というミッション達成に近づいてきています。
具体的にはアメリカ国内の歴史的に黒人の多い大学やヒスパニック系の学生が多く所属する学校(ヒスパニック・サービング・インスティテュート)などに積極的なサポート支援を行っています。

欧州市場への進出

2018年10月 北欧最大のVC、EQT Venturesからの資金調達をきっかけに欧州市場の進出。事業モデルは変えず、大学との提携数を増やすことで学生ユーザー数の拡大を目指しています。

企業への課金制度
また同時期に企業への有料課金サービスを開始。簡単に言えば採用コンサルで、企業の具体的な採用ニーズを満たすためのサポートをしている。

・より高度なアナリティクス機能、それに基づく求人広告改善提案
・キャンパス訪問や、応募者フォローの際のROI増加のための具体的方法
・「School Explorer」雇用主が求める人材はどこにいるのか、場所、大学名に縛られない提案による顧客の目標達成への貢献


新型コロナウイルスに最速で対応する

2019年12月に新型コロナウイルスが流行ると、対面の説明会は開けない、キャンパスは閉鎖され企業が行けないばかりか学生は故郷へ帰らなければいけなくなりました。
以前からオンラインプラットフォームに目を付けてサービス展開していたHandshakeは激増する需要に応えるため、バーチャルイベントにフォーカス。エンジニアを大幅に増員して3ヶ月でプラットフォーム内のバーチャル採用ネットワークを作り上げました。
さらにメッセージ機能、バーチャル説明会、OB/OGネットワーク、1対1ミーティングを整えると、すぐにユーザーに届けました。
Handshakeを使って企業とコンタクトをとった学生は9,800万人以上、2.5万社以上がバーチャル採用イベントをHandshakeで実施。
88%の企業が初期の人材採用における最も重要なツールとしてHandshakeを挙げており(当社調べ)、市場でその地位を一気に確立しました。


新型コロナウイルスに最速で対応して急成長できたのは、パンデミックが起きる前からバーチャル採用ネットワークを作っていたからです。場所に限られず、アメリカ中の求人条件を学生に提示するサービスを当初から提供していたため、バーチャル採用を成功させるための知識と技術を既に持っていました。


アーリーキャリアからミドルキャリアへ

学生の第一歩を支援するアーリーキャリアネットワークとしてトップに立ったHandshakeが次に目指すのは、ユーザーの第2、第3の職探しのサポートです。10億ドル市場の新卒、インターン特化型から事業を拡大し、人材採用という100億ドル市場へチャレンジすると公言しています。

学生の経済的問題も解決

上で述べたように、大学の学費の高騰から、アメリカの大学生は卒業時に平均3万ドルの借金をしています。そしてこのローン返済までの平均年数は20年となっています。
彼らのミドルキャリアをサポートすると同時に、この問題も解決していく必要があるとGarrettは言います。
学生ローン返済のマッチングサービスを予定しており、今よりも包括的な支援プラットフォームへと成長していくでしょう。

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4. 成長フローまとめ

学生のキャリア機会平等をミッションにしたHandshakeはいきなりマッチングプラットフォームを作ったのではなく、学生の情報を持っている、そして顧客にすることでキャッシュを確保できる大学を狙いました。
そしてユーザー数を獲得した後、マッチング事業を加速させる。ユーザーの数がとにかく大事なマッチング事業において賢い戦略だと言えます。

アメリカの資金調達額にはやはり驚かされますね。Garrettらのチーム力、プロダクトの将来性はもちろん素晴らしいですが、一年で4億円近く調達出来る環境はさすがです。
Handshakeは調達した資金で多数のエンジニアと総合的なサポートが受けられるコンサル会社を雇い、一気にグロースさせました。
初期に迷いなく資金を投下しプロダクトで先行したことで多数のユーザーを獲得した、軌道に乗るためのポイントをしっかり抑えています。

初期のユーザー獲得は、大学への営業活動、そして求人掲載費がかかっていた従来の人材プラットフォームに対し、無料で求人掲載できるようにしました。このインパクトで企業を参加させることに成功。広告に資金を投下したのはその後のようです。
学生と企業の両側に適切なアプローチをかけて好循環のサイクルでユーザー数を伸ばしていきました。

また新型コロナウイルスはHandshakeにとっては好都合でしたね。パンデミックにより全学生がバーチャル採用ネットワークを使わざるを得ない状況になった運が良いとしか言いようがありませんが、以前からオンラインのプラットフォームを展開していたHandshakeは、プロダクトを補充してこの波に一気に乗って成長を加速させました。

これまでの成長フローを見ると、競合に対して上位互換となるようなプロダクトを作り続けていることがわかります。
大学キャリアセンターの学生情報管理ツールを他社より圧倒的に使いやすくして乗り換えさせる。独自のアルゴリズムでその学生が本当に必要な情報を提供する。企業が負担する求人掲載費を無料にする。
他より便利なモノをつくるという当たり前のことを徹底して市場に認められていきました。

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5. Handshakeを日本に取り入れるには

Handshakeのプロダクトは日本においても同様に需要があると考えて良いでしょう。また大学のキャリアセンターの情報管理ツールから、オンラインプラットフォームのSaasまでつなげるのは新しさもあります。
似ているサービスを提供している規模のデカめの企業は株式会社ディスコです。大学のキャリアセンターに「キャリアコンパス」というツールを提供してそこで得られた学生情報と、「キャリタス就活」という一般的な就活支援アプリのユーザー情報を紐付けています。
ダイレクト・リクルーティングのプラットフォームを提供をすれば、よりパーソナライズ化された就活支援を行えますね。

日本の就活の現場を見ると、めちゃくちゃ入りたい会社でもないのに堅苦しいスーツを着て、未だに圧迫面接を受けるような状況で精神的に疲弊している学生が多く見受けられます。
ダイレクト・リクルーティング(採用担当者と直接やり取りして内定まで獲得できる)をオンラインで提供すれば、彼らの負担を減らしながら自分を活かせる職場を提供する機能として市場に認められる可能性は高いと思います。
また日本は他の国と比べて、特に個性が死んでいると思います。
学生が自分たちのスキル、能力、興味関心を自由に発信できる採用プラットフォームを提供することで、学生の個性が輝く、さらに企業はピンポイントで育てたいポジション、任せたい仕事に合った人材に直接アプローチ出来ます。動画で発信できるようにすれば、よりリアルを届けられます。
ダイレクト・リクルーティングが一般的になれば、企業のオフライン採用コストは抑えられるし、学生も面倒な就活プロセスをスキップして自分にフィットした職を探すことができます。
またオファーを受けるために学生は自分の得意や専門的なスキルを伸ばそうとしたり、その手段として学生インターンがより身近になれば、結果的に日本の人材レベルの質の向上も期待できる。
ダイレクト・リクルーティングがもたらす効果は大きいと考えています。

ご精読ありがとうございました!! 纐纈翔奏(こうけつ かなで)




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