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ソラノカナタ アナタノカケラ episode.1

episode.1

【略奪】



奪うのではない。
欲しいから手に入れる、それだけだ。

…………と、
"彼ら"は━━━━━オリオンの彼らは言った。
決して、その星の民すべてが"そう"ではないとしても
高い知性、科学力、強い好奇心、身体能力をもつ彼らは………彼らの一部は
『求める』ことに対して貪欲であった。

もちろん、科学力を 他の星や 様々な問題への解決策へと尽力を惜しまない者もいたが
他の追随を許さず ひたすらに信念を突き進む性質は
やはり同じだった。

……………………悪意はないのだ。決して。




ふたりの別れは唐突に訪れた。

彼……のちにエアと呼ばれる……が オリオンからの宇宙船を見に行き
彼女……同じくスィーと呼ばれる……は ふたりの棲家へ戻ろうとしていた。
いつもより大きな宇宙船が
いつもとは違う場所へ現れたことで、森も生き物も うろたえていた。

スィーは途中で見つけた 怯える乙女たちを励まし、連れ立って帰ることにした。
乙女たちは スィーよりも少し淡い、まだ『生まれたばかり』の色をしていた。

震えながら木陰にいた幾人かに声をかけ、

そのまま移動しようかどうか迷っていた時。


「待て。お前たちはなんだ。なぜそのような色をしている」
と  低い声が 乙女たちを呼び止めた。
「なんと弱々しいエネルギーだろうか」
「我々とは違う構造をしているようだ」
「持ち帰り、研究しよう」
「中身はなんだ」
「動力はどうなっている?」
ガチャガチャという金属音に数人の声が重なった。

大岩の上に
宇宙船の光を背に浴びた、
オリオンの戦士たちがいた。
身体は大きく オリハルコンの甲冑を纏っている。

「よし、持ち帰ろう」

ひとりが言った。
好奇心に満ち溢れた 無邪気な目。

乙女たちは 身がすくんで動けず、
またたく間にオリオンの戦士たちに囲まれた。
抗うことなく 宇宙船へと連れられていく。

ひときわ輝く甲冑の男が スィーの腕を掴んだ。

全身が総毛立つ。
見上げると  男と目が合った。
赤銅色の瞳。
スィーも驚いたが
男もまた 目を見開いた。

身体全体が押し流されそうなほどのヴィジョンが全身を駆け抜けた。
絶叫したような気もするのに
何も聴こえなかった。

「お前は……"何だ"?!」

男の目が 炎のように光った。


[あなたを知っている………いえ、"知ってしまったから"…………?]
ぐらり、とスィーの意識が遠ざかった。
懸命に エアの瞳を思い出す。

指先を


銀の髪を




声を




いとしい







※便宜上、有名所の星の名前を使わせていただいておりますが
全くのフィクションです。
史実や出来事には関係ありません。






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