たとえばカメの歩みでも
『自分を動物にたとえると?』
この質問、人生でそれなりにされてきました。
大抵、哺乳類に当てはまるものが思いつかなくて、カメかなぁ、と答えることが多かったです。
行動がのんびりで、何か不安があると甲羅にこもって、自己主張が少ないところ。
そういう、あんまりプラスじゃないところが似ているなぁ、となんとなく思っていました。カメにしたらいい迷惑でしょうけど。
そんなイメージのカメでしたが、ある時カメの特性を聞いて、少しだけプラスのイメージが湧きました。
カメは構造上、後ろに下がることができないそうです。
嘘か本当かわかりませんが、危険があっても甲羅に籠って耐え抜いて、そうして、危険が去ったなら、そのまま前進するのだと。
そうか、下がれないのか。
ぼんやりとした絶望感と、それ以上にふわふわとした安心感。
そういうふうにできているのなら、そういうふうに生きるしかないからです。
まるで絶望みたいな言葉かも知れませんが、それでも、前に進めるつくりをしていてよかったと、そう思いました。
「そういうふうにできている」ものを受け入れるのは、多分人より少しだけ得意だと、僅かながら自負しています。
世の中には、走り続ける努力家のウサギも、走り続けられないカメもいます。
追い抜かされて、焦って、苦しんで、甲羅にこもってしまっても、首を出したら進み続けることができる。
そういう生き物に似てよかったな、と今では思います。
例えばカメの歩みでも、前に進むことができるなら。
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