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28℃で凍ると話題のアレって何?
今回の部員日記は理工学部4年男子部マネージャーの淺井夏菜が担当させていただきます。
さて、8月目前、とうとう戻り梅雨も明け始め、完全に夏を感じる気温となってきましたがみなさまいかがお過ごしでしょうか?
最近の練習では選手の熱中症を心配するあまり、自分も知らず知らずのうちに熱中症になりかけるという本末転倒のようなこともあり、夏の過酷さを実感しています。
毎年この時期になると夏を乗り越えられる自信がなくなります。といいながら過去3年乗り切っています。
そんな暑い今年の夏、去年にはあまり見かけなかった新たな暑さ対策グッズが登場したとのうわさを聞きつけました。
それが、
28度以下で凍るICE RING
![](https://assets.st-note.com/img/1658374123199-waRiFlb8AI.png?width=1200)
現在様々なお店で売られています
28度以下になると自然に凍る特殊な材料を用いているため、冷蔵庫で10分、流水で15分、冷房の効いた部屋に置いておくだけでも凍るという画期的なグッズです。“冷凍庫に入れなくても凍る” ということです。
何を言っているのか分からない人もいるでしょう。
体温はおよそ36度(直射日光を浴びれば37度)なので、このICE RINGとの温度差はおよそ-8~-9度となるので冷たいと感じるのです。
結露もしないし、流水で凍るなんてめちゃめちゃ有能じゃないか ということで私は購入しました。ちなみにまだ届いていません。
使ってよかったら周りに勧めようと思います。
という今年発見した暑さ対策グッズの紹介をするだけで終われるわけもなく、性懲りも無く
「ハテ、この28度で凍るつまり28度に凝固点がある材料ってなんぞや……」
と好奇心と興味を掻き立てられたので、ここからは私の現在の専攻(材料化学)と少し近いお話となります。圧倒的自己満と、自らの勉強もかねてまとめたものとなっています。
化学のお話は全く体が受け付けません…という人はこのまま "ICE RING" とググって買うか検討してください。(案件じゃないです)
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化学のお話が受け付けられる人、ありがとうございます。
それでは、
この材料について
PCM素材(相変化熱対策素子)
という材料だそうですが、これは化学的な名前ではなく、物質としては
エチレン・メタクリル酸エステル共重合体・ポリスチレン系熱可塑性エラストマー
というものです。
ブラウザバックは待ってください、あとでちゃんと説明します。
PCM素材(相変化熱対策素子)
相変化: 固↔液などの変化
熱対策: 温度の急激な変化から対策する
というところから、Phase (相) Change (変化) Material (材料)(PCM) 素材と名付けられたようで、元々は-270度の宇宙空間を移動する宇宙飛行士の体を守るために開発された新素材であったところから転用されました。
この固↔︎液の相変化が、水では0度であるのに対して、この物質では28度であるというわけです。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/83083213/picture_pc_9343173a2b8a1f508777e274f8718e50.png?width=1200)
宇宙で活用されていた素材がこの地球でも活用できてなおかつ困っていたことが解決できるなんて、
「ニーズは全く違うところにでもどこかに落ちているのだな」
と改めて思い知らされました。
次、
物質について
①"エチレン・メタクリル酸エステル共重合体" はそのままの名前の通り、”エチレン”と”メタクリル酸(由来の)エステル”がくっついたものです。
②”ポリスチレン系熱可塑性エラストマー” 特に "熱可塑性エラストマー(TPE)"というのが今回の実用化において有用なものだと思われます。
・熱可塑性: 熱を加えると形が変わる
→ いわゆる"プラ板"を想像してもらえたらわかりやすいでしょう。トースターで熱を加えるとぐにゃっとやわらかくなり、外に出し冷やすと硬くなるアレと同じようなものです。時代を感じる例ですね。最近プラ板見なくなりましたね。
・エラストマー: ゴムのような弾性力をもつ
→ ゴムは加硫(硫黄を加える)ことで弾性力が生まれますが、このエラストマーは硫黄を加えなくても弾性力と柔らかさがある物質です。この加硫の工程には時間がかかってしまうので、時間的なコストも削減できているものです。すごいですよね。
つまりまとめると、28度以上の熱を加えるとドロッとした(弾性力のある)液体になり、28度以下に冷やすと固体になる。
また、その液体と固体の行き来を繰り返し行うことができる。すなわち再利用が可能な画期的な新素材であったわけです。
さあこれで、この材料が少しわかったんじゃないでしょうか?
クーラーの効いた部屋にいるのもいいですが、たまには暑さ対策を十分に行ったうえで太陽の下でたくさん楽しいことしませんか?
なんてったって、
2022年の夏は一度きりなので。
ちなみに28度を下回るまではこのグッズの出番があるってことですね。あと2ヶ月は使えそうですね。(案件じゃないです)
参考文献
・28度以下で自然に凍結?話題の暑さ対策グッズ「ICE RING」を使ってみた | マイナビニュース (mynavi.jp)
・宇宙服の技術を応用!28℃以下で凍る冷却素材”PCM"で首筋ひんやりクール!|マクアケ - アタラシイものや体験の応援購入サービス (makuake.com)
・熱可塑性エラストマー(TPE)の多様性 スチレンブロック共重合体(SBC) 熱可塑性スチレンブロック共重合体(TPS)|KRAIBURG TPE(クライブルグTPE) (kraiburg-tpe.com)
・TPEとは?- 熱可塑性エラストマーを知る - クラレ (kuraray.com)
上記、参考にしたページを掲載しております。もっと詳しい材料についての説明や、実際使用してみた使用感などについても載っておりますので、気になった方は是非リンクから飛んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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