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山内朋樹著『庭のかたちが生まれるとき』

山内朋樹著『庭のかたちが生まれるとき―庭園の詩学と庭師の知恵』
(フィルムアート社、2023年8月30日初版発行)


「庭」を「詩」、「石」を「言葉」として読めば、まさに詩論として読める異色作。

例えば、第1章「石の求めるところにしたがって〈庭園の詩学①〉」の3節「3 他性の濁流をおさめる」の中の文章(p.61)、

▼石組がこの不安定かつ不定型な場で変動する重心を探り続ける試みなのだとすれば、庭づくりとは、ひとつの物体が置かれるたびに変わっていく場に、新たな物体を巻き込み連鎖させていくことだ。庭とはこの連鎖の結果として残る物体の配置のことである。

で、「庭」を「詩」、「石」や「物体」を「言葉」に置き換えれば、

▼言葉組みがこの不安定かつ不定型な場で変動する重心を探り続ける試みなのだとすれば、詩づくりとは、ひとつの言葉が置かれるたびに変わっていく場に、新たな言葉を巻き込み連鎖させていくことだ。詩とはこの連鎖の結果として残る言葉の配置のことである。

となる。

そしてこの本の本当の凄さは、そうした思索の理路が、庭師の知恵に直接、触れることによって揺さぶられ、撹乱される様子を克明に跡づけてゆくことだろう。「庭園の詩学」という副題を持つ第1章・3章・5章と「庭師の知恵」という副題を持つ第2章・4章が相互嵌入するように、緊張した鬩ぎ合いを繰り広げてゆく様は、この本それ自体がひとつの「庭づくり」=「詩づくり」の試みを実践しているかのように思われてくる。

刊行記念トーク「かたちを見る、書く、つくる」池田剛介×千葉雅也×山内朋樹がネットで公開されている。

『庭のかたちが生まれるとき 庭園の詩学と庭師の知恵』刊行記念トーク「かたちを見る、書く、つくる」(前編) | かみのたね (kaminotane.com)

山内朋樹著『庭のかたちが生まれるとき』
(フィルムアート社)

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