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新緑のグラデーション

全方位が山々に囲まれた秘境の村は、5月ともなれば目に沁みるような新緑の季節。同じ緑でもこんなに多様なグラデーションがあるのか……と感動する日々。知人から原付をレンタルできることになって、ほんの少し行動範囲が広がったこともあり、やや元気を取り戻したのもこの頃だったと記憶する。

村の特産品のひとつでもあるお茶。夏も近づく八十八夜……♪ということで、茶摘みシーズンの開始。ようやく「地域活動」っぽいことが出来る!と喜んでいたのもつかの間。半端ない急斜面に立ち続けるせいで起こる足腰の痛みと、日陰のない茶畑に降り注ぐ直射日光の威力と暑さに打ちのめされる。

ここの集落で暮らしている人々の平均年齢は80台半ばくらいだろうか。私のような茶摘み初心者のヘタレっぷりを尻目に、慣れた手つきでどんどん茶葉を摘み取ってゆく。その手つきの確かさ、鮮やかさ、スピード感には、熟練の凄みが滲んでおり、驚きを禁じ得ない。

「秘境」と称される厳しい環境の中で、根を張って生きてきた先人たちの逞しさや力強さを目の当たりにして、根なし草のような生き方をしてきた自分は今後、どうやってこの場所で生きていくべきなのか?ということを考えるきっかけとなった日でもあった。

それにしても、新緑がこんなに美しいと思ったことは、今までになかった。

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