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「数分間のエールを」試写会行ってきた話

普段私は学校の課題以外でこんなことは書きませんが、台風一過の如く衝撃と感銘を受けたので、忘備録兼宣伝として書いてみます。至らぬ点などあるかと思いますが暖かい目でご覧ください。

ではまずこの作品を簡潔に言いますね。

「過去・現在・未来、全てのクリエイターに刺さる豪速ストレート。」

一時間弱の上映時間でこれでもかと言う程、全球真っ直ぐで投げて来る。
ストーリーでも画的にも直球勝負。特にラストの描写に関してはもはや私のことを殴りに来ている。
私としてはラストのあの作品を見たいが為に再度劇場に行こうか考える程。
(もしあの映像単品で公開されたら確実に嬉し泣きする)

そして予告やwebサイトを見てもひしひしと感じると思うが、モノづくりの喜びとクリエイターの誰しもが直面する希望と絶望を描いた作品であり、変化球はほとんどない。だが決して退屈という訳ではなかった。
なのでこの映画を見ようか迷っている人には、真っ直ぐ推したい作品である。もちろん見た後に様々な意見が出ると思うが、その意見や思考こそがこの映画が描いたキャラクター達に直結するだろう。
もし共にモノづくりをしている友人が居たら、この作品をきっかけにモノづくり談議をして欲しい所。

さてここからはキャラクター・ストーリーと画に分けて私なりに語ってみようと思う。

キャラクター・ストーリーについて

主人公の朝屋はまさに数多のクリエイター達の原点とも言える、「自分の作品で誰かへ想いを届けたい」を体現した存在。これからこの映画を観る方々も、似たような想いを持っていたであろう。
自分の夢に真っ直ぐ突き進む姿はとても眩しく、私は彼が過去の自分と同じような想いを持っていることを少々羨ましく、そして懐かしくも思った。
もしこの映画を観た方で主人公と同じ想いを持っていたら、是非とも全力でものづくりに励んでいただきたい。

主人公の友人である外崎。私は彼のことが好きになった。何故なら彼の作中における現状と今の私の現状がよくリンクしていたからだ。

ネタバレ防止の為にこれ以上は語らないが、彼の作品内における狭間の立ち回りと語らない努力は、私自身に大きな共感と気づきを与えてくれた。特に何度かモノづくりを経験した方にとっては、彼を見る目が変わると思う。

そして何と言ってもこの映画で最も重要人物の織重

是非一度映画を見た上でもう一度彼女の表情を見て欲しい。希望も絶望も経験したからこそ成る葛藤の表情は、画力も相まってとても美しく見える。さらに彼女が歌唱する度に衝撃度が増してゆき、映画が終わる頃には彼女の今後の活躍をもっと見たいと思うようになるだろう。
こちらもネタバレ防止の為これ以上は語らないが、最終的に彼女が下す選択については、どちらをとっても正解であると私は思う。もしこの映画の続編が作られるのであれば、学生時代に負けず劣らずの元気になった彼女を一目見てみたい所だ。

画について

まずは何と言ってもこの作品の醍醐味であるセルルックの話から。

「セルルックアニメーション」とは3Ⅾアニメを2Ⅾアニメ(作画アニメ、セルアニメ)の作画に寄せたアニメーションのことです。
3ⅮCGで制作したモデルにあえて主線を加えたり、セルシェーディングという技法を使って影のつけ方や色のつけ方を工夫することで立体感を抑え、作画アニメに寄せた平面的な作画にしたアニメーションのことを指します。

引用元:http://www.sublimation.co.jp/column/works_20220311/

私自身セルルックの長編作品を初めて見たが、セルルックだからこそ出来る描写の数々に心が躍った。

是非映画を見る方に注目してもらいたい点が三つほどある。

一つ目は輪郭

主に人物やフォーカスが当たる物に対して用いている輪郭の付け方にはとても驚いた。世間でよく見る輪郭は縁取りによって形作られているが、この映画では色ずれを使用している。これによって登場人物達の言動や行動に感情が乗りやすく、さらに光の色彩を使用することによって、画に「エモさ」を出している。

二つ目は協賛によってもたらされたリアルさ

作品内で映る景色や機材の数々。
よく見ると実在する企業が多数存在する。
これによって世界観がより現実味を帯び、観客が共感を持ちやすくなっている。
個人的には主人公がPCを組み立ているシーンではベッドにPC特有の梱包材や箱があり、ソフトを使って試行錯誤しているシーンではそのソフトあるあるとも言える失敗をしてブルースクリーンが出るなど、思わず笑みを浮かべてしまう程リアリティーに溢れていて良く出来ていた。

そして三つ目は"モノづくりの楽しさ"の映し方

作中の画として印象に残った場面を挙げると、主人公が3Dソフトを使いキャラクターや世界観を構築しているシーンがとても面白い。
実際手を動かしているのはキーボードとマウスだが、クリエイターは自らの世界に入り込むので目に入らない。正に映画内の描写に近い直感的な形でモノづくりをしている。
表現としても面白いが画的にもいい判断であったと言える。
ここで主人公が使用している3DソフトのBlenderの制作画面を見てみよう。

筆者のBlender初期画面

画的に地味過ぎる。さらにここから処理が増えれば増えるほど重たくなるので、色鮮やかな状態で制作し続けるのはほぼ不可能に近く、基本的には画像のようなモノトーンの状態で作ることが多い。画としても一回だけならまだしも、二回以上映すと流石に飽きる。
そういった画の問題を解決する方法でもあり、主人公の没頭具合を象徴するシーンでもあった。
この映画自体もBlenderで作られているので、そもそも制作陣が一番理解していた点であっただろう。

最後に

最後に絶対見て欲しい箇所が一つある。
それはエンドクレジット。
エンドクレジットに載っている方々は、この映画内で触れられたモノづくりにおける楽しさや苦しみを何倍も知っている。
さらに同じ放映会場の中にもモノづくりをしている方々が沢山いらっしゃいます。

だからこそ
一人のクリエイターとして、
一人の観客として、
エンドクレジットを見ることこそが最大の賛辞であると私は思う。
もちろんこの映画だけに限った話ではないが、やむを得ない事を除き、エンドクレジットを見ずに退場するのは、制作陣やモノづくりしている方々へのリスペクトに欠ける行為であろう。

この映画には携わった全てのクリエイターの想いが詰まっています。
貴方がその想いを受け取り、少しでもモノづくりがしたいと思えますように。
そして今後モノづくりを志した貴方に
”数分間のエールを”

劇場公開は6月14日。
また見に行こうと思います。


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