国家財政を考えてみよう その14 国債(政府の借金)はいつか返さなければならないという通説は本当か?

前回noteに財政の話を書いたのが3月2日なので、それから4ヶ月以上が経ってしまいました。その間に世界をコロナ禍が襲い、経済活動が強制的に止められ、人々の生活や企業活動を底支えするために、世界中の政府が財政出動した。ドイツをはじめ減税を断行する国もあります。

日本でも補正予算が組まれ、(遅すぎるとは言え)給付金や補助金が支給され、巨額の予備費も計上されています。

その議論の過程でまたもや出てきたのが「大盤振る舞いして国の借金を増やせば、それはいつか返さなければならなず、未来の子どもたちへの負担を増やすだけ」という主張。

それって本当ですか?国債、政府の借入金って、いつか返さなければいけないの?

結論を先に言えば、嘘、です。国債を全額償還(返済)する必要など、すなわち政府の借金をゼロにする必要など、未来永劫ありません。

もちろん、国債には償還期限があり、その期限が来ればきちんと償還(返済)されます。しかし、その時にその国の経済が健全に運営され信用が担保されていれば、同じ額かそれ以上の新規国債を発行しても市場で売れるはず、つまり借り換えが可能であるはずです。

民間企業の例として、誰もが優良企業と認める、トヨタ自動車の財務諸表を見てみましょう。

2020年3月期 決算要旨 - トヨタ自動車https://global.toyota/pages/global_toyota/ir/financial-results/2020_4q_summary_jp.pdf


トヨタ自動車の2020年3月期決算時の貸借対照表を見ると、負債が31兆4386億円計上されています。そのうえコロナ禍の経営環境悪化で借入枠を1兆円増やしたとの報道もありました。しかしトヨタの記事で、負債が31兆円ある!たいへんだ!いったいどうやって返済するのか!?などと騒いでいる記事や番組は見たことがありません。

何故なら、トヨタは企業活動が続く限り、31兆円を返す必要などないからです。同様にすべての企業も、企業活動が続く限り借入金をゼロにする必要などありません。借入残高は常にあって良いのです。もちろん、有利子負債も社債も個々の期日が来たら返済します。しかしそれと並行して新たな借入、社債発行を繰り返します。借換えを繰り返しながら、常に一定の負債は継続します。

全額返済を迫られるのは、完全に廃業する時だけです。しかし国の場合は、基本的に半永久的に継続する前提なので、負債をゼロにすることを迫られることはない、という前提となります。

そして企業が成長を続けている限り負債残高も増え続けてかまいません。企業が成長してキャッシュフローが増えれば、沢山借りても沢山返せる、このサイクルが拡大再生産されるのです。国も同じです。国の経済が成長すれば、負債も増えることが自然です。

マスコミなどではしばしば財政を家計に例えます。家計=個人の場合、負債は死ぬまでに全額返さなければ子どもに引き継がれて迷惑をかけるので、自分が生きているうちに返さなければ、と思うのが人情です。しかし企業活動は違います。社長が交代するたびに借入をゼロにする必要などありません。国も同様です。

無制限に負債を増やしてよいことにはもちろんなりませんが、少なくとも負債を全額返してゼロにする必要はない、ということだけははっきり認識しておきたいところです。

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