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30年以上前のフランス製のスエードのハーフコート

卒業旅行、という慣例は今でもあるのか、私が大学を出た80年代には多くの大学生が卒業旅行に行っていた。私も例に漏れず、その時初めてヨーロッパを旅した。目的は色々あったけれど、その中の小さな一つに、社会人になったら必要になるネクタイを買うことがあった。当時は洋服やブランドの知識も乏しく、初めて行ったパリを歩き回りながら出合わせた店に飛び込んでみるという行為を繰り返していた。

そしてヴィクトワール広場にあった「Island」(イスラン)という店で、モスグリーンとシルバーグレーのレジメンタル・タイを買った。Islandという店は日本にはなかったので、それがどういう由来の店なのかも知らないままに買ったネクタイだった。

帰国して、社会人になって、雑誌情報などを多く見るようになり、当時の日本でフレンチ・アイヴィという呼ばれ方の服装がちょっと流行っているのを知った。セレクト・ショップのBEAMSが「BEAMS F」という新店舗を始めて、その「F」はフレンチ・アイヴィを意味していたのだと思う。そしてパリに本店があったお店、エミスフェールとかフィル・ア・フィルなどが東京にも進出してきて、それ以外にもそういう傾向の服を扱う店がいくつか出来た。

渋谷の児童館の前の坂を登りきったところにできた「Yestermorrow」(イエスタモロー)もそういう店のひとつだった。その店はパリのトラッドショップの総本山だったオールド・イングランドの品物を多く扱っていたので見に行ったのだけれど、そこにはイスランの品物も置いてあるのを見つけ、その時になってやっとイスランというブランドの位置づけを私は知った。

写真はその当時、今から30年以上前にイエスタモローで入手したスエードのハーフコート。MADE IN FRANCEとはっきり書いてある。Fabriqué en Franceと書いてないのは何故なのだろう?

初めてイスランで買ったネクタイはもう私の手元にはないし、それよりなにより、パリのイスランの店も、渋谷のイエスタモローも、もう20年以上前に無くなってしまった。それでも私はこのコートを流行り廃りに無頓着に30年着続けてきたのだけれど、ここ数年日本ではフレンチ・ミリタリーとかフレンチ・アイヴィとかフレンチ・ヴィンテージなどが(何度目かの)流行りだそうだ。このハーフコートもそういうカテゴリーに入るのだろうか?

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