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映画感想 君の名前で僕を呼んで
ずーっと観たかった映画。
観た後、悲しく切ない気持ちになったのは、エリオの恋が終わったからではなく、これを観たゲイの気持ちを勝手に想像してしまったからだろう。
この物語では、理想が描かれている。
自分の両親が、エリオの両親みたいだったら。
自分が初めて好きになった人が、オリヴァーみたいだったら。
自分も、エリオやオリヴァーみたいに女の子とも付き合えたら。
性への興味から付き合った女の子が、マルシアみたいに自分を許してくれたら。
自分の名前で互いを呼び合えるくらい、一体感を持てる相手と出会えていたら。
好きになった相手が女性と結婚することになっても、オリヴァーのように「君とのことは忘れない」と言ってくれたら・・・
映画が言わんとすることはラストのお父さんのセリフに凝縮されているが、同じ状況になってこれを自分の子供に言える親がどれだけいるだろうか?
自分が親で同じ状況だったら・・・絶対に言えないだろうけれど、共感できるのは、「この人」という人に出会えたことは素晴らしいことで、それが苦しい結果となっても、かけがえのない経験であるということだ。これは同性同士の恋愛に限らない。
「女性の視点が欠如している」という指摘もあるようで、確かに母親やマルシアの寛容さは自然さを欠く。
エリオと同年代のマルシアは深く傷ついただろう。この役どころは近所の人妻でもいいくらいだと思うが、そうすると物語としてエリオへの共感が薄れてしまうだろうか。マルシアは幼なじみで、互いに愛情よりも性への好奇心が強かった、というところでギリギリ納得できるラインを保っているように感じた。
母親に関しては、よっぽど強い思想と信念を持っていないと、あのような態度はとれないと思うのだけど、とくにそれを示す描写はなかった。ユダヤ人というのが関係しているのかなあ。私はユダヤ人をよく知らない。
オリヴァーが最後の電話で「なんとなく続いていた恋人と婚約した」と言ったが、私は余計な言葉だと感じた。「妥協で結婚するんだ。でも一番は君」これは言われる側のエゴを満たすセリフで、オリヴァーの魅力も損なう。「優しくて素晴らしい人と結婚する。でも激しい感情を抱いたのは君一人だ」これでも十分だと思うのだけど。
ちらっと調べたら、続編の可能性もあるみたいで。
若い頃の美しい思い出、で終わってもよいような気がする。
まだ何者でもないときの出会いというのは、振り返るとそれだけで輝かしかったりする。
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