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見送ってばかりいるとそのうちバットを振らなくなる

「先輩って友達いるんですか?」
「おっとケンカ売ってるのかな、今日は時間あるから買ってもいいんだぞ」
「歳をってくると昔みたいな友人付き合いって難しくなるんですかね?」
「まあそれはあるな、結婚や出産でライフステージが変わるのはもちろんだし、仕事や生活の変化や余裕の有無なんかで、人付き合いに割ける余地って全然違うしな…」
「突然夜中集まって朝までスマブラやるとかもう無理なんですかね?」
「それはアラサーぐらいでもう体力的にキツくなってこないかい?
「私はまだオールは全然いけますが」
「一応言っておくが、当日アポで友人宅に押しかけるのは学生時代or10代くらいまでにしておきたまえよ」
「わかってますって」
「まあでも、ゲームの新作が出る度に人を募って合宿する人とか、半ば突発的に人を誘って旅行に出かける人とか、企画力やタイミング調整に長けている人なんかが周りに居ると若い頃と同じような無茶も可能になったりするかもしれない。
まあそういう調整やタイミングが読める人は希少かつ貴重だが……」
「流石です兄上、って感じですね」
「実際社会でもそつなく生きていけたりするんだよなー」
「それに比べてセンパイはギリギリ社会不適合者ですもんね」
「オイオイオイオイ」
「でもまあそうやって集まってみると、その瞬間だけは、昔ながらの友人同士の気楽な関係だったりして、年を取るとそれになりに貴重な時間ではあるわけよ」
「懐かしくも切ない瞬間、ってやつですか」
「そんな時間を持ちつつも、いや持てるからこそ、自分や他人が変わっていくことを、やんわりと許容できるようになる、ってのが、歳を取るって事なのではないかね。」
「急に言ってる事が老けましたね」
「いや、気持ちだけは若いつもり、とか、他人や自分の変化を認められないのもなかなか辛いよ。自分が頑なに変わらないと、結局のところ、他人の変化ばかりを見送ることになって、段々孤立していくのだよな。立場的にも精神的にも。」
「なんかインターネットって感じですね」
「その言い方はこっちにも刺さるからヤメロ」
「センパイもいつか人に見送られる機会も来ますって。
あっ、思いつきました。せっかくですからこんど一回ちゃんとした格好して写真撮り行きましょう」
「やっぱケンカ売ってんなオマエ?」

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