音

音　　                                       　　20231031

久しぶりにイヤホンを外して歩くと、街の音が聞こえる 

街の音が聞こえると、安心する

生きているってかんじがする

足音と、呼吸音

話し声、誰かの咳と、擦れ合う服の音

クラクション、戸の軋み、踏切の音、その反響

川辺でわたしは腰をおろす

久しぶりに、詩を書いた

ペンとノートを取り出して

紙をこする音、

芯を押し出す音、

わたしの指が線を引く

わたしの身体が言葉を描く

文字を紡いで、

押し返す音

消えちゃうね、

ふと目をあげて、

向こう岸の木々に揺らぐお日様を眺める

枝々の狭間から、さらさらと

光があふれる

すこし呼吸を止める

耳を澄ませる

ゆらめいている、

そう思う

ゆらめいている、

零れ落ちそうなくらいに

足元に川面が、きらめいている

秋の空が頭上で、はためいている

すこし怖い、なにもかも

すごく怖い

消えちゃうみたい

ゆらめいている、なにもかも

ゆらめいていく、

とおく、とおくへ

ゆらぎ、ゆらめき、とおく、とおくへ……

生きているよ

ちゃんと生きている

そんなことを思って、わたし、立ちあがる