かもがわ出版メルマガ2024年Vo.153
1970年に組織された九州保育団体合同研究集会(略称 九州合研)は、毎年一回、九州各県持ち回りで大規模な集会を開催しています。
弊社では、その中で検討された内容をもとに保育実践をコンパクトにまとめたシリーズ「保育っておもしろい!」を刊行してきました。
2012年から刊行が始まったこのシリーズでは、『乳児保育』 『障がい児保育』 『集団づくり』 『3・4・5歳児の保育』 『こどもがえがく・こどもがつくる』 『おいしいね!たのしいね!給食と保育』 『ワクワクドキドキ身体づくり』と保育の分野ごとに7点が刊行されています。
そして9月初旬に7年ぶりとなるシリーズ8作目『どうする?どう書く?保育計画刊行』が刊行されます。
「不適切な保育」が報道される現代においては、子どもの思いを捉え、保育者が願う保育実践をみんなで共有することが求められています。
その根幹となる保育計画は、保育の目標とそれに基づく具体的な保育の方向性を示す重要なものですが、監査のための形式的な保育計画では、保育者が心を通わせることができません。
九州保育団体合同研究集会では、子どものありのままの姿や思いをとらえ、子どもの育ちを願うという保育士の思いの原点から出発し、それを実現するためにどのような実践が必要なのか、そしてそれをどのように保育計画に載せるのかについて、検討を重ねてきました。
本書は、その議論をまとめ、保育計画の持つ可能性、より良い計画(計画書)づくりの大切さについて提案します。
従来あるような保育計画を書き上げるためのマニュアル本ではありませんが、この1冊をきっかけとして、子どもたちと保育者が生き生きと園生活を送れるような保育計画を作るために、ほかの保育者と話し合ってみようと思っていただくことを願って作られています。
【新刊案内】
●あなたの園の保育計画、見直してみませんか?
『どうする?どう書く?保育計画』
九州合研常任委員会 本体価格900円
「不適切な保育」が報道される時代、子どもの思いを捉え、保育者が願う保育実践をみんなで共有するための「保育計画」作りのすすめ。
●女たちよ、黙らないでー。
『寿岳章子 女とことばと憲法と』
遠藤 織枝 本体価格2,500円
日本語のなかの女性の言葉からジェンダー問題を初めて研究した国語学者・寿岳章子。発見された若き日の日記からその素顔に迫る。
●戦地を取材したありのままを、写真100余枚を加えて綴る
『イスラエル、ウクライナ、アフガン戦地ルポ』
西谷 文和 本体価格1,600円
戦地取材のルポを写真100枚余を加えて綴る。和解には武器を捨てて話し合う以外にない。日本の平和憲法を活かす外交が求められている。
●「かみつき」問題は乳児保育の大きな悩みです
『新版・「かみつき」をなくすために』
西川 由紀子 本体価格1,600円
既刊本から20年経つが「かみつき」問題はいまだに保育の悩み。新たなアンケート結果を元に乳児保育の課題と大切にしたい事を考える。
●特集 気候危機は、子どもの権利の危機
『子ども白書 2024』
日本子どもを守る会 本体価格2,800円
特集「気候危機は、子どもの権利の危機」。昨年好評だった「いま、子どもの声を〈きく〉」は小特集で。トーヨコ問題などのテーマも。
●本の刊行を理由に共産党から除名され東京地裁に提訴した
『共産党除名撤回裁判の記録Ⅰ』
松竹 伸幸 本体価格1,800円
本の刊行を理由に共産党から除名され東京地裁に提訴した著者が、最高裁で勝利するまで毎週、記録として配信しているメルマガの第1集。
●子ども支援のあり方を提案
『子どもの学習支援ハンドブック』
地域における子どもの学びの支援共同研究会・南出吉祥・大村惠・橋本吉広
本体価格2,000円
子どもの貧困対策として始まった学習支援の取り組み。受験対策や塾費用補助ではなく、学びの主体としての子ども支援のあり方を提案。
●価値があるから集めるわけじゃない!
『持ってたところで何になる?』
辻井 タカヒロ 本体価格1,700円
価値があるから集めるわけじゃない。捨てるんだったら持っときたい。謎のモノたちが増殖する日々を描いた私小説的コミックエッセイ。
●室内で体も指先も使っておもいっきりあそぼう
『わくわくどきどき新聞紙あそび』
熊丸 みつ子 本体価格1,800円
新聞紙をまるめる・ちぎる・ちらばす!思いっきり遊べば笑顔で心すっきり!室内あそびにお困りの保育者、保護者に最適の1冊。
●未来を生きる若者らしい人生を選択しましょう!
『高校生からわかる日本経済』
金子 勝 本体価格1,700円
日本経済衰退の原因は教科書では分からない。不連続的に変わる歴史の中で、どんな社会を創るのか、若者に分かりやすく問いかける。
【重版案内】
●パレスチナにはどんな仕事があるんだろう?
『パレスチナのちいさないとなみ』
高橋 美香:文・写真・皆川 万葉:文 本体価格1,800円
辛く悲しい現実のなかにも、そのいとなみを支える仕事があり、働く人びとには笑顔がある。「仕事と尊厳」を考えるパレスチナの本。
【総合ランキング】
●保育・教育書 第1位
●特集 気候危機は、子どもの権利の危機
『子ども白書 2024』
日本子どもを守る会 本体価格2,800円
特集「気候危機は、子どもの権利の危機」。昨年好評だった「いま、子どもの声を〈きく〉」は小特集で。トーヨコ問題などのテーマも。
●人文・社会 第1位
●未来を生きる若者らしい人生を選択しましょう!
『高校生からわかる日本経済』
金子 勝 本体価格1,700円
日本経済衰退の原因は教科書では分からない。不連続的に変わる歴史の中で、どんな社会を創るのか、若者に分かりやすく問いかける。
【編集より】
『寿岳章子 女とことばと憲法と』刊行にあたって
「寿岳章子」という女性をご存じですか。「じゅがく・あきこ」と読みます。20年近く前に亡くなった国語学者なので、高名だったその名も人々の記憶から遠ざかりつつありますが、彼女は、ジェンダーという概念がまだ知られていなかった時代に、日本語に潜むジェンダーの呪縛をいち早く指摘し、男性中心社会の殻を破って女性が主体的に生きる道を照らしたトップランナーです。
いま、日本のジェンダーギャップ指数は世界でも最下位に近いところを低迷しています。そんなお寒い現状の中、生誕100年の節目に寿岳が発したエールに再び耳を傾けてほしいー。そんな思いで書き下ろされた評伝が本書です。
著者の遠藤織枝さんは、寿岳と親交があった日本語学者です。文教大学で長年教壇に立ち、現在、にほんごの会理事長を務めています。書き始めるきっかけとなったのは、5年前に京都にある寿岳の旧宅を訪ねた際、遺産を管理する人から手渡された8冊の日記帳でした。
寿岳は生前、女学校に入学した1936年から卒業する1941年までの日記を抄録した『過ぎたれど去らぬ日々』を上梓しています。社会が戦時色に染まる時代にはつらつと反戦的な思いを綴った日記は評判を呼び、NHKは若き寿岳をモデルに「いつか来た道」と題する連続テレビドラマをつくり、放映しました。
遠藤さんが5年前に偶然出会った美しい文字の日記は、この『過ぎたれど』に続く時期のものでした。戦前、男子に比べて女子の進学の門は狭められていましたが、猛烈な受験勉強で東北大学に進み、工場動員の中で国語学の研究を深め、大学教師を務める30代前半までの日々が生き生きと綴られていました。遠藤さんはその日記のすべてを書きおこしたうえで、随所に引用しながら、時代を駆け抜けた81年の人生を再現しています。
本書は、ダンテの『神曲』を完訳した英文学者の父と、翻訳家でエッセイストの母が築いた「だれも君臨しない家」での幼少期を描く序章で始まり、時代の空気に抗えずに反戦の思いが変化していく女子専門学校時代、東北大学で国語学と格闘し、戦後、京都大学大学院で女の生き方を見すえて日本語研究を深めていく様子などを丹念に追っていきます。
日本語とジェンダーを論じる著書としてベストセラーになった『日本語と女』(岩波新書、1979)執筆の経緯にも触れます。京都の農村である生活改善普及員と出会い、「オナゴハダマットレ」と言われていた農村女性たちが自身のことばを取り戻して自己を解放していく闘いを知ります。その実践の過程で生まれたスローガンのひとつが「一番言いにくいことを一番いいにくい人に言おう」でした。寿岳は、ことわざや慣用句、歌謡曲で女性がどう語られているかも分析し、「女の出る幕ではない」のように、女性が受け身で弱く、否定的な存在とされる例が多いことを指摘、日本語の中の女性のことばがジェンダー規範に縛られていることを明らかにします。
本書はさらに、社会の不平等をなくし、平和憲法を守るために駆け回った後年の社会活動家の顔にも迫ります。
著者の遠藤さんが出会った日記からは、こうした研究者・活動家の側面だけでなく、おしゃれや家事、映画鑑賞など日常生活を満喫する寿岳の姿も立ち現れます。片思いと失恋に揺れる心、敬愛する国語学者・新村出に対する複雑な思い、大野晋や金田一春彦、井伏鱒二らとの知られざる交友など、興味深い物語も登場します。
遠藤さんは、こう書いています。
「寿岳さんは今でも新しい。今の我々に必要な多くのメッセージを残してくれている。(略)学問と日常とを密接に結びつけてどちらも貪欲に追求した欲張った大先輩がいたことと、その先輩はジェンダー平等推進の先駆者であった、ということを知ってほしい」