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【エフェクターレビュー】Lateral Phonics/Deadman Monochrome Edition

エフェクターレビュー第3回。
今回はロシアはモスクワから、Lateral Phonicsさんの限定ファズ、Deadman Monochrome Editionです。

このメーカー、日本で使っているの自分だけなんじゃないかと正直思ってます。
でも実はフランスでは結構人気で、ニセモノが出回るくらいだったりします。たぶんフランスで有名なレビュアーのNico Chonaさんが自分の音作りのメインとして使ってる影響ですね。彼は最新のアルバムだと、今回紹介するDeadmanの通常版をXoticのEP Boosterと組み合わせてかけっぱなしにしてるそうです。彼がTone Factoryってチャンネルでやってるレビューはとってもかっこいいので、ぜひご覧ください。フランス語だけど英語字幕もたぶんあるはず!

さて、今回紹介するペダルはLateral Phonicsさんのヒット作Deadman Fuzzの限定版になります。オリジナルのDeadmanはGuitar.comのエディターズ・チョイスで9/10の高評価を獲得しています。

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(オリジナル版です。カラーバージョンもカッコいい!!)

ファズのタイプとしてはBigMuffのトライアングル期をモデルにしたゲルマx2、シリコンx2の回路構成になっていますが、かなりのアレンジが入っているので別物と考えていいかと思います。
最大の特徴はBigMuff系統でありながら、ボリュームへの追従性が圧倒的に高いことです。また音色にも独特の色気があります。

ここのペダルは本当にデザインがカッコいいです。もうジャケ買いしたいレベル。不揃いなノブもポイント。しかも一台一台手書きで微妙にデザインが違います。ちなみに筐体には穴あき版と空いてないバージョンがあります。

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コントロールはVolume(左)、Low-Cut/EQ(右)、Fuzz(真ん中)の3つだけとシンプルです。

Fuzzについてはそのまま歪み量調整なんですが、設定によって強調される音域が変わってきます。ローゲインではローミドルあたり、ハイゲインになるにしたがってハイミドルへと強調帯域が移動するイメージでしょうか。
Low-Cutも少し特殊で、Fuzzの設定に連動して少しずつ挙動が変わります。特にハイゲイン時にローカットを回すと15時〜16時くらいまではミドルが強調されるとともにコンプレッション感が加わり、右に回しきるととハイがブーストされて抜けが良くなる印象です。
基本的にどの設定でも帯域に少しクセがつく感覚がありますが、不思議と膜を張ったような圧迫感みたいなものはなく、どちらかというとこの陰影がDeadmanの色気に関係しているのではないかと思います。

せっかくなので通常版との比較も入っている公式のデモを。

通常版を持っていないので比較することはできないのですが、Monochrome Editionの通常版との違いは、その名の通りモノクロームのデザインと、よりローゲインで粗い粒立ち、より広いダイナミクスレンジだそうです。あとは「Amperex NYC 2N2430」というかなり珍しいトランジスタを使っているらしいです(このへん誰か詳しい人にフォローして欲しいですね笑)。
最近の流行はたぶんキメの細かい粒立ちなんだろうなという気もしますが、個人的には粗い粒立ちが好きなので、ここはポイントです。
タッチの追従性も実際かなり繊細で、クリーンから色気のある歪みまで無段階に移行することができます。


ただ少し音が引っ込む傾向があるのと、ベースの場合は低音のタイトさが心許ない時がある(80Hz以下くらいが削れる)ので、自分の場合、同社製のLava Booster、あるいはKasleder/Freaky Stoneのプリアンプ部と適宜組み合わせて使っています(Freaky Stoneは設定次第でかなりLava Boosterに近いキャラクターにできます。でも歪みのキャラクターが少し違うのでいい具合にかぶりません!)。
こうすると低音がある程度締まって、全体の輪郭も鋭く、音を前に出すことができます。前述のNicoもEP Boosterと組み合わせているので、ギターでもそうなのかもですね。さらに、組み合わせるとなぜかトーンへの追従性も良くなります。

(Nico Chonaの通常版Deadmanのレビューと自分のペダルボード上での紹介)

自分の設定としては、Fuzzは3.5〜4くらいにしてボリュームはイーブン、ローカットは0にセットしています。音を後ろに下げたい場合だったり、ジャック・ブルース的な動き回るけどギターの邪魔をしたくない時、バッキング寄りのコードストロークのときには単独で使用。ベースでロー〜ミドルゲイン設定で録音に混ぜると、ジャック・ブルースがマーシャルで歪ませたっぽいベースに結構近い感じになります。
前に出したいときはブースターをオン。ベースシンセ的なリードが欲しい時はトーンをゼロにしてボリュームを少し下げる、といった使い方をしています。このペダルとブースターを使えば、リードっぽいサウンドは大体手元のコントロールで出せるようになるのでは…?なんて思ってたりします。
トーン全開ならギラッとした音に、トーンを絞ったときはツヤがあるなめらかな音に、どの使い方をしてもほのかにゆらぎのあるザラッとした歪みが乗って色気があるんですよね…!

オクターバーとの組み合わせだと少しローは削れますが、ややローファイ寄りな歪みが加わる印象です。
低音の削れについては、元々カットすることも多い帯域だし、再生環境との相性もあると思うので、曲だったり編成によってはそこまで気にしなくていい気もします(ただ個人的にとりあえず全部鳴っていて欲しいタイプというだけ)。
ブースターとの組み合わせでも十分使えますが、最近はブレンダーとも組み合わせてみても面白いんじゃないかと思ってたりもします。

まとめ
個人的なイメージだとオルタナティブ感というか90年代以降のガレージ感があるような気がします。でも決して安っぽいわけではなく、オーガニックな感触と色気があるような。Nirvanaだったり、あるいはペダルのイメージの元にもなった映画Deadmanの世界観とニール・ヤングが弾いたそのサントラのような音、このへんが得意分野な印象です。ザラついていて、荒涼として、退廃的で、そこに官能性があるというか。一方でNicoさんの弾く音がかなりホットなように、不思議と暖かみみたいなものを出すこともできます。
自分の場合は、アンサンブルを支えるベースらしい太いサウンドはKasleder、リードだったり味付けはLateralという使い分けをしています。
ベースでもありですが、やはり魅力を引き出しきれないところはあると思うので、ギターの方にオススメしたいです。一味違うファズが欲しいという方にぜひ。

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