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【エフェクターレビュー】Kasleder FX/Freaky Stone

エフェクターレビュー第1回はハンガリーのペダルビルダーKasleder FXのファズ、Freaky Stoneです。

ブランド名は製作者のKasleder Albertさんの名前から来ています。ちなみにハンガリーは日本と同じで苗字→名前らしいですね。
Kaslederさんは、ポール・マッカートニーが使ってることでおなじみのバイオリンベースを作ってるHöfnerで働いていたビルダーさんです。Kaslederさんのエフェクターはポールのボードにも使用されているそうです。ポールファンとしてはこれだけで信頼感があります笑

さて、今回紹介するFreaky Stoneは2チャンネルのペダルになっています。
左側がファズ、右側がプリアンプです。元になってる回路はそれぞれファズフェイスとレンジマスターですね。
音はどんな感じかというと、Kaslederさんのペダル全般に言えることですがヴィンテージ志向のオーガニックなファズという印象です。
ちなみに自分はパッシヴのプレベでの使用ですが、ヴィンテージタイプのいわゆるインピーダンスに敏感なファズなので、使用楽器によって挙動は変わると思うのでそこはご容赦を。

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こんな感じでなかなかシックなデザインですね。特にノブが豪華です。ただ目盛りは正直見づらいかな…。まああまり演奏中に設定をいじるタイプのペダルではないのでセーフかなと思います。見た目とトレードオフ…。

で、まずはファズサイド(左)ですね。
Fuzzのノブを回すと歪みが増えていくわけですが、このノブ単体だとミドルゲインくらいまでですね。
公式サイトでも書いてあるように、ポイントはFatノブとかと思います。
絞ればタイトになって、右に回せばローブーストになるわけですが、第二のゲイン的なところもあります。
感覚的には13時くらいで原音と同じくらいのローになって、15時くらいからはハイゲインに突入、原音の比率が下がってファズの質感と伸びが強くなってくる感じかと。
低音の存在感をがっつりキープできるのが気持ちいいので、自分の場合はローゲインに設定して、ごりっとした音を出したい時に使うことが多いです。原音の太さとタイトさに、強く弾くとわずかに歪みが乗るイメージです。
FuzzとFatを全開にすると他のパートを食えるレベルでぶっとい歪みになります。シンセベース的な太い歪みが欲しい時なんかは存在感出せますね。

プリアンプサイド(右)は、設定(特にLow)を上げるとほんのり歪みます。この音もなかなかいい感じ。
自分の場合は主に、音量をほぼ変えずLowとTrebleをやや13時位に設定、音をクリアにしつつ味付けするイメージで必要に応じて使っています。ちょうどEP Boosterを0でかませる感じですね。これをやるとリバーブだったり別のファズだったり、音が引っ込むor音像がぼやけるタイプのエフェクターを使うときにオンにすることで、ベースを前に出しつつ輪郭がキープできていい感じになります。
音量はほぼ変わらないようにした場合でも、ほんのりゲルマニウムっぽいサチュレーション感を加えることができるので、そのキャラクターを加えたい時は単体でもオンにします。サチュレーションを利用して高弦側をなじませるイメージです。
クリアになりつつ馴染むってのが一見むずかしそうだけど設定見つけると意外と両立するんですよね。手持ちの他のブースターの性質に近づけて、そっちはゲインプッシュに使ったりもしています。書いててあらためて思ったけど便利ですねこれ。

両サイドを組み合わせて使うこともできますが、両側をオンにすると若干ノイズが乗ります。ただ、このノイズもオーガニックで味があるというか、レトロな質感があるとも言えるので、使い道がある気がしてます。古いレコーディングとか往年のライブのニュアンスを加えるとか。邪魔な場合は設定である程度押さえ込めます。
ただ、それぞれのチャンネルが完成度高く、組み合わせると少なくともどちらかがそのための設定になってしまうので、そこは悩みどころかも。自分は別に使うことが多いです。直列だとスイッチングも面倒ですし。
オクターバーと組み合わせる場合も場合によってはノイズが出ます。が、組み合わせた音は味があって、これも魅力的なので乗りこなせると強いと思います。
両サイドを組み合わせればノイズは抑えられて、スイッチャーに入れてる場合はオンオフが一括できるので、このへんは大体クリアできるのではないでしょうか(だが私は直列派)

(追記:気づいたんですがFreaky Stone→オクターバーの順に接続すれば、インピーダンス問題は解決できました!習慣でオクターバーを最前段に置いていたので盲点でした…。ドライカットにしてしまうと歪みが消えてしまいますが、ミックスではFreaky Stoneの太い歪みにサブオクターブが加わって素晴らしい音になります。トーンの反応を活かして、オクターブサウンドと馴染ませたい場合はトーンを0に、分離感を出したい場合はトーン全開でという使い分けもできます。ただ、両チャンネル使用の場合はトラッキングがやや乱れるかなという印象です。)

(追記2:両チャンネルの組み合わせをしばらく実験してみたところ、ノイズについて録音上ではほぼ問題ありませんでした。さらに、組み合わせたサウンドについても、モデルになったサウンドの方向性を理解すると認識が変わって使い道が分かるパターンでした…。組み合わせた場合はファズフェイスの2石+レンジマスターの1石でゲルマニウム計3石のトーンベンダーMKII系統のサウンドになります。この少し暴れるサウンドも指弾き/ピック弾きどちらでもファズフェイスのみの使用とは違った方向でニュアンスが出せるため、サウンドのバリエーションとして大いに使えます。しかもうまく調整すれば同一の設定で、それぞれのチャンネル単独・組み合わせすべて使い分けることができます…!)

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ヴィンテージパーツを使用していて限定50台というということで、蓋を外すとシリアルナンバーとKaslederさんのサイン、公式HPから直接購入したので名前が入っています。

内部コントロールもありますが、今のところまだいじってません。バイアスを変えて暴れさせても面白いかもですね。
あとはファズフェイスタイプということで、ボリューム(とトーン)にある程度追従します。これを利用して、ボリュームMAXでガシガシ激しく弾く時にちょうど歪みが乗るように設定しつつ、静かなパートでは手元を少し絞って作ったクリーンにアクセントで歪みを混ぜる、といった使い方もできます。

まとめ
全体的に、ベースらしいプレイでファズを使いたいという時にぴったりのペダルだと思います。ホットでオーガニック。王道で堅実なところと暴れ馬なところが両方ある。ベースでヴィンテージファズを使うならどうするかというテーマに取り組んだKaslederさんの情熱を感じます。
良くも悪くもヴィンテージタイプならではの特徴もありますが、欠点というよりこれも含めての魅力だと思います。同じ方向性の音でも、作り方が何パターンかあってちょっとずつ違うのも面白いところ。触るたびに発見がある探究心をくすぐられる系ですね。
ポールが使ってるような曲に馴染みつつアクセントになるようなファズの音(意外と歪みのイメージない人多い気もするけど、イメージあります?)から、90年代のティム・コマーフォードっぽい骨太な音までカバーできます。
自分は70年代っぽい音に憧れを感じるタイプなのでとても気に入っています。

なお、Kasleder FXのエフェクターは友人のドイツ在住ベーシストMaSaさんが日本への委託販売をしています。販売サイトはこちらからどうぞ。
ちなみに商品説明の文章を手伝わせて頂いてます。公式HPの説明を翻訳して日本での販売向けに編集しているんですが、元々のKaslederさんの文章もエフェクター製作へのパッションが溢れていて、人柄が伝わるかと思うのでぜひ読んでみてください(笑)公式サイトにはYouTubeのデモも貼ってあります。音の確認もそちらでどうぞ。

というわけで、初回から最後はちょっと宣伝っぽい感じになってしまいましたが、元々この製品MasaさんがTwitterでやってるレビューを見てそのままポチってしまったんですよね。そのまますっかり気に入ってディレイも買ってしまったという。ディレイ他にも持ってるのに。次回もKasleder製品になるかとは思いますが、その次は個人輸入しかなさそうなエフェクターを紹介しますのでご覚悟を!(?)

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