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【エフェクターレビュー】Mantic Effects/Hulk

第7回はアメリカのMantic Effectsさんのサブハーモニックブースター、Hulkです。

Mantic Effectsは超個性派なペダルを作ることに定評があるメーカーさんですね。ローとハイのブーストがエゲツないディストーションVitriolだったり、もはやわけのわからない音がでるFlexなんかを作っています。変態性に隠れがちですが、実は独特の美しさのようなものがあるのが魅力です。

Vitriol。ふつうにカッコよくないですか!?
Lowのブーストがエゲツないです。欲しい。

Flexのパーフェクト版。
弾いてる人がもう笑っちゃてますw

そして今回ご紹介するHulk!

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Hulkは、そもそもが有名な変態ペダルDOD MeatBoxを元に改良したペダルになります。
これはどんなペダルだったかと言うと、60Hzと30Hzそれぞれ強烈にブーストするという、意味不明なエフェクターです。一般的にはむしろカットすることの方が多いそんな超低音域をブーストしてどうするのかと。
この音域はもはや音というより、バスドラムのはるか下をくぐる「振動」あるいは「低周波」です。あまりに強烈な低周波でアンプを壊しかねなかったということで、MeatBoxはスピーカークラッシャーと呼ばれていたそうです。

実際、並のアンプ/スピーカーでは音量を上げると、なにやら不穏な音がします。並じゃなくても音量を上げるとたぶんやばいです。しかも再生周波数帯域を下回っているので、スマホのスピーカーからはほぼ何も聴こえません。スマホでの映えを狙った音作りが一般化してる昨今の流れに完全に逆行しています。耳よりも身体で感じる振動と言ってもいいかもしれません。試しに弾いてみた録音をカーステレオで聴いたフォロワーさんからは「車が族車みたいに揺れてる!」という感想を頂きました笑

うむ。

じゃあなぜそんなものを買ったのかと聞かれれば、やっぱりティム・ルフェーブルが使っているからです!
実際、ティムさんは以前から結構な頻度でMeat Boxを愛用していて、Hulkが販売されて以降はこちらをメインに使っています。もうコンテンポラリーなジャズなんかでもふつうに使っちゃってます。
Meat BoxとHulkの違いは、前者ではシンセライクな歪みが薄くかかっているのに対して、後者ではよりスムースな音になっている点かと思います。Hulkでも歪みを加えたい場合は他のエフェクターと組み合わせればそれっぽくなるので、使い勝手は上がっているかもですね。MeatBoxはオリジナルもリイシューも販売終了していて、入手がやや難しいというのもあります。

Meatboxとの比較はこちらからどうぞ。

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見た目通り機能はシンプル、ノブは2つしかありません。
音量調整のLv.とエフェクトのMixです。
オンにするとMixを最小にしても中高音域は豪快にスポイルされます。低周波が「ブーン…」と鳴る…と、本当にそれだけです。出音は本当にスムースですが、発生と音の終わりにややクセのようなものがあるので、的確なピッキングを意識する必要はあるかと思います。トラッキング性能がかなり高めな印象があるので、このクセというかピッキングへのセンシティブさはこのへん由来かもしれないです。結構ローフレットでも平気で拾います。ちなみに一般的なオクターバーは12フレット以上で弾くことが推奨されるかと思うのですが、Hulkに関しては5〜12フレットくらいのミドルポジション、あるいはさらにローポジションの方がより効果的に使えるかと思います。
横のジャックがドライ音のみを出力するものになるので、状況によってはここからの出力をブレンダーでまとめると扱いやすいかもですね。
ボリュームの設定についてですが、超低周波なせいで聴覚上の認識よりも、かなりの音量というか物理エネルギーが放出されてます。なので音量は最小から慎重に設定した方がいいです。油断すると機材とか耳とか色々壊れます。振動でアンプの近くにあるものが動きます。長時間使ってると頭が痛くなったり低音酔いするのでそれも注意です。
蓋をあけると中には内蔵ディップがついていて、30Hzと60Hzの出力を調整することができます。開けるのは面倒ですが結構便利です。
ちなみにHulkには内蔵ディップが表側について大型旧バージョン、さらにVitriolと悪魔合体させたGrinchというバージョンがあります。小型版の方がやや音質も向上したとのことですが、そのへんはお好みでどうぞ。GrinchはHulk→Vitriolで回路の順番が固定で変更できない、さらオンにするとHulkが強制的にオンになるため個別には使えないということもあり、やや使いづらそうな印象でした。頭がおかしい…(褒め言葉)。エゲツないローブーストのかかる化け物ペダルが欲しい方向けかと思います…笑


さて、具体的な使い方ですが、ここまで読んで「そんなもん何に使うんだよ」ってなっているかとは思います。実際、自分も買っておいて使える気がしないと思ってました。まあファングッズだと。

……ところが、これが持っていると意外と出番があって驚いています。
何に使っているかというと、まずはクラブ/ヒップホップ系の曲です。ビートが鳴っているところにHulkで重低音を加えると、いい感じに流れを邪魔せずに迫力を加えることができます。

珍しく自分の過去の演奏を参考に…。スマホのスピーカーだと鳴らないのと音量&低音注意です。いかがでしょう?……ちょっと効かせすぎたかも……。
ちなみにこの画像はどうなんだろうと個人的には(いや、すみません)

あるいはインダストリアルっぽい曲にも使えます。こういう時はEarthquaker DevicesのHumming Birdと組み合わせても楽しいです。超重低音にトレモロ…というよりもリピートパーカッションが動きを与えてくます。超高速でかけてもエグいです。ちなみにこの使い方ではトレモロの立ち上がりのスピードと音形がかなり重要になるので、Humming Birdが今のところベストかなと思います。
あとはオクターバーのバリエーションとして使うのも有効だと思います。

そしてなんといってもダブ/レゲエですね!
こんな感じの曲で重低音ベースをやるにはまさに!です。




というわけで。
最近の流行りとは真逆で一見まったく使えなさそうですが、意外とはまる機会が多く、好きな人は好き。そんなエフェクターではないでしょうか?
PAさんに怒られないように使いましょう!

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