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スーパーロボット大戦β アムロ再び②

北米シャイアン基地
「アムロ・レイ大尉。NT-1の出力テストの結果報告書をお持ちしました」
設備執務室の扉をノックしてチェーン・アギ准尉が入って来た。
「ありがとう。そこへ置いてくれ。ところで、准尉はシャイアンには慣れたかい?」
「ええ。でも、やはりあれは元々大尉用に設計された機体です。やはり大尉がお乗りになるべきでは…」「僕は一年戦争の時、十分に戦った。もうモビルスーツに乗ろうとは思わない。正直いって今の生活が性に合っているよ」
「軟禁同然の生活が、ですか…?」
「チェーン、不穏当な発言は慎んだ方がいい。この部屋だってモニターされているんだぞ」
「…も、申し訳ありません…でも現在は月のフォン・ブラウンにあるアナハイム・エレクトロニクスの工場で開発が進められている…色々な所でガンダムの開発プロジェクトが進行中なんですね」
「ティターンズも独自にガンダムタイプを開発したというし…地球圏が不穏な空気に包まれている証拠だな」
「大尉のおかげで「ガンダム」という名は特別な意味を持つようになりましたからね…」
「…軍上層部はガンダムを恐れていながらも、不穏な情勢になるとそれを必要とする。矛盾した話だガンダムが必要とされるということは、地球圏はまた大きな戦乱に包まれているのかも知れないな…僕には関係のない話だが」
「その新型のガンダムは大尉が設計されたんですか?」
「ああ、軍の命令でね。だが、あくまでも設計を担当しただけで、僕がその機体に乗るわけじゃないこれが設計修正データの入ったファイルだ」
「お預かりします」
「サイコフレームの調整さえ上手くいけば、あのガンダムは優れた機体になる」
「それにしても…アナハイムのオクトバーはサイコフレームなんて物をどこから手に入れたんだ?」
「詳しいことはわかりませんが…おそらく、ジオンと関わりのある所からではないでしょうか」
「1年戦争時にジオンが開発したサイコミュ技術はティターンズによって独占されていると聞いていたがな…」
「サイコフレームの件は月のフォン・ブラウンに行って、直接オクトバーさんに聞いてきます」
「ああ、気をつけて。オクトバーによろしく」
「はい。それでは、宇宙で大尉をお待ちしております」
「行きたくは無い。あの無重力帯の感覚は怖い」
アムロ自身「地球の重力に魂を引かれた」すぎ宇宙に上がってあの感覚を思い出し、ララァの魂と再会するのが恐れている自覚はあった...
「大尉、そんな顔をしないで下さい…」
「…すまない」
「あ、いけない! 肝心なことを忘れていました。大尉にご面会の方が!」
「僕に面会…?」
「アムロ…久しぶりね」
そう言って執務室に入って来たのはかつてホワイトベースで苦楽を共に生き抜いたの懐かしい顔であった。
「フラウ・コバヤシ! それにカツ! この監視態勢の中、よくここまで来れたね」
「アムロも変わりなく…」
「ありがとう。背が伸びたな、カツ…」
そんなアムロの言葉にカツ・コバヤシは何か言いたげな顔をしていた。
「レツとキッカは?」
「ミライさんと一緒にホンコンにいるわ…」
「どうしてここへ?」
「話したいことが山ほどあるの。時間の方はいいかしら?」
「ああ。大歓迎だよ。後で邸宅の方に案内させよう」
「アムロさん!」
カツは何か言いたい空気に気付いてないアムロに痺れを切らせた。
「何だい?」
「アムロさんは何故、エゥーゴに参加しないんですか?」
カツの言葉に執務室の空気は張り詰めた。
「父は…エゥーゴの支援組織カラバに参加するため旅立ちました」
「ハヤト・コバヤシが…?」
「それなのに、あなたは何故ここにいるんです?」「カツ!」
流石にマズいと思ったのかフラウがカツを諌めた。「僕はカラバという組織のことは知らないな…」
「エゥーゴのことも?」
「報道されている程度のことは…」
「なら、カラバに参加するとか」
「僕のように後方にいる者がいなければ、君達はティターンズから逃げる所さえなかったんだよ」
アムロ自身情報収集自体怠っていた訳では無いが制限された中ではやはり限りはある。
「逃げ込んだんじゃありません! 母を守るために仕方なくここまで従って来たんです!」
「カツ!」
「あなたは、ここの生活がなくなるのが怖くって軍のいいなりになっているんでしょ?」
「カツ…いいかげんにしなさい」
「アムロさん! 子供の僕にこうまで言われて平気なんですか!?本当のことを言って下さい!」
「言えるわけがないでしょう? ここは…軍の基地なのよ」
この場にいるオトナ達は誰もが分かっている事だが未だ子供のカツには感情を抑えることは出来ず言葉にしてしまった。
「このままでは、ティターンズは地球連邦軍…いえ、地球連邦政府の全てを掌握してしまいます!」
「僕は一年戦争で充分に戦ったよ。ニュータイプは危険分子として、僕はここに閉じこめられているんだ」
「僕らにとって…いえ、母にとってアムロさんはヒーローだったんです!そんなこと言わずに、地下にモビルスーツが隠してあるとぐらい言って下さい!」カツの抑えていた気持ちが爆発した時、執務室の扉が勢いよく開き連邦軍兵が数人雪崩混んで来た。「失礼します、アムロ大尉」
「何だ、君達は?」
「大尉の身柄を拘束するよう命令が出ました」
特殊部隊が使用する短機関銃を突きつけられ執務室は多々ならぬ雰囲気になった。
「わかった。大人しく従おう。だが、民間人の彼女達には一切手出しはしないでもらうぞ」
「…よろしいでしょう」
大人しく従い執務室を出る瞬間アムロは「チェーン」と一言だけ言って連邦兵と共に執務室を後にした。その言葉を聞いたチェーンは執務室の受話器を取りどこかに連絡を入れた。


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