クロニクルをつくろう

 時間をかければ、誰にでもできる手品がある。

 まず、52枚のトランプを用意する。

 手品師は観客のなかから無作為に選んだ助手に言う。このトランプから一枚、好きなカードを選んでください、と。

 彼は悩んだ末に一枚のカードを選んだ。

 手品師はそれをみてニヤリと笑う。じつはあなたが選んだカードをわたしは予言していました、それはこのカードですね。
 そう言うと、彼は服の袖に手を当てると、どこからともなくカードが出てきて、52枚のうちの相手が選んだカードを一枚、目の前に出す。

 相手は自分の心の内を当てられたと思い、動揺する。

 しかし、この手品。一番確実な方法がある。

 じつは手品師は52枚からどのカードが選ばれても構わなかったのだ。なぜなら、52枚のカードすべてを彼はそれぞれ隠しており、その隠し場所を彼は覚えているのだから。

 一番単純で確実なトリック。腕力だけでスプーン曲げをするようなものだ。

 だが、当てられた本人はこのトリックに気づかない。まさか、52枚もすべて覚えるなんて、そんな面倒なことをするとは思わないからだ。

 しかし、記憶する、というのは人がだれにも気づかれずに優位に立つために使われる王道だ。これ以上にないくらいに単純で確実な方法。人は他人の頭の中を覗くことができないからだ。

 そして、世の中には覚えておくだけで人を驚かせる52枚組のトランプに相当するものが存在ある。それが歴史だ。

 歴史、あるジャンル、対象、事件に至るまでの重要な事実の羅列。

 何かを語るときはその前にそこに至るまでの経緯を語れるようにしたほうがいいです。ただそれをするだけで説得力が違います。

 しかし、そうは言っても歴史なんてどうやって書くんだと思うかもしれない。そのために、本があるんです。

 なにかを語るときは本を読んで調べようと何度も言うんだけど。その際に注目するべきとこが5W1Hだ。
 大学や本を読み慣れている人にとってはできて当然だから、わざわざ言う人はあまりいない。しかし、だからこそ僕はあえて言う。本を読むときはそこに書かれた5W1Hを理解して記憶することを第一に考えよう。その上で筆者の考えを理解する。
 本を読むのが当たり前の人や学校の先生は文章に書かれた5W1Hを理解する、ということをわざわざ教えずに考え方を学ぶという抽象的なことをやらせようとする。だからこそ、なぜか本はたくさん読んでるはずなのに、考えが先行して知識を顧みない人が、自分の考えはスゴイんだって言って、ブログを書いたり、情報商材を売ろうとする。
 これが一番危ない。中には文章を正しく読み取る能力はないまま、語彙だけは増えて言葉を表現する力はある人もいるから、余計にタチが悪い。

 だからこそ、当たり前だと言われようと何度も言う。何かを話すときは本から起きた事実だけを学びとろう。

 以前、下のような記事も書きましたので、ぜひ読んでみてください。


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