見出し画像

投資の目標はどのくらいを目指したらいいんですか? ~ピケティに学ぶ。目指すは「インフレ率プラス3%」~

当連載では、これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。
前回までのQ&Aでは、投資をはじめるまでのお悩みについてお答えしてきました。では、いざ投資を始めるときに、目標値は決めたほうが良いのでしょうか?ダイエットや資格試験など、何かを始めるときには目標を決めることが成功の秘訣とも聞きますが、投資ではどのくらいのリターンを目指すべきなのでしょうか?今回は「投資の目標」がテーマです。

目指すは「インフレ率プラス3%」
投資でリスクを取って“潤いのある生活”を目指していくためには、「インフレ率プラス3%」程度という目標を勧めています。まず、モノの値段が上がる「インフレ」に対抗するために、リスクを取って投資する必要は普通はありません。例えば、1980年の日本ではインフレ率は7.8%でしたが、定期預金の金利も私の記憶では8%程度でした。インフレをカバーするためにリスクを増やすことはありません。一方で、インフレでモノの価値が上がると現金の価値は下がってしまうので、預貯金などでカバーしたほうがよいです。インフレ率と同程度のリターンは預貯金で獲得できると考えています。ただ、そうなるとお金の目減りは緩和されますが、プラスは期待できないでしょう。リスクを取って投資するのは、それにさらに“潤い”を加えるためです。普通預金では金利が高くても低くても、“潤い”にはつながりません。「プラス3%」が必要なのは、インフレ率に関係なく“潤い”を獲得するためです。

なぜ「プラス3%」なのか?フランスの経済学者ピケティの理論に学ぶ
将来の“潤いのある生活”のために、期待するリターンの程度を「インフレ率プラス3%」にするのには理由があります。世界的ベストセラーとなった「21世紀の資本」の著者であるトマ・ピケティというフランスの経済学者をご存知でしょうか。ピケティは、世界中で長期(何百年も!)にわたる膨大なデータを元に、資産家がどのくらいリターンを上げたのかを調べてくれました。ピケティの分析結果によると「資産を持つ人が得られる所得は、世界中の長期の平均でインフレ率プラス3%程度であった」ことがわかります。ということは、「インフレ率プラス3%」は、大変な勉強をしなくても、どんな人でもだいたい無理なく目指せる水準だと思うからです。ピケティの調べた時代には、投資ができる人はだいたい貴族やお金持ちで、資産である土地を農地として人に貸して地代を取ることで所得を得ていました。しかし昔と違って、現代の私たちはラッキーなことに、お金持ちでなくても少額から投資ができる仕組みがあり、投資信託やETFを通じて株式を持ったり、不動産を所有する代わりにREIT(不動産投資信託)*を持つことで、リターンを期待することができるのです。「インフレ率プラス3%」の目標は、投資の専門知識を身につけなくても、世界中に幅広く株式やREITなどを持つこと、また、元本を保全するために債券や預金にもお金を分散しておくことで達成できる可能性が高いと考えています。   *REIT(不動産投資信託)とは、投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産に投資し、その賃貸収入などの利益を投資家に分配する投資信託です。

”潤いのある生活”のためのプラスアルファ。長期の目線も忘れない
“潤いのある生活”のためには、インフレ率と同じ程度のリターンでは不足してしまいます。例えば、インフレ率が10%であれば、現在100万円で買える自動車は1年後に110万円になっていますよね。銀行の預金金利がインフレ率と同水準であったとしたら、100万円の預金は110万円になりますが、結局、インフレ分だけをリスクを取らずにカバーするということは、結果として同じものしか買えないということです。だから“潤いのある生活”のためのプラスアルファは生まれてきません。プラスアルファは、経済の成長を期待するけれども目先ぶれること(リスク)を受け入れることで獲得できます。株式などのリスク資産を持つことと引退後の“潤いのある生活”はこうして裏表の関係にあるということです。一時的に経済はよくなったり悪くなったりすることがあるので、その分資産の価値がぶれることはあります。しかし、世界中の投資先の企業で働く経営者や従業員がまじめに努力と工夫を会社に注ぎ込んで事業が成長したり、REITの投資先の不動産のロビーを改装したり、新しく部屋の借り手を見つけたりしてくれれば、あなたのリスクに応じたリターンが期待できるのです。長期で投資すれば、一時的な価格のぶれは相殺され、人々の努力の成果を享受できそうです。

まとめ
目指すは「インフレ率プラス3%」。世界経済の成長を期待し、価格のブレも受け入れながらリスク資産を持つことが目標達成への道

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?