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【夏越の大祓】半年に一度のリフレッシュ!神社で心と体を祓い清める神事

水無月・晦日(6月30日)/夏越の大祓(なごしのおおはらえ)

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「最近、部屋が汚れてきた気がする……」
「あれっ、肩に埃がついていますよ!」

私たちはこんな風に、目に見える場所や自分の体の「汚れ」には、わりと敏感に気がつくことができますよね。
でも、それが目には見えないものになると、どうでしょうか?

「最近、心が汚れてきた気がする……」
「あれっ、心に穢れがついていますよ!」

大抵の場合は、心の汚れなどを自覚することはなかなか難しいですし、人から指摘を受けるようなことも滅多にありません。

だからこそ神社には――半年に一度は自分のくらしや生き方を省みて、その心身に背負ったり積もったりしていた「罪穢れ」というものを、神様の御力で綺麗にしていただくための神事が存在しています。

それが一年の折り返し地点にあたる、6月30日の神事【夏越の大祓】です。
(※本来は旧暦の6月30日のため、新暦で言う8月半ば過ぎ頃の季節に行われていました)


罪穢れってどんなもの?

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目に見える汚れと違って「罪穢れ」というものには、姿形がありません。
ですが、自分の胸に手を当てて心でしっかりと感じてみれば、きっと多くの方は何かしら思うところが出てくるのではないでしょうか。

「罪」というのは、誰しもが生きる中で犯してしまう善くない行いのこと。
人に迷惑をかけたり、困らせたり傷つけたりするような行為は、悪気や自覚がなかったとしても、いつの間にか犯してしまうことがあるものです。

そして「穢れ」というのは、まさしく目には見えない心身の汚れのこと。
「気枯れ」とも言われるように、身近な場所で死や病に触れたときや、善くない環境や人の影響を受けてネガティブな感情に支配され、元気が失われてしまうこともそのひとつ。

このような「罪穢れ」を背負うことで、災いや厄が身に降りかかりやすい状態になってしまうので、それを定期的に心がけて「綺麗な状態に戻す」ということがとっても大切なのですね。

それでは、実際に各地の神社でどなたでも行える、祓い清めの方法をご紹介しましょう!


①茅の輪くぐりで祓い清めよう!

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神社がお好きでよく足を運ぶという方なら、きっとこの時期にどこかのお宮で、境内に置かれた大きな輪っかのようなものを見かけたことがあるのではないでしょうか?

これは茅の輪(ちのわ)というもので、茅(かや)の葉などを束ねて作られているのですが、この中を手順通りにくぐると、身が清められてまた半年を健やかに暮らすことができると言われています。

くぐり方は、次の通りです。

① 茅の輪の手前で一礼をして、左足からくぐって左を回り正面へ。
② 再び茅の輪の前で一礼をし、今度は右足からくぐって右を回り正面へ。
③ さらに、茅の輪の前で一礼。再び、左足からくぐって左を回り正面へ。
④ 一礼してから最後に茅の輪をくぐり、そのまま御神前へ。
⑤ 御本殿の神様に、お詣りをしましょう。

イメージは、横に8の字を書いて回るような形。

神社によっては詳細の案内が異なってくる場合がありますが、和歌や祓詞を唱えながらくぐることを推奨しているところもあるようです。
代表的な唱え言葉をご紹介しますが、あまり難しく考えすぎずに、神様に心を向けて丁寧に行うことが大切ですね。

【和歌】

◆水無月の夏越の祓する人は 千歳の命延ぶと言ふなり
(意味/6月に夏越の祓をする人は、寿命が長く延びると言われています)

思ふこと皆尽きねとて麻の葉を 切りに切りても祓へつるかな
(意味/心の悩みがすべて無くなるように、麻の葉を切りお祓いしました)

宮川の清き流れに禊せば 祈れることの叶わぬはなし
(意味/御神域の清い川で禊をすれば、祈りに叶わないことはありません)

【略拝詞】

祓へ給へ、清め給へ、守り給へ、幸へ給へ
(読み方/はらえたまえ、きよめたまえ、まもりたまえ、さきわえたまえ)


②人形・形代に罪穢れを移そう!

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もうひとつ、今度は体の内側にある罪穢れまでも取り祓う方法があります。
それは人形(ひとがた)、もしくは形代(かたしろ)と呼ばれる人の形を模した紙に名前と生年月日や年齢を記入して、自分の「身代わり」を作る方法。

そしてその紙で体(※特に悪いところや気になる場所)を撫でて、体の表面についた悪いものをそこに移し、さらに息を深く3回吹きかけることで、体の内側にあった悪いものも自分の中から取り去ります。

こうして、自分が背負っていた罪穢れはすべて人形に移すことができ、これは神社でお焚き上げや水に流すなどしていただけるため、神様のパワーで綺麗に祓い清めていただくことができるのです。


自宅の玄関に茅の輪守をお祀りしよう!

神社によっては、人形と初穂料を納めると「茅の輪守」というものをいただける場合もあります。

その御守りは、小さな茅の輪のような形をしていて、疫病や災厄などの悪いものが家に入ってこないように玄関にお祀りするもの。
半年に一度(※6月晦日と12月大晦日)、新しいものに交換していただくのが通例です。

そもそも、茅の輪くぐりのルーツは、日本に古くから伝わる蘇民将来(そみんしょうらい)という人にまつわる伝承の中にあります。

昔「須佐之男命(すさのおのみこと)」という、災いを退ける強い力を持つ神様が旅をしていて、ある村にやってきました。
その村には、お金持ちの「巨旦将来(こたんしょうらい)」と、貧しい「蘇民将来」という兄弟が暮らしていたのだそうです。

夜になったので宿を借りようと思った神様は、まず兄の巨旦将来のところに行って泊めてもらえないかとお願いしましたが、巨旦将来は相手を神様とはつゆ知らず、それを嫌がり断ってしまいます。
しかし、次に向かった弟の蘇民将来は、快く宿を貸すことを了承し、貧しいながらも心を込めて神様をもてなしたのだそう。

やがて時は過ぎ、彼らの子孫が暮らすその村には、疫病が猛威を振るっていました。
神様は以前に恩を受けた蘇民将来の子孫を助けてあげようと、「蘇民将来の子孫は、家の門に茅の輪をつけて名乗り出なさい」と言って、その子孫を疫病から救ってあげました。

この物語が元になり、神社で茅の輪をくぐったり、自宅の玄関に茅の輪守をお祀りする慣わしが広がったのだそうですよ!


神様の御力で心新たに再スタート

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さて、あなたもこの夏越の大祓という神事について、かなり詳しくなれたのではないでしょうか?

こうして神様の御力にあやかって、自分自身を見つめ直したり、心身を健やかに生まれ変わらせることができる文化があるということ……日本人は、とても恵まれているような気がします。

何をするにしても、心の健やかさと体の健康は、大切なことですからね。
生きていればそれらがさまざまな理由で脅かされていきますが、半年に一度このような機会があることで、目に見えない不調にも気がつけることも少なくありません。

神社に足を運んでご紹介したような祓い清めを行うことで、またスッキリとした気持ちで、残りの半年を乗り切ることができるはずです。
あなたも心と体を清めていただき、神様への感謝を忘れずに日々のくらしを送るようにしてみてくださいね。

きっとその繰り返しにより、心が磨かれて、さらに豊かな人生が開けていくことでしょう!

最後に、素敵な「大祓詞」の動画をご紹介させていただきます。
ご自宅でも、神様の「祓い清め」の御力を感じてみてくださいね!


文/巫女ライター・紺野うみ


※神主や巫女が監修・執筆を手掛ける、くらしに役立つ神道や神社の情報を届けるWebメディア「神様が宿るくらし」のコンセプトは、こちらの記事をご覧ください。


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