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サブスクの話 後編

(2023/04/30記)

 アプリ・ソフトの類いから情報媒体に目を移すと、建値であっても雑誌各誌の価格設定は非常にリーズナブルと言える(以下はいずれも1年契約した場合の料金を12カ月で割った金額)。

 文藝春秋電子版 900円/月
 週刊文春電子版 1833円/月
 ダイヤモンド・オンライン 1650円/月
 東洋経済オンライン 1500円/月

 購読者を集めるための新規エントリーディスカウントも行われる。文春本誌の電子版は最初の12カ月450円/月、週刊文春の電子版は最初の2カ月99円/月といった具合である。

 ニューズウィーク日本版(電子)のように1年間で1万5800円の価格が設定され、「年間50冊刊行されるから1冊316円」とカウントするケースもある。通常の紙版を買うよりも34%安いとのことだ。

 抱えている社員の数が多く、紙面構成の手間もあるから雑誌に比べて割高な印象をもっていた新聞も、並べてみるとそうでもないことがわかる(各紙とも1年契約した場合の料金を12カ月で割った金額)。

 日本経済新聞電子版 4277円/月(最初の2カ月無料)

 朝日新聞デジタル 1980円/月(最初の2カ月無料)

 毎日新聞電子版 770円/月

 日経新聞が飛び抜けて高いのは朝刊のみの設定がないからで、朝刊と夕刊の記事、更に電子版の有料記事が読み放題という構成になっている。

 電子版への申し込み誘導の途中にグループ内や提携する雑誌を選択できるページが組み込まれており、チェックボックスをクリックすることで、プラスアルファの月額料金を支払いそれらのコンテンツも読めるようになる。

 また紙面ビューアーと呼ばれるアプリで実際の紙面をトレースできる上、縦組みか横組みかを選ぶことも可能だ。

 日本で初めて紙面組みのデジタル化に乗り出した新聞社だけあって、こうした方面でのサービスは優れている(このあたりの話は杉山隆男さんの『メディアの興亡』[文春文庫]が詳しい)。

 朝日新聞は朝刊の記事プラスデジタルコンテンツのコースで、この金額。紙面ビューアーもあるが、朝日新聞の紙版を宅配で読んでいる人向けのサービスなのでデジタル版の恩恵ということではない。

 毎日は新規ディスカウントこそないものの十分に安い。もちろん全国17都府県でしか夕刊を発行できていない状況ゆえ、「統合版」と呼ばれるエディションプラスアルファの提供となっていることもあるだろう。

 そうはいっても、この金額の中には提携しているウォールストリートジャーナルの記事の読み放題も含まれているのだから驚きだ。

 ちなみに単体だと、

 ウォールストリートジャーナル日本版(電子) 2954円/月(最初の12カ月297円/月)

 という価格設定なので、ますます毎日の安さが際立つ感じだ。

 ちなみに770円/月というのは毎日新聞電子版のスタンダードコースで、サンデー毎日、週刊エコノミストの記事も読み放題となる、2640円/月のプレミアムコースもある。毎日新聞の紙面ビューアーは、こちらのプレミアムコースを対象とするサービスとなっている。

 私は新聞社が、読者に読みやすい、あるいは読ませたいかたちで記事の提供を行う上で、オリジナルの紙面ビューアーアプリは必須のツールだと考えている。

 紙の新聞最大のアドバンテージ、かつ新聞各社の叡智の結晶でありながら、今日、急速に失われつつある「どの記事を、どこに、どんな大きさで掲載するか」を判断する整理部の機能。

 これを、どんな情報も画面上でフラットにしてしまう、あるいはアクセス数の多い記事が優先的に上位に掲載されてしまうデジタル時代に再び活用し、新聞が主導的に情報提供の在り方をコントロールする殆ど唯一の方法だと思うからだ。

 もちろん紙面ビューアーを効果的に使うためには一定以上の大きさの画面が必要で、それは、最低でもipad以上のサイズを必要とするだろう。

 初代ipadから13年、8台のipadを乗り継いできた私も50代半ばを迎えて、その重さに音を上げそうになることも増えた。

 情報の羅列という意味でのニュースを見るならスマートフォンでも良いだろうが現状以上の紙面ビューアーの普及にはデバイスの進化が欠かせず、それは決して容易なことではない、と言うところまで理解した上で、それでも新聞各社(なんとなれば業界全体)には叡智の結集をお願いしたい。

 電子化という大きな潮流の中において、どこを目指しているのか微妙な立ち位置にいるのが読売だ。

 読売新聞オンライン+紙版(朝刊のみ配達のエリア) 3400円/月(夕刊も配達されるエリアでは4400円/月)

 なにしろ読売だけデジタル単体の設定がないのだ。読売オンラインをフルで見ようと思ったら必ず紙版を申し込まなければいけない。

 古新聞回収の手間が、重い荷物を運びたくない老人世帯やミニマルな生活スタイルを好む若者たちに忌避されていることが分かっていないのか。

 私も紙面あっての新聞だと思うし、紙にこだわるその意気は買うけれど、それだけで良いのかと聞いてみたくもなる(これまでも読売の知り合いには散々デジタルの切り離しを提言してきた)。

 ネットへのニュース配信にあたっては、あれほど先行していた読売オンラインが何故に今この体たらくか正直不思議で仕方ない(このあたりの話は下山進さんの『勝負の分かれ目』[角川文庫]が詳しい)。関係方面には是非一考願いたいところだ。

 現在、情報系で私がサブスク(?)しているのは新潮社の国際情報誌「Foresight」666円/月と、youtubeの「国際政治チャンネル」990円/月、そして1993年以来、定期購読を続けている月刊誌「選択」1000円/月である。

 ここに、ほぼ毎月買っている「文藝春秋」「中央公論」「本の雑誌」、テーマによって買う「Voice」「週刊東洋経済」、版元からお送りいただいている「アステイオン」「外交」「公研」というのがレギュラーな情報源ということになる。

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