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サブスクの話 前編

(2023/04/29記)

 各種サービスや情報の提供を受けるのにサブスクリプションでの支払を求められることが多くなってきた。

 雑誌や新聞の定期購読に代表される月極の支払は昔からあったし、情報の対価として捉えれば塾や教室の月謝もそうした例のバリエーションだったと考えることは可能だろう。

 しかし、デジタル化にともなって商品や商材が物質性を失いつつある今日、そうした契約の性格が所有から一定期間の利用許諾(というニュアンス)へと変化し、そこに抵抗を覚える人も少なくないようだ。

 まぁ、どちらかといえば、私もそちらに入る(苦笑)。わかりやすい変化例のひとつとして、パソコンソフトが挙げられよう。

 マイクロソフトのワープロソフト「Word(ワード)」や表計算ソフトの「Excel(エクセル)」といえば、長らくパソコンショップで1万数千円から3万円程度で買ってしまえば(買い切り)、バージョンによっては更新しないまま10年近く使えるものもあった。

 そうした記憶が身近だと、いくら常に最新版が使えると言われようと、とくに必要のないプレゼンテーション用ソフトや映像編集ソフトなど計九本が抱き合わせにされた統合ソフト「マイクロソフト365」に毎年1万2984円払い続けるのは気分的に高い。

 マイクロソフトは「月額だと1082円ですよ」などと甘言を弄するが(苦笑)、不要なサービスを削ってくれればもっと安くなるんじゃないの、そういうコースを作ってくれてもいいんですよ、とつい思ってしまう。

 それもこれも「ワード」と「エクセル」が仕事に欠かすことの出来ない、米や水レベルのインフラになっているからこそ感じる欲目であり、知識産業に奉職する身でありながらいつまでもそんな「水と情報はタダ」みたいな感覚ではいかんなぁ、と反省することしきりである。

 現在、私が仕事の上で絶対に欠かすことの出来ないサービスとしてサブスク契約を結んでいるのは以下である。

 まずオンラインストレージサービスの「DropBox(ドロップボックス)」。3テラバイトで2000円/月。日々の作業とバックアップ、終了した案件のアーカイブまで大活躍しており、とくにバージョン管理面での利便性は高く、このサービスのない時代に帰ることは個人的に苦しい。

 著者やプロジェクトのための共有フォルダを設け、そのなかで色々悪巧みをするのにも具合が良い。

 同様のプロジェクト管理にGoogleフォルダをお使いの方も多く、私も折々参加するのだが、使い勝手はドロップボックスの方が上ではないかと思う。

 次にコロナ禍前にはその存在も知らなかったオンライン会議システム「zoom(ズーム)」。こちらは100人までのミーティングをセットできるプランで1750円/月となっている。

 導入直後に何度かzoom飲み会をホストする機会があったのだが、無料版には3名以上のミーティングは40分までという接続制限があり、その都度つなぎ直すのに耐えられなかった。

 zoom飲み会は早々に廃れたが、その後も参加者が20名を超える勉強会を、主催者に代わってホストすることが続いたため有料版に移行せざるを得なかったという事情もある。

 個人的に使い倒しているオンラインフォトストレージサービス「30days」は330円/月というお値打ち価格である。

 研究会や飲み会の後、私から「写真をアップしましたので以下のアドレスから……」という案内メールを受け取ったことのある人は結構いると思うが、あのアドレスはこのサービスで作成したアルバムのものだ。

 写真のプリントサービスとも連携しており、私のアルバムを見てプリントが欲しいと思った人が、私を介さずに注文し受け取ることも出来る優れものだ。

 先日、洒落で申し込み、現在メチャクチャいじり倒しているAIチャットボット「ChatGPT(チャットジーピーティー)」は、2670円/月なので、ちょっとお高い。

 しかし、これはいろいろ検証する必要があって、コストに見合った有用性が認められれば続けるし、そこまで必要を感じなければサブスクを止めて無料版に戻るつもりである。

 すでに30年以上使用しているジャストシステムの日本語変換システム「ATOK(エイトック)」。これが「ATOK Passport」として10台までのデバイス間で辞書やエラー共有ができるようになったのは2021年のことであった。

 ちなみに年契約だと600円/月。しかし前述したように10台までのデバイスで共有してこの値段なので、フルに使えば月60円という破格のプライスである。私はPC2台とモバイルデバイス3台で共有しているので計5台。1台当たりだと120円/月という勘定になる。

 セキュリティソフトも、もう20年以上「ノートン360」のお世話になりっぱなしだ。年契約だと665円/月。ただしこちらも5ライセンスの金額なので133円/月である。

 もちろん支払っているのは私個人だからグロスの金額で考えないと意味はないのだけれど……。

 そう考えると、アドビのソフトはどれもこれも高いと思わざるを得ない。

 お絵かきソフトの最高峰「Illustrator(イラストレーター)」、写真加工ソフトの決定版「Photoshop(フォトショップ)」、DTPのための高機能組版ソフト「InDesign(インデザイン)」は、単独での契約もできるが、それぞれ2728円/月かかる。

 これらのソフトは組み合わせに妙があり、それぞれ単独で使うようなものではないところがミソだ。2本なら5456円/月、3本なら8184円/月になってしまう。

 そんな人のために、映像編集ソフトの「Premiere Pro(プレミアプロ)」など20本以上のソフトが抱き合わせになったコンプリートプランもある。ただしパッケージ価格6480円/月を個人で負担するかどうかは難しいところだろう。

 個人でお絵かきをしていた私の知り合いでも、パッケージソフトの販売が終わり、サブスク契約のみになった際に「イラストレーター」や「フォトショップ」の使用継続を諦めたというひとが何人かいる。

 そうした人たちの多くは「フォトショップ」のフル機能を使うことを諦め、ダウングレード版である「フォトショップエレメンツ」に移行した。サブスク設定なしの買い切りで1万9580円。現実解としてはこのあたりが限度だろう。

 アドビと言えばPDF作成編集ソフトの定番「Acrobat Pro(アクロバットプロ)」も1980円/月という微妙な設定だ。

 PDFを見るためだけなら無料の「Acrobat Reader(アクロバットリーダー)」でいいが、ちょっとだけデータをいじりたい、1つのファイルにまとめたい、2つに分割したい、ということはあるのだ。1980円という月額の設定は実に悩ましい。

 散々迷って、私がまだサブスクに踏み切れていないのが、圧倒的な変換精度で翻訳ソフトに革命を起こしたと言われる「DeepL(ディープエル)」と、英文の添削整文ソフトである「Grammarly(グラマリー)」である。

 この両者の組み合わせは、私のような英語、英作文が大の苦手という人には福音となるはずだ。両方とも無料版がリリースされており、それだけでも十分に役に立つので、まずはそちらを使ってから上位機能(課金)が必要か考えれば良いだろう。

 年契約すると前者は1000円/月、後者は1245円/月なので、その明白な有用性に比べれば十分安いと言って差し支えないだろう。「ChatGPT」を切ったら両方とも契約しようかと思っている。

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