データはポケモンカードをどう変えたのか? ポケカ飯・みれ・おすぎ 座談会
じゃんけん大会を運以外の方法で勝ちあがるためにはどうすればいいだろうか? もし他人の最初に出す手に偏りがあり、それがグーチョキパーのどれであるか分かったなら。例えば参加者の50%が最初に「チョキ」を出すということを事前に知ることができたなら、あなたは圧倒的有利に立てるはずだ。
TCGの競技シーンにおいて、この「じゃんけんの手の偏り」は「環境」と呼ばれる。時に何千人ものプレイヤーが参加する大型大会で勝つためには、デッキ同士の相性と、想定されるデッキタイプの偏りを理解することが重要とされる。今回話を伺ったのは、プレイヤーとはまた別の形で、しかしある意味誰よりも広くポケモンカードの「環境」を見つめている人たちだ。
座談会参加メンバー
データはポケモンカードをどう変えたのか
3人はいずれもポケモンカードのデッキや対戦結果のデータを収集・集計・加工・公開している。シティリーグやチャンピオンズリーグはおろか、時にはジムバトルの結果ですら、大会当日~翌日には知れ渡る。冒頭の例でいえば、じゃんけんで何を出している人が多いのかがすぐに分かる状態だ。当然、彼らのアウトプットは競技プレイヤーのデッキ構築やプレイングに一定の影響を与えているはずだが、当の本人達はそのことについてどう感じているのか。
ポケカ飯:環境全体に対する影響は正直分かりません。ただ記事に対する反響を通じて、データの重要性は感じています。今のポケモンカードは大会上位入賞者のレシピと下位のレシピ、そんなに差がないと思うんです。全体のレベルがすごく上がっている。一方で細かく大会結果やレシピを見てると、同じようなデッキでも「このカードの採用有無が勝敗を分けたんだろうな」というのが分かる。そこを知れるかどうかが重要。
みれ:私も環境全体に対しての影響というのは実感がないです。ただ確かにデッキは作るものから選ぶものになりましたよね。10年前はちゃんと動くデッキを持っていけば、とりあえずトーナメントには上がれた。でも今はそんなことはないですから。
ここで興味深いのは、2人とも環境全体の底上げという変化自体は認めつつ、そこに対する自身の影響に対してはかなり控えめな認識を持っている点だ。確かにみれ氏の場合、他の2人に比べアウトプットが単純集計データの提供に近いため、利用者はデータを加工・分析するスキルを持つプレイヤーに限定される。だがポケカ飯氏については、1.7万フォロワーというTwitter上での影響力に比して謙虚に見える。
一方、おすぎ氏には若干の葛藤が見えた。
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