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ノノクラゲ カミシモ2考②

カミシモロスという無人島を皆で乗り越え、ドラマという宝を手にしましょう!
今回は幼馴染だかコンビ内格差が生まれた溝口琢矢氏と大平峻也氏によるコンビ・ノノクラゲについてパフォーマンスを振り返ります。
巧みな表現力とメタな当人たちのキャラクターの融合が生む舞台のコクは、素晴らしい"隠し味"でした。(筆者は東京2回、大阪1回鑑賞)

キレキレダンスおしゃべりクソ野郎 溝口琢矢氏

「俺のせいか……」

溝口琢矢氏
1995年5月9日(27歳)、東京都出身。アミューズ所属。通称「アミューズのおしゃべりクソやろう」(パンフレットより)。
劇場版仮面ライダーや『ワールドトリガー the Stage』の三雲修役など歴任。アニメ『ドリフェス』の及川慎役の声優兼モーションアクターをしているだけあってダンスが異常にうまい。
幼馴染とコンビを組むも、相方はロケ番組出演などで知名度上昇中であり、2人で打ち合わせなどができない日々が続く冴えないネタ作り・ボケ担当の東雲嵩紀(しののめ・かさのり)役。
一方で4コンビの中で一番強烈なネタを繰り出すので、ポケモンで言うとミカルゲに出会った時みたいな衝撃が広がった。
ところで、みなさんは認知機能に自信がありますか?物事を認知すると言うことは、自分の中の常識やラベリングでもって理解した振りを続けていると言うことでもあります。劇場版ドラえもんのジャイアンを好きになりますよね。ジャイアンはあんなにいつもひどいやつなのにです。人間は認知機能がおかしいからこそギャップに弱いというわけ。つまり人間はみな東雲嵩紀を好きになることは避けられない…。

みたいなネタで相方を翻弄する。
最後は、洞窟にとじこめられた芸人を救う起死回生の策をうち、誰よりも前に出て無人島を脱出する。

ピュアで達者 大平峻也氏

「ノノクラゲはおまえが前に出なきゃなんだよ!」

大平峻也氏
1994年2月8日(28歳)、東京都出身。放映新社所属。
ミュージカル「刀剣乱舞」今剣役など。
「刀ミュは『がんばる主を応援する』コンセプトなのだが、それを最も体現しているのが彼」(筆者妻)ということだ。
今作では、コンビ飛躍のためにロケ番組でキュートなキャラクターを演じるものの、結果的にコンビの距離が開いてしまう倒錯にハマってあがく狭間くらげ役を演じる。キュートなキャラでは食物の評価を「キュン」の数で表す設定だが、打破してネタをやりたい葛藤が随所に描かれる。
もちろん今剣役での印象を引きずる人も多いのだろうがこそ、彼が劇中で泥臭く(文字通りツルハシで土木作業を行う)「売れてぇよ!」とシャウトする熱いシーンは印象的である。

他のコンビとは違い、二人だけは芸名を足し算してコンビ名をつけているほどで、仲が良かったことが伺える。ドラマではぜひ過去シーンを、見たい。ブロマンスを、見たい。

ノノクラゲのネタ① 天使と悪魔

ノノクラゲは、ストーリー上は上記地味ボーイ東雲とキュート芸人な狭間のすれ違いがミソなのだが、ネタでは東雲が理知的な狂人を行い、狭間が翻弄されるツッコミを演じる。
知名度の高い狭間が「お前が前に出なきゃなんだよ!」と言うのだが、このネタでは見事に前に出る。いや、右にも左にも出る。
話が複雑なので2回聞いても間違えてるところはあると思うので以下間違えてたら申し訳ないです。

ネタの流れ(ネタバレ注意)

東雲から「財布を拾うときのことを考えておいた方がいい」と進言。→狭間は「葛藤なんかなく交番に届ける」と拒否するが「やったことのなくて分からないけどやってみたい」別の例を出されてハメられてからロールプレイ開始→狭間が財布を拾うと東雲天使(キラキラキーン)と東雲悪魔(ドロドロドーン)が交互に出てくるが、財布の金を盗めと言う悪魔の囁きの誘惑強すぎて天使は悪魔に恋心を抱き始める→しまいには東雲悪魔は狭間が過去に財布を落として中身をすられた話を出してきて狭間が誘惑に負けそうになりパニックになる→狭間が現金をすろうとマインドコントロールされたところで東雲天使が…!?

と言う流れだ。このときの溝口氏の生き生きとした天使と悪魔は、シンプルに完成度がとても高い。イケボにファルセット、表情も艶やかさと狡猾さが切り替わる。
また大平氏もそんなネタの中で徐々にパニックになっていく具合は観客のボルテージをうまく扇動していた。そして何より含蓄のある昔話のような展開なので客は単純な笑い以外にもぐっとつかまれる。
オチも「じゃあお前ならどうすんだよ!」に対して、財布を届ける/パクるではなく「中身の現金を寄付して交番に届ける」という善意の刑法犯という手放しで笑えないボケが用意されている。

ハイライトはしかし、天使が最後天使然とするときに繰り出す「テンバツ」だ。これは東雲が×印を両手で作って突撃するフェアリータイプの攻撃である(威力80 悪タイプに必中)。
複雑な洗脳ネタに加えて、未曾有のダジャレまで仕込まれており、ネタのレイヤーが複層的である。
付言すれば、本編ではノノクラゲは外野だが、時浦が財布を盗んだ疑惑をかけられた「財布事件」がある。財布からお金を取ったと疑われて島流しにされた主人公をアイロニカルに昇華してるとすると、これはまじですごいネタなのだ。

ちなみに1回目に見たときはテンバツで大平氏がかなり遠くまで吹き飛ばされており、きゅうしょにあたった!!を生で見た感じだった。

ノノクラゲのネタ② パクチー

こちらも体裁は言語遊び的なところがある。正直天使と悪魔が怪作すぎて影が薄い説があるが、こちらも同様のつくりで狭間の揚げ足をとりまくって、観客をよくわからない世界観に引き込むという難しいネタだ。この動画でツカミの部分が出てくる。

ネタの流れ

パクチーが苦手で「食べれない」という狭間に「(物理的には)食べれない人間なんていない」という東雲による言葉尻のすれ違いが終始行われる漫才

なかなか思い出せないが小ボケ、小すれ違いが複数畳み掛けられるように繰り出される。このネタが難しいのが、ネタの盛り上がりのヤマが、天使と悪魔や他コンビのネタに比べて直線的ではないことだ。アクセルとブレーキを繰り返すので難しい。
また口数も多いため、私が拝見したときは二人がうまく回せていなかったように感じた。が、ネタが悪いと思う。これはシンプルにネタが悪いのではないか。

??キラキラキーン「ネタのせいにして、ほんとは覚えていないことを誤魔化してるんじゃないの!!」
??ドロドロドーン「いいんだよ、本当にそうだったんだからなァ!?」
??キラキラキーン「パクチーは一回しか見ていないのに、よくも言えるね」
??ドロドロドーン「あぁ!?こいつは今から円盤買って何回も見るから問題ねぇんだよ」
??キラキラキーン「悪魔さん、、、チュキ」

うわぁァァ!!キュンあげますからァーッ!!

ノノクラゲのアドリブ

ノノクラゲ、特に大平氏にはアドリブを出すタイミングが必然的に少ない。というのも、狭間は基本的に投げやりな態度でストーリーに参加させられているからだ。パンフレットの大平氏は「アドリブをどこに入れていこうかなど溝口くんと話していきたいです」とあり、漫才のマクラなどはかなりやってるみたいだ。

一方で溝口氏にはストーリー上でも結構回ってくる。

アドリブ① エクソダス邂逅シーンあるある振り

まずは私はレアな回に一度だけ立ち会えた幸運に感謝したい。偽番組の控え室周りで、漫才劇場時代からの付き合いである東雲と、時浦が邂逅するシーン。
あるあるネタで成り上がったYouTuber出身芸人のねあんでるから失礼絡みを受け、エクソダスで時浦の相方である大阪代表が「あるあるネタなんて誰でもできるんじゃ!」と言い放つ後に、「すごい!じゃあやってもらいますか…?」と振るのが溝口氏だ。ここで大阪代表が自分が受けるか、荒牧氏に振るのが大半のようだが、溝口氏に振られた回があった。
お題はBBQあるあるだったが溝口氏は「BBQに行こうと思って計画を立てるけど、いざ行こうとして一緒に行く友達がいないことにショックを受ける」という登場時のキャラクターの延長線上で卑屈ネタを繰り出し、拍手が起こった。
なんなら振ってきた荒牧氏に「君もこっち側だろ!」と軽口まで叩いていた。
なにより、溝口氏はこの序盤時点で「前に出てはいけない」物語上の制約がある。おそらく溝口氏に振ることとお題は決めていたかもしれないが、ほとんど回数はないにも関わらず新風を吹かせたのには、🫰🫰🫰

アドリブ② とったお金の使い道

主人公時浦が相方の大阪代表に財布事件の時浦サイドを伝えるとき、外野にいたノノクラゲが補足するシーン。
「とったお金はすぐに使ったと聞いた。でっかいギター買ったとか!」という狭間の次に、使い道について東雲がアドリブをいれる。
私の回は、
①「でっかい犬を飼った」→これは時浦のネタ、ペットで回収
②「周り全員の恨みをかった」
③「相方を買った」

②ですでに言葉遊びが始まっているのも東雲の秀才さを出してて良き。
……え、ちょっと待って、①と③のとき、エクソダスのネタ、ペット(時浦自身がペットになりたいという狂気ネタ)だったんだが、もしかしてここが起点……!?
ネタの予告はラストワルツだけだと思ってたが…!?だとしたら、この舞台は緻密すぎ、ってコト!?

アドリブ③ 髪型

一度だけオーラスのセリフ前に「ノノクラゲって言うけどくらげより僕の髪型の方がクラゲみたいだ」という小ボケがあった。

毎回引用して怒られそうだが、アドリブについては桃氏のこちらを参照されたい。そして公式は毎回のアドリブパートを円盤に収録してほしい。それが通常版よりいくら高くても私は買う。あなたも買う


ノノクラゲのコンビ名について

ノノクラゲは他のコンビとは違って幼馴染なので、役名の足し算で作られている。元々の仲の良さを強調しつつ、序盤の不仲さが対照的に写るようになっている。
野のクラゲには、おかサーファー的な意味合いもあるのかもしれない。
最新のポケモンでメノクラゲのフォルムのやつが陸で激走している同じ名前のやつがいるが、そのことでも2人は仲良しだ。

(リククラゲはノノクラゲの進化系。舞台とポケモン新作リリースが被り、キャストは大体みんなしてるのかポケモンアドリブは随所に出てきて、筆者はポケモンスカーレットを買ってしまった。)

さて、ここからは妻が急に出張先から送りつけてきたノノクラゲの二人のネーミングについての考察に共に驚きたい。

ちなみに東雲くんの下の名前は「カサノリ」とのこと。元ネタはカサゴかなあ。
クラゲとカサゴ
どちらも毒があったりする

獲物を追いかけるタイプではなく、岩などの障害物に身を潜め近付いた獲物を捕食する待ち伏せタイプ。

行動範囲が狭い。
カサゴは積極的に移動する魚ではありません。形態からも想像できますが、遊泳力が高くないため一度居着いた場所から広範囲に移動することはまれです。


!!
彼らは命名から一貫しているのかもしれない。上記おぞましいネタを繰り出してくる彼らは、自ら出ていくタイプではなかったが、ロケをきっかけに前に出るようになって終わる。
地味だが触れると毒がある。(踊ると華がある。)
そういう2人とするのならば、本作の脚本家・大歳倫弘氏は緻密界の抜け忍である。
なんとしても彼らの仲睦まじい様子をドラマで見られることを祈る。

ノノクラゲのキャラソン『ベクトル。』

タイトルは数ⅡBで我々を苦しめていた↑↑のことで、すれ違う2人のことが描かれている。
このキャラソンは前回詳述したのラストワルツのものよりもだいぶ簡素である。それもそうなのだが2人はダンスがバチクソにうまいからだと思う。振付師も、相対的に感動してしまったのか2人の踊りだけそもそもの構成や一つ一つの動きが桁違いに緩急がついている。
っていうか、歌も多分歌ってる。ラストワっ…

例のごとく構成から述べたい。

  • Aメロ

  • Bメロ

  • サビ①

  • Aメロ短縮

  • Bメロ

  • サビ②

  • Cメロ

  • ラスサビ

ということで歌詞も含め曲内での変奏は少なくシンプルだ。ABメロに比べてサビはかなりグルービーに音数が増える。ダンスがのせやすい
歌詞もサビで同じ言葉を繰り返すことがある。
二人「もどかしいな しいな こんなに近くにいて」(サビ①)
二人「遠回りロードロード もっと歩み寄れたならいいのに」(サビ①)
二人「バカみたいだ たいだ 凸凹の穴におちて」(サビ②)

手抜き説もあるが踊りやすい説を推したい。
というか、最初は地方ロケ可愛いキャラ推しを嫌ってた頃から、このダンスパートではアイドルみたいに客煽りまでしている。それらの芸まで手中に入れたとも見れるだろう。千秋楽では「俺のせいか」という溝口氏の歌詞をメロディ外して「おれのせいかぁ~↓」とかました。
ちなみに最初にあるダンスパートでは、溝口氏はまだストーリー上生真面目不貞腐れボーイなので、ガッツリとは踊らないところがエグみを感じる。

溝口氏はポジティブでテンションが上がる曲という。収録日は雨だったらしいが吹っ飛ばすくらいで歌ったそう。

大平氏は同じ言葉をくり返すところが好きだそう。(…ってかこの偉人コミュ障みたいな話し方するな…?)

もどかしいな、だけでなく「もどかしいな しいな」がいいということで、畳語法使いですか、俳人ですか、ということで、役者が言葉に興味を持って演じるのはとてもいいなと文学部出身は思いました次第です。
(話し方癖すご丸…?)

(えっ…癖すご丸…!!役でやってるんですよね…?!)

ピュアな彼らをコンビで推す

とはいえ、やはりこの二人の役はシンプルなので難しい。対話が少なかっただけで互いを思い合っている、というのは逆に言えば、長い時間のせいでこうなっているということで、舞台上の一瞬で距離感を表現し、再構築するのは至難の業だ。
加えて今回狭間役の大平氏はほぼ、やるせない立ち回りである。そこから張り詰めた弓から放たれる矢のごとく、一発で全てをひっくり返す大平氏は、3度目聞いた時は声が枯れていた。それくらいアップダウンの激しい役で、大変魅力的な演技だった。パンフレットでも総合演出の橋本和明氏。

〈ノノクラゲ〉の大平くんとは別の作品でも一緒に仕事をしたことがあるのですが、本読みで彼の言うセリフを聞いたら泣きそうになるくらいグッときました。彼、あらためて声がいい。

【舞台カミシモ2】公演パンフレット

一人で夢を追うのは難しいが、二人だと余計なことが増える。認め合っているがために現状に不満があるという二人の役はそれが為ピュアなので、終わった後は爽快感がある。

どうか、ドラマでは二人の来し方行く末を描いてほしい。繰り返しますが、ブロマンスが、見たい。東雲が書いてきた中学時代の最初のネタ、みたい。ブロマンスが、見たいぞ。

オマケ 楽屋に野生の溝口



筆者捕獲

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