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■プロローグだけを読む②■「MINXの任せる力」高橋マサトモ/MINX・著

はじめに

今こそ、教育の差がサロンの格差である時代

 1985年に東京・下北沢で産声を上げた小さな美容室MINX

 夢中でお客さまを集め、また来ていただけるように一生懸命提案をし、技術を磨き、スタッフを育ててきました。

 そして32年。

 よく、光陰矢のごとしといいますが、確かに駆け抜けた32年は大変なエピソードで過ぎていくようで、しかしとても鮮やかでした。あっという間、という感覚はあまりなく、たくさんの挫折と苦悩、喜びや感動で満ち溢れています。

 それは32年変わらず人を大切にしてきたからだと思っています。

 今いるMINX 200名のスタッフたちを始め、ファミリーサロンのオーナーやスタッフ、卒業していったスタッフたち。また、MINXの母であり、私のパートナーである鈴木三枝子。すべてがMINXの大切な家族だと想う気持ちは32年変わらないのです。

 そのたくさんの仲間たち1人ひとりを息子や娘のように想い、育てることに全力を尽くしてきたから、鮮やかで濃い32年だったのだ、と……。

 今多くの美容室が「経営し続けられない」悩みを抱えているといいます。

 データを調べてみますと、1年経たないうちに店をたたんでしまうサロンが半数近くあるとか。10年以上企業として存続するサロンは一握りなのだそうです。

 企業が経営を続けられなくなるのは、現金が回らなくなるとき。その原因となる要素は事業計画が散漫だったり経理知識が足りなかったりと、勉強不足や不十分な仕組みにあるのでしょうが、問題の根本は結局“人づくり”にあります。人をつくり、人を育て、人を残すことで事業は続いてゆくのです。

 なぜなら、美容室の主たる商品は人で、美容業は教育産業だからです。

 利益を上げたいのなら、安定して売り上げをつくれる美容師を育てるほかありません。

 30年後も愛される美容室として企業存続させたいのなら、成長し続け、後進も育ててくれる美容師を育てるほかありません。

 MINXが走り抜けた時代は、美容ブームに始まり革新的な美容企業の台頭など、本当にたくさんの時代の波が寄せては返す32年でした。

 リーズナブルサロンも生まれ、今また業務委託やシェアサロンなど、新たな業態で美容室経営を取り巻く時流はめまぐるしく変化しています。私は積極的に時流に乗り、柔軟に対応してゆくことを心がけてきました。

 しかし、どんな時代が来てもMINXの経営の基本は“教育”にあります。

 ただし、伝統的な徒弟制教育のままでは堅実経営はむずかしいでしょう。

 今こそ、美容室の企業家をめざすとき。その改革の根幹も、教育が担います。

 この本では、MINXのマネジメント4軸に沿って、人材育成というミッションに対し、どのように文化醸成と環境整備を行ったかを解説します。


・経営=ビジョンと意思決定

・スタッフ=強い“個”の集団

・経理=戦略と情報公開

・ブランド=プレス機能と時流対応

 職人でも企業人でもなく“美容師”を育てるための習慣と仕組み。

 みなさんのサロンが“永く必要とされる”参考になれば幸いです。

高橋マサトモ


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高橋マサトモ

1956年宮城県生まれ。1985年に東京・下北沢にMINXを設立。1992年のJHAグランプリ受賞を始め、ヘアデザイナーとして活躍。1994年に全国7都市でのヘアショーを開催するなど、これまでの美容業界にない新鮮な演出と圧倒的なデザイン力で一世を風靡した。その後“視覚から思考へ”と時代に合せて経営方針を転換し、2000年からは全国で経営セミナー「高橋塾」を開催。その先見性と強いビジョンに、全国のべ3万人以上の美容室経営者が高橋塾を受講。熱い支持を集め続けている。2016年に代表取締役会長に就任。

美容師さん向けに、カット・カラー・パーマ・トリートメントの基礎&最新技術と経営情報を発信! 『月刊BOB』『月刊NEXTLEADER』を発行する、美容専門出版社です。