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【クリミナル・マインド 9】200 – あらすじ

「未来に備えて過去から学ぶのは、他からは学べないからだ」
 科学史家 ジェームズ・バーク

【感情のトリガー↓】
】極秘の任務
【ー・】標的の理由・馴染の仲間
】尋問と拷問
】国務の代償・臆病な裏切
】頼りの援軍・俠女の奮戦

【哀】極秘の任務
 昨夜ゆうべのクリーブランドで起きた、大量殺人事件をぶじに解決した帰りのこと——。ジェイジェイは、クルーズ部長の指示で夕刻の静まりかえった広間にやってきたのだが、そこにクルーズが現れることはなかった。
 ここは仄暗ほのぐらいどこかの施設の中。妖気のただよう狭い空間にアームレス・チェアがひとつ置かれており、ジェイジェイは今、その椅子に拘束されている。必死に抵抗しようにも口と両手・両足はしばられ、鎮静剤の入った注射を打たれてしまう。やがて、彼女の目をうつろになり、目の前の視界がピントのずれたレンズのようにぼやけていった。
 ジェイジェイはこれから二四時間の拷問を受けることになる。相手はかつて、三年前の極秘任務にかかわっていた、イラクの元特殊部隊——アスカリであった。彼れはアメリカ側に雇われた兵士で、その任務は尋問や拷問による情報収集だったという。
 その道に精通したプロによる、過酷な拷問がジェイジェイを待ち受けていたのだった……。

【ー・驚】標的の理由馴染の仲間
 ジェイジェイは三年前、行動分析課からアメリカ国防総省に異動していた時期がある。だが、それは彼女の身を守るためのフェイクであった。実は国務省に移っていたのである。
 任務はアルカーイダを組織し、二〇〇一年の九月一一日——アメリカ国民に一生の傷をのこした——同時多発テロの首謀者であるビンラディンの居場所を、捕虜ほりょした側近そっきんから聞き出すことであった。
 ジェイジェイはそれを請け合ったことで、作戦に関わった国家機密情報の管理を任されていた。そこには “インテグリティ誠実” と呼ばれる極秘のデータ・ファイルが入っている。それを開くためのアクセス・コードを持っていたのだ。部長のマテオ・クルーズとともに——。

 仲間のジェイジェイとクルーズは、拉致された。
 行動分析課BAUのメンバーは各自、情報をあつめ、“インテグリティ” にたどりつく。が、国務省に向かったホッチナーは、次官に、極秘の外交をじゃまされては困ると、首をつっこむことにかたく釘を刺されてしまうのであった。
 ホッチナーは、そこでめげるような男ではない。彼れには、ある考えがあった。こんなとき、もっとも頼りになる人物がいるではないか。これまで、我々と数々の悪党どもをつかまえてきた優秀なプロファイラーが。語学がとても堪能で、人一倍、堅気かたぎな性格をしてる女性が。
 そう——エミリー・プレテンティスという女性が。
 ジェイジェイのピンチに、あのエミリーがやってくる
 あの エミリー が!!

【哀】尋問と拷問
 身動きがとれない状態で窒息寸前までの水浴びを受け、そのれたからだに激痛のはしる電気ショックが流される。そんな拷問が何時間もつづけられていた。
 ジェイジェイは、ひたすら耐える。仲間が助けに来てくれることを願い、なんとか時間をかせごうとした。そのためには、ギリギリまで耐えるしかなかったのだ。
 だが、元イラクの特殊部隊——アスカリの手はゆるまない。彼れの手下がジェイジェイの数メートルとなりで拷問してるクルーズ部長を別室につれていき、カウントダウンが告げられる。三……二……一……
 別室には小さな窓があった。
 ピカッとひらめき、音は止んだ……。

 三年前——。
 ジェイジェイは、ナディアという女性から友好的に情報を聞き出すため、ゲリラに捕まっている彼女の娘を救い出そうとした。ひとりの母親にとって、娘はなによりも大事な存在のはず。その娘を助けてあげれば、きっと、仲間の巣窟そうくつ場所も教えてくれるはずだとんだのだ。
 しかし、作戦は失敗する。ナディアの娘は殺された。
 ジェイジェイは残念な報告をつたえるべく、捕虜となって基地内にいるナディアのもとへ向かったのだが……
 ナディアは何者かによって、殺されていた。
 強姦ごうかんという拷問を受けて……。

【哀・憎】国務の代償臆病な裏切
 なぜ、娘の救出作戦がバレていたのか?
 なぜ、打ち明けようとしていたナディアが殺されたのか?
 ジェイジェイはある仮説を立てた。もしかしたら、我々の内部に二重スパイがいるのではないか? そして、その二重スパイの情報を漏らそうとしていたから、ナディアは殺されたのではないか?
 特殊部隊を指揮していたマテオ・クルーズに伝えると、味方軍を基地から離れた場所にうつし、そこで、尋問することが決められた——のはずだった。
 岩山が多く、まだ明るい荒野の道。
 なんと、軍用の防弾車で移動中に、ゲリラ集団の奇襲にあったのだ。
 激しい爆発の轟音ごうおんのせいで、自分の話し声すら聞こえない聴覚のまひを起こし、ドアを開ければ、すでに猛然もうぜんとした銃撃戦が開始されていた。
 気づけば、ここは基地内だった。
 C I A のエリートだと称された男——仲間のヘイスティングスは、裏切ったアスカリの仲間に拉致された。目の前のクルーズにそう伝えられると、より深刻そうな顔でジェイジェイに伝えてきた。
 ざ ん ね ん だ っ た ——と。
 ジェイジェイのおなかにいた初子はつご——
 鼓動を止めたのだった……。

 現在——。
 ジェイジェイはアスカリに銃を突きつけられ、“今度は赤ん坊だけでは済まないぞ” と告げられた。彼女が妊娠していたことを知っていたのはクルーズだけ。夫のウィルにでさえ言わなかった秘密なのに、なぜ、アスカリが知っているのか?
 クルーズではなかった。あの時、彼れとそのことを話した直後に話しかけてきた人物。きっと、あの男に相違そういない。
 ゲリラの仲間だったアスカリに拉致されていた——
 C I A のエリート—— ヘイスティングス だ。
 腰抜け、と呼ばれて登場したのは彼れだった。
 ナディアを強姦し、殺したのも彼れだった。
 奴は今、クサリで吊り上げたジェイジェイの——その美貌の顔とからだに触れている。腰に触れ、臀部でんぶを撫でたその手は、彼女の恥部ちぶのほうへと移っていく。
 俺れの子をはらませてやろうか、と言いながら……。

【安・緊・晴】頼りの援軍俠女きょうじょの奮戦
 ジェイジェイのアクセス・コードは逆にすることで、サイレント警報が作動する仕組みになっていた。
 “BLACK BIAD” 。闇夜やみよのなかを黒い鳥が光を目指して飛んでいく、エミリーと話していたときに決めたサイン。
 そのおかげで、ヴァージニア州に駆けつけてきたエミリーが、ジェイジェイの送ったサインだと気づき、ガルシアの技術によって居場所をつきとめることができたのだ。
 殺されていなかったクルーズは、とうとう自分のアクセス・コードを入力する。ジェイジェイへの乱暴を阻止するには仕方がなかった。が、セキュリティ・コードを解除し用無しとなった今、ふたりにはここで死んでもらう必要がある。まずは、男。アスカリは、ギザギザの恐ろしいナイフをクルーズの肋骨下を目指して突き刺した。次は、女。彼れはジェイジェイに近づき、クルーズの真っ赤な血が残るナイフを首もとに——
 アスカリは即死した——。
 ホッチナーの弾が命中したのだ。
 ジェイジェイは、仲間に救出された

 クルーズを根回しして行動分析課BAUに近づけていた C A I のエリート——ヘイスティングスは、逃走した。彼れは手下を連れて、施設の屋上へと向かっていく。呼んでおいたヘリと合流し、国から逃亡を図るためだった。
 しかし、駆けつけていたモーガン、アレックス、リード、ロッシがそれを許さない。ヘイスティングスの手下と彼れらの銃撃戦が始まるのだった
 そのいっぽうで、手下が食い止めている間に、ヘイスティングスは屋上へと先に進んでいく。それを追っていたのは、エミリーに拘束を解かれていたジェイジェイであった。
 逃亡を阻止するために、ジェイジェイは屋上の死角から発砲をしつづけた。だが、弾を避けたヘイスティングスも必死に撃ち返してくる。ジェイジェイの弾はなくなった。そこに彼女の後を追っていた、エミリーが助っ人に加わり、男を目掛けて発砲する。またもや弾切れ……。互いに弾をなくし、難を逃れたヘイスティングスは、そのままタラップにかけ上がっていった。
 屋上で待機しているヘイスティングスの携帯が鳴った。
『ファイル書き換え中……』
 盗んだ情報は無効となった——と、そこにエミリーが飛びかかってきた! 彼女の右手が相手の顔面をとらえ、ヘイスティングスとの乱闘が開始する。が、相手の力強い払いビンタがエミリーの頬とまぶたに当たり、倒れてしまった——と同時に、ジェイジェイの怒濤どとうの蹴りが、彼れの股間を直撃する! しかし、まだ相手はひるまない。ジェイジェイと取っ組みあいになり、その勢いあまりに二人は転げてしまった。
 危ない! その先は屋上の絶壁だっ!!
 ふたりは共に、データ・センターのフェンスの置かれていない屋上から落ちてしまうのだった——

 ジェイジェイは見下ろした。乱暴されかけた——憎きヘイスティングスの死に様を。なんと、ぎりぎりのところでエミリーが彼女の手を取っていたのだ。
 手下どもは F B I に射殺された。アスカリに刺されて重傷を負ったクルーズは、命をとりとめた。
 アメリカの危機は彼れらの手によって救われたのだ。
 事件解決後、仲間は落ちついた BAR に集まっていた。
 ガルシア、リード、ロッシ、ホッチナー、アクレックス、モーガン、ジェイジェイとその夫のウィル、そして、今回、特別に駆けつけてくれたエミリー。
 彼れは勝利の乾杯で幕を閉じるのだった——。

【感想】
 ということで、いやぁ〜、まさかの人物が登場しましたね。地味にあのストラウス部長もチョロっと出演しております。クルーズ部長とジェイジェイの関係性もここで明かされ、なんと、その時に初子を妊娠していたという驚き。
 ジェイジェイこと、クックの実子じっしでもある——ヘンリー君もチラッと出てきます。ファンには、たまらないでしょうねぇ。

 2001年に起きた、あのまわしき恐ろしい事件——アメリカ同時多発テロ——の悲劇をふたたび起こさせないためのいましめでもあり、僕らはしゅに交われば赤くなりやすい生き物でもあるから、気をつけなさいというメッセージ。
 映画さながら、あっぱれでありんした。

「深淵をのぞく時、深淵もこちらをのぞく」
 哲学者 フリードリヒ・ニーチェ

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