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【クリミナル・マインド シーズン8】少女の夢を断つ

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 美しい夜景の広がる港町。黒い海が町ちを囲み、桟橋さんばしのある観光スポットで、ある少女がアコースティックギターを弾きながら、路上ライブを行っていた。それはそれは美しい歌声で、誰れも聞き惚れてしまうような——薄汚れてしまった魂が浄化されるような——そんな歌声だった。
 ほとんどの観光客は素通りして行くのだが、何人かは彼女のギターケースに投げ銭を入れてくれる優しい人たちもいる。少女の声が届いた人たちに——。

 ——ヤツらを生かしてはいけない。
 ——ヤツらは生きる価値がないんだ。
 ——ヤツらのせいで……
 男はブーツの紐を念入りに強くむすぶ。ワイシャツのボタンも鏡で確認しながらきちんと留める。外し忘れは許されない。その上に黒い革ジャケットを着て、ヘアセットも抜かりなく整える。髪の毛一本のみだれもなく。そして、男は引き出しを開けた。
 四角い腕時計と丸い腕時計が種類ごとにちゃんと分けられ、その隣りのしきりを作った空きスペースには、グレーのスポンジ素材でびっちりと埋められている。一本一本の凶器が直接くっつくことのないように。男はそこから一本の凶器を手に取った。
 鋭利な刃物——ナイフを——。

 観光客もだいぶ減り、そろそろ帰宅しようと路上ライブを終えた少女がお金を数えていた。すると、ケースに入ってるギターの上にドル札を置いてくれた人物が現れる。
 少女はとても嬉しかった。自分の歌に誇りと自信が持てる最高の瞬間である。少女はあどけない笑顔をその人物に向けた。
「ありがとう♪」

 その人物はとても優しく紳士的で、車で自宅まで送ってあげようとした。夜遅くに少女がひとりで帰るのは危険だからと言って。
 この純真無垢な少女に警戒心という概念はなかったようで、こころよく、その紳士的な男性の車——黒いフォードのマスタング——に乗ったのである。
 助手席のシートを前に倒し、後ろの席にギターを置く。そして、助手席側に少女が乗った。
 ——!?
 ——あれ、ビニールが被さってる。

 車のシートは全てビニールが被されていた。
 紳士的な男性は運転用の革手袋をはめ、運転席に乗った。そして、レバーをひねってエンジンを掛ける。例の凶器——鋭利なナイフ——を隠し持ちながら。

 少女には歌手になるという夢があった。
 みんなに愛のある歌が伝われば、この町、いや世界がもっと愛で満たされるようになる。そしたら、もっとみんなが笑顔になってくれる。そんな幸せに満ちた世界にしたい。それがこの少女の目指す夢であり、生きてく目的——のはずだった。
 男はナイフを逆手に少女のおなかを目掛けて一気につき刺す! 耳をつんざくような断末魔だんまつまのさけび声が響いたが、すでに周りの観光客たちはいなかった。男は何度も何度もちゅうちょなく刺し続け、少女の夢は命といっしょに絶たれたのだった——。

(……って、え——っ!? あんなにすばらしい歌声の少女になんてことをっ! いやぁ、これはひどい……。——っあ! ミーティングの時間ですね)

【事件内容】
①場所——。
 ロサンゼルス郡——サンタモニカ。
 先週の間に丸焦げ死体が三体も桟橋さんばしで発見。

②被害者——。
 最初の二人は男性。
 三人目は女性。
 身元の特定は困難。

③犯行手口——。
 被害者を丸焦げになるまで焼死させている。

【考察】
①男性も女性も狙われている——。
 おそらく、性的暴行はされていないはず。

②被害者を焼いた理由とは——。
 被害者は犯人の関係者だったのか?
 殺害手口を隠して捜査の撹乱をはかったのか?
 被害者に自分と同じ苦しみを与えたかったのか?

③丸焦げになるまで焼いたということは——。
 時間を要するため、犯人は我慢強いサディストなのかも。
 誰れにも気づかれない場所と、道具を用意していたことから、この犯人は秩序型——計画的——である。

④遺棄した現場は観光スポットだった——。
 旅行者を標的にねらったのか?
 それとも、観光客への警告か?

【懸念】
①失踪者との照らし合わせ——。
 一致する被害者はいなかった。

②歯形の照らし合わせ——。
 一致する被害者はいなかった。
 被害者が地元民なのか観光客なのかも不明

③犯行の間隔——。
 最初と二人目の間隔は四日。
 二人目と三人目の間隔は二日。
 犯行の間隔が短くなってるため、すぐに次の被害者がでるかもしれない。

 本部で事前説明会ブリーフィングを終えた行動分析課BAUのメンバーは、犯行の間隔が一日になる前に捕まえるということで、早急にロサンゼルスに飛び立つのだった——。

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 男性の方は一人で見たほうがいいかもです。
 ブサイクな泣き顔をさらしてしまうかも(汗

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