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ホラー小説、シナリオを書くためにできること

神里です。

気温もあがり夏が近いと肌でも感じる今日この頃。
暑い夏から秋の夜長まで、ホラー話の飛び交う季節に入りますね。

さて今回は、ホラー小説やシナリオを書く時に気をつけることなどを簡単に書いていきます。

個人的にホラーは苦手ではあるのですが好きなジャンルのひとつなので、今回の記事とは別に、本気の指南書を書き上げてもみようかなと思います。

ホラー、って何?

いやなにってあんた、怖いやつでしょう?

そうなんですが、じゃあ怖いって何って話でして。

屁理屈のこねくりあいみたいですが、突き詰めると結局何なのかわからないのも事実。
それは、怖いという感情は他の感情に比べて直感的で想像の能力によるところが大きいものだから、だと私は認識しています。
説明は難しいけど怖いもんは怖い、というやつ。
*最後に、怖いとはなにか、私の意見を書いておきました。

読者としてはそれでいいのですが、筆者としてはそんなふわふわした感覚で上質なシナリオを書くことは、かなり難しいです。

しかし実は、ホラーって物凄く書きやすいうえ読者に良い評価をいただきやすいジャンルなんです。

何故かというと、ホラーシナリオや小説を読んだ読者が感じるものはだいたいが同じだからです。
「こういう話はどんな風に感じられるのだろう、人によって捉え方が違いそうだ」などという心配をしなくていいのです。「怖いか、怖くないか」話はそれだけなのです。

話を戻しまして、そんな書きやすいというホラーシナリオや小説っていったいなんなんだと。

怖いというただひとつの感情を読者に(強く)与えるもの、です。

では「怖い」の感情を、どのようにして与えるのか

言われなくてもわかる、と思われるかもしれません。
真夜中に山にでも入れば怖くないわけがありませんし、深夜に廃屋や跡地に行って何も感じないなんて事はないはずです。なんなら、真っ暗な家の中でさえ恐怖を感じることさえあります。
しかし、いざそれを書こうと思うと……つまってしまいませんか?
あるいは、書くことはできても自分でもよくわからないままにある程度のものが書けてしまい、感覚的な執筆になっているのでは。

もちろんそれで毎回上質なものが書けるのであれば、それは才能ですのでそれでいいかもしれません。
しかし、私もですが、大部分の人にはそんな才能ありませんので、仕組みをある程度は理解する必要があります。

上で、ホラーは書きやすいといいました。
その最大の理由は、読者に与える感覚が一つだけで、ほぼ全ての人がその感覚に対して同じ感想を抱く、要するに「わかりやすい」内容なんです。

つまり、いかにしてこの感覚を読者に与えることができるかをマスターできれば、上質なシナリオが書けるようになるわけです。


御託はいいので、本題に入りましょう。

(始める前に、少し寄り道)
ところで、ホラーシナリオには、王道の展開があります。
①登場人物達が、禁忌とされている場所へ立ち入る
②そこで何かをやらかし、やばいことになる(そのまま帰る場合もあり)
③その後奇っ怪な出来事が起きたり病に臥したりする。死ぬ場合もある。
④禁忌とされている場所に立ち入った事がバレ、なんとかするべくその手の人のところへ行く(主人公が子供の場合に多い。大人だと自分達で探す)
⑤対処してもらう。このときにも恐怖体験多々あり
⑥主人公はなんとかなったが、他の誰かはもう助からない。以後会うなと言われる

2chなどに書き込みのあった有名な怖い話の多くはだいたいこの流れでできていますね。
まぁそもそも立入禁止区域に入るな、悪いことはするな、って感じですが……

これは王道の展開がーのひとつというだけで、いつもこれに沿って書きましょうというわけではありません。
ただ、何もアイディアがない状態で初めてホラーを書こうというのであれば、まずは王道に則って話を考えてみるといいかもしれません。


さて、ではホラーシナリオを考えていくのですが、もちろんまずは話の筋を考える……よりも、方向性を考えたいです。

ホラー要素を重要視するのか、キャラ性やストーリー性を出して物語を重要視するのか……

すべてやればいいのでは?
ことホラーに関しては、そういうわけにもいきません。何を重要視するか方向性次第で書き方を変える必要があるからです。
(無論、全てを備えることも可能ですが、かなりハイレベルになります)

ホラーは、怖いという感情を読者に与えることが最重要事項です。「ホラーを読者に楽しんでもらう」のか「ホラーを題材にした物語を楽しんでもらう」のか、同じようでかなり違うのです。
もちろん、どちらについても触れていきます。


ホラーを感じてほしい場合
これは言わずもがな、話を読んで怖いという感情を抱いていただくもの。
物語の面白さやキャラクターなども、全てホラー部分を引き立てるための材料になります。
気をつけたいのは、全ての要素がホラーを感じることよりも大きくならないようにすること。物語自体やキャラクターに魅力を感じすぎてしまうと、「怖い」より「面白い」が勝ってしまい、ホラーを感じつつも物語を楽しむ姿勢をとらせることになってしまいます。
故に、特別こだわりがないのであれば、ホラーを感じていただけるような書き方を選んでいくのが得策でしょう。そのためにできることを、簡単に紹介していきます。

登場人物は仮名の方が良い
これはひとえに、登場人物を深堀してしまうと愛着がわき、キャラが立つようになることを防ぐためです。
キャラが立ってくると物語としての面白さがホラー要素を凌駕してしまい、純粋に怖いという感情を感じてもらいにくくなる可能性があります。勿論うまく書けばそのような事もなくなるのですが、結構レベルが高いですので、慣れないうちは仮名を使うのが無難です。
詳細な理由として「キャラへの感情移入、没入感を少しでも与える」「既知キャラゆえの安心感を与えない」というものがあります。
主人公に自分を当てはめて、とまではいかなくとも、登場人物がはっきりとした個を持っていると認識してしまうと臨場感などの感覚が薄れてしまう可能性が高まります。フィクションに感じられる、というとわかりやすいでしょうか。どこか「その登場人物達のいる世界」を感じ、肌で感じる恐怖というものが薄れてしまうかもしれません。
また、キャラに名前がついているとそれだけである程度キャラが立ってしまいます。すると読者はそのキャラ達の物語を楽しむ目線になってしまい、恐怖を感じることが難しくなるかもしれません。
ホラーを感じてもらう事に全力を尽くすなら、こだわりがないならやっておいた方がいいと思います。
(無論、名前が出ていてもキャラが立っていても全力でホラーを感じさせる事はできますが)

できる限りすべてリアルに書く
これは全ての小説やシナリオに言えることですが、際立たせたい要素がある場合、臨場感を出したい場合……などなど、要は様々な感動を与える話を書きたければ、リアルに世界を描いてください。
例えば、亡霊にとりつかれて大変な事になる話を、作り話で書くとします。実際にフィクションと後々明かすかどうかは別にして、書く側としては亡霊の存在は作り話ですから、言い方はあれですが嘘ということになります。
それを読み手がわかっているにしろわからないにしろ、一番肝心な所ですので際立たせなければなりません。
そのためにどうするのか、という部分に、この「リアルに描く」という話がいきてきます。
ここでは、目に映る光景を詳細に書く、といった説明的な話はしません。「当たり前の事を、当たり前と書く」これを徹底してもらいたいのです。
持ったリンゴから手を離せば、リンゴは地面に落ちます。長く歩けば疲れます。寒ければ身体は震えます。
こういう、私たちが実際に生きている世界で当たり前に起こることを、作中でも当たり前に書いてください。そうすることで読者は一層没入して物語の世界を感じ取ってくれるようになります。
一見当たり前で特に意味のないテクニックのように思えるかもしれません。しかしこれは、執筆テクニックなどという枠を超えた、もはや心理的テクニックともいえる、ものすごく大切な要素です。
自分ではなかなか効力を感じられないテクニックかもしれませんが、書けば書くほど、このテクニックの重要性を理解していくことになります。

説明的な文章はできるだけ省く
先に書いておきます。例外があります。
例外はさておき、ホラーを書くとき、例えば禁忌とされている理由であったり該当場所のいわくであったりを読者に伝えなければならない場面は必ずと言っていいほど出てきます。
そういったとき、「キャラが話すようにする」「できるだけ短くする」などというどこぞでよく聞くようなテクニックをもって執筆されるかと思いますが、私としてはそれでは足りません。
「読書が好きで、小難しくても説明でも論説でもなんでもこい」という方でなければ、今のご時世、説明的な文章ははっきり言って好まれません。それどころかせっかくそれまで面白い、怖いと感じていたのに、そこで急激に興ざめしてしまいかねません。
「そんなこと言ってたら本は読めない」という意見も個人的にはわかりますが、ジャンルに合わせ時代に合わせるということは読者に合わせるということ、個性を保ちつつもある程度は世間に合わせて書く必要があるとも思います。
では具体的にどうしたらよいのか?
厳密にこれは、何を説明するのか、によって変わってきますので実際には個々での対策が必要ですが、大きくくくって言うなら「説明は小分けにする、興味を呼びそうなものに関連付ける、極端に簡略化するもしくはぼやかす」といったように書いてみるといいかもしれません。
・小分けにする→一度にすべてを説明せず、分ける。例)(いわくの場所へ)向かう前、向かってる途中、該当場所に突入する前、などに分ける。
・関連づけ→説明の合間にたとえ話や連想される話を挟み込む。物語化、比喩化などして読みやすくする。
・簡略化、ぼかし→年号や出自などまでは詳しく書かず、肝心な部分だけつまんで書く。また、はっきりしたことは書かずにぼんやりと書いてしまう。そのような構成にする。
など、説明が説明的にならないような工夫をしてやると、読者に余計な感情を与えず作品に没入してもらえます。
イメージとしては、読みやすさを損ねない書き方を心掛ける、という感じです。

脅威に直面する直前までは描写をいかし、直面後は直感的に書く
これは当たり前の話ではありますが、霊的なものに出会ったりとんでもない事が起きている最中にもだらだら描写を書き続ける、なんてことはないようにしましょう。
描写は雰囲気を感じ取ってもらったり読者の想像をかきたて没入してもらう重要な仕掛けではありますが、あくまで引き立て役である事に変わりはありません。読者の想像をかきたてるわけですから、ほんの僅かとはいえ状況を伝えるのに1ターン余分にかかってしまいます。恐怖とは直感的なものですから、1ターン伝達が遅れると途端に恐怖は薄れ、臨場感が遠のき、どこか遠い別な世界の出来事を俯瞰で見ているようなイメージになってしまうのです。
だって、霊的なものが出てきたりとんでもない事が起きているというのに、悠長に考えたりしていられません。いざホラーに直面したらその瞬間の感情や思考をストレートに読者へ伝えなければ、その登場人物はなんだか余裕がある人物にさえ見えてしまうかもしれません。例えば一人称進行の場合、それまでは理知的なキャラだったのに恐怖に直面したら直感的な文章ばかりになる、なんて人間味があって恐怖がよく伝わってくると思います。
単純に、メリハリという意味でいってもきちんと差異をつけるべきでしょう。

書き出すと沢山あるので、今回はこの程度にしておきます。

ホラーを題材とした物語を楽しんでもらいたい場合
基本的にはホラーを感じてもらいたい場合と同じですが、大きく違うのは話にストーリー性を持たせることやキャラの背景をきちんと描くなどすることです。
これにさえ気をつけていればあとはいつものように書くだけですのでこちらの方が書きやすい人は多いかと思います。
気をつけるというほどの事でもないですが、気にして書くといいかなと思う事をいくつか挙げておきます。

主人公たちの活躍の場を作る
当たり前の話ではありますが、ホラーをメインにした場合にはおおよそ見られない展開がこれです。
メインはあくまでキャラクターに焦点をおいた物語であり、彼ら彼女らが活躍(怖がるなども活躍のうち)する様子を主に描く必要があります。ゆえにホラー主眼の話でキャラに名前を書き足しただけでは圧倒的に魅力が不足してしまい、ホラーとしても物語としても中途半端になってしまいます。それでも、怖ければいい、面白ければいい、に変わりはありませんが、お世辞にも上質な作品とは言えなくなってしまいますね。
具体的にどうすればいいかは、どんな物語にするのかどういうキャラクターが登場するのかによって変わってきます。漠然と言えば「このキャラ達の(ホラー展開の)物語をもっと見たい」と思ってもらうように、書く必要があるわけですね。

主人公たちの心情を主にして書き進める
物語を重視しつつもホラーをかもせる最大の要素でもあります。
わかりやすく言うと、一人称視点で地の文などを書く場合がまさにこれ。
主人公の活躍を期待できますし、主人公の感情などが直に伝わってきますから、ホラー要素も色濃く取り入れたい場合は一人称視点をお勧めします。
そうでなくとも、細かに登場人物の心情や思考を上手く書く事で、キャラを立てながら物語を進める事ができます。
ただ、一人称視点の難しいところは、主人公となっているその人物が見たこと聞いたこと知っていることしか書く事ができません。どういうキャラクターにするのかは、しっかり考えておくべきですね。

ホラー以外の要素にも目を向ける
よくある話ですと、キャラ同士の恋愛模様であったり、先輩後輩の関係であったりといったキャラ同士の交流が挙げられます。
前半に楽しそうなパートを入れてギャップを演出したり、キャラの掛け合いを重視し伏線をちりばめておいたりと、作品全体を見通して組み込めるテクニックもあります。
最重要なのは読後に「面白かった」と思ってもらうことで、その要素の一つ、引き立て役の一つとしてホラー要素があるという話ですのでね。
それでもホラー要素を入れるわけですから、ホラーパートはホラーパートできっちりそちらに注力して書きましょう。
面白い物語を作るには、この要素は欠かせません。手っ取り早くキャラの魅力を紹介できるものでもありますので、上手に取り入れてみましょう。


結局「怖い」ってなんなの……

これらに気をつけて書いていけば、ホラー小説やシナリオとしてある程度のものが書けるのではないでしょうか。

しかし……

相変わらず「怖い」という感情がどういうものなのかはわからないまま。

一番肝心な部分がぼけたままでは、感覚的な執筆から逃れられないような気がしますね。
こういう感情についてはナントカ学で答えがあるのかもしれませんが、私は経験などから「怖い」とは、こういうものだと思っています。

「自分に危害を加えるもの、そのおそれがあるもの。これに対し『怖い』という感情を覚える」


皆が書いたホラーも読んでみたいにゃ~。

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