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総選挙:開票前の雑感(1):「風が吹かないとき」に示される政党の真の強さ

投票日を前にして、少し思うところを「覚書」しておきたいと思います。

選挙情勢は流動的なれど、なんとなく結果は見えつつあります。自民党・公明党の連立与党は議席を減らすだろうと。しかし、連立与党として過半数を切ることはない。焦点は、自民党が単独で過半数を維持できるかどうかです。

「野党共闘」は一定の成果はあったと思われます。野党の議席増は間違いない。ただし、政権獲得には至らない。立憲民主党は、小選挙区では健闘しているが、比例代表は思うように伸びていない。維新の会は、好調。コロナ対策で大奮闘した吉村洋文副代表(大阪府知事)が人気を集め、改選前から議席3倍増が見込める勢いとなっています。

ほぼ、こんな結果が固まってきたのではないでしょうか。この結果から思うところを書き残しておきます。

今回の総選挙、どの党にも「風」が吹きませんでした。盛り上がらない選挙だったともいえます。しかし、こういう時だからこそ、みえてくることがあるのです。それは、政党の本当の地力がわかるということです。

本当は、今回の総選挙は野党にとって千載一遇の好機といえるものになるはずでした。「コロナ対策」が評価されなかったこと、五輪・パラリンピックの強硬開催が厳しく批判されたことなどで、菅義偉・前政権の支持率は急落していました。一方、前回の2017年総選挙とは異なり、立憲民主党・共産党を中心とする「野党共闘」は着々と進んでいました。

しかし、自民党は総裁選を通じて「選挙の顔」である総理・総裁を岸田文雄氏に変えました。総裁選では、右から左まで政策志向が異なる候補者が政策論争を展開し、「疑似政権交代」をイメージさせる多様性を示して、支持率を回復させました。

総選挙に入ると、政策は安全保障・経済安全保障関連などを除けば、不完全ではあるものの、次々と「左旋回」しました。アベノミクスで広がったとされる格差を是正し、個人レベルに利益をもたらす「新しい資本主義」、「全世代の社会保障」などを打ち出しました。それは、国民が求めていることに対応する自民党のリアリティといえるし、自民党と野党の違いを明らかにするというより、むしろ野党の政策にかぶせて、野党を消してしまうということだと思います。自民党は、予算をつけて、実際にやってしまう力がありますからね。それは、自民党の伝統的な戦い方を踏襲したものです。

それは一定の成功を収めたと評価できるのだと思います。議席数は単独過半数を確保できるかどうか。大幅減ではありますが、元々、菅政権の支持率激減、政権交代がリアリティを持ってきていたところからなんとか盛り返したのです。以前、まじめな岸田さんが求められる時が来るかもしれないと書いたことがありましたが、まさに誰もやりたくない、できれば避けたい仕事をやりきったと言えるのかもしれません。

政党の真の強さとは、「風が吹かないとき」にどれくらい踏みとどまれるかで決まると思います。

特に、「政権交代ある民主主義」を作る効果があるとされる、小選挙区制をベースとした選挙制度の場合、政党の真の強さは残酷なほど晒されることになります。かつて自民党も2000年代前半、約300→約100→約300と、ものすごい議席数の増減を繰り返し、政権を失ったこともあったのです。

その意味で、自民党という政党の懐の深さ、強さが示された選挙なのではないかと思います。







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