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学部生の「政策科学」の研究とは?

政策科学とは、学際的な学問であるので、「研究とは?」という問いへの答えは、分野によってぜんぜん違うものになるのだと思います。これから書くことは、先日のゼミで私が学生に話したことです。現在の私の考えであり、これまでも結構あれこれと考えてきたことで、これからも変わるのだと思いますが、書き残しておきたいと思います。

また、「学部生の研究」であり、そのゴールは卒業論文を書くことです。それは、大学院以上のプロフェッショナルな学術研究とは異なることも、お断りしておきます。

学生がよく口にすることで、気になることがあります。それは、「政策提言」が研究のゴールであり、卒業論文で書くことだと思い込んでいることです。

誰が教えたんでしょうか?私は1回生、2回生の演習科目を基本的に担当しなくなっています。日本語と英語、両方のゼミを担当している数少ない教員ですので、1、2回生は免除となっているのですが、変な教え方をしてるんじゃないかと不安になります。

政策科学の研究は、「政策提言」ではありません。なによりもまず、政策のアイディアなんてものは、どんな政策分野であれ、世の中に出尽くしています。なにをやらなければならないか、誰でも知っていると言っていいのです。

そんなところに、学部生が「政策提言」といったところで、なにができるのでしょう。とても荒唐無稽なアイディアを、「学生らしい自由な発想」と持ち上げる風潮がありますが、私はそんなリアリティのないことが大学の学びだとは思わないです。

だから、学生が考えるべきことは、「政策提言」ではなく、さまざまな政策のアイディアがあるのに、なぜ実現しないのか、「なんでやねん」「どないなっとんねん」と調べることなのです。

私は4月に新しくゼミに入ってきた3回生には、まず徹底的に文献・論文を読ませます。毎週1本、読んで要約して短く発表させる「書評会」をやる。

日本のゼミの伝統的なやり方である、いわゆる「輪読」はやりません。ゼミの初期の頃やったんですが、機能しませんでした。うちの学生は、子どものころから本を読んできていない人が多い。輪読というのは、基本的な文献・論文をすでに読んだ人たちが、特に重要な本を一緒に精読することで、学問を深く理解しようというもので、そもそも本を読んでいない学部生に、1学期に1、2冊を分担して読んでも、ほぼ無意味だと気付きました。

だから、伝統的なやり方に固執しませんでした。徹底的な「多読」をさせることで、まずモノシリになることを求めます。うちのゼミは「個人主義」「自由主義」に基づき、個人研究で研究テーマはバラバラです。それぞれが徹底的に多読して、まず知識を徹底的に身に着ける。それぞれの研究分野で、少なくとも同じ学部の同学年では、一番モノシリになること。これが最初に与える目標です。

さて、こうして次第にモノシリになるゼミ生ですが、それだけだと研究じゃありません。これは「勉強」にすぎません。大学での学び、研究とは、知識を身に着けるだけでは十分ではなく、大学を出た人間に求められる社会的使命を果たすこともできません。

大学生に求められることは、知識を、自分の独創的な主張に高めることです。どんなことでも、ただ与えられる知識を使って、誰かの指示通りに動くだけではなく、自分の確固たる考えを持ち、行動できる人間になることが、大学を出た人間に求められる使命であるはずです。そういう人間になるための訓練が、「研究」をすることだと、私は解釈しています。

さて、モノシリになってきた3回生に、「勉強」から「研究」に進めるためにどうしたらいいかを、私は以下の通りアドバイスしました。

まず、本・論文を読むときに、知識を頭に入れるだけではなく、世の中にどんな「政策提言」があるか、徹底的に探し、リスト化しなさいということです。政策提言は、自分で作るのではなく、もう世の中にある。それを1つ残らず探しなさいと。

今は、役所や政治家だけが政策のアイディアを持っているのではありません。むしろ、政策提言は「ビジョンハッカー」とか、SNSを駆使したりした草の根にゴロゴロある時代です。

そして、ここからが研究です。どうして、世の中に数多ある政策提言が実現しないのか。何が障害になっているのか。新しい政策が実現すると、誰が損をするから、反対しているのか。社会構造が障害になっていないか。文化、歴史的な背景はないか。いろんなことを考える。

なにを取り除けば、政策が実現するのか。それを詳細に調べて、記せ。これが政策科学の研究です。それは、社会というもののしくみを知ることだと思います。そして、社会の仕組みを知れば、社会のどんな組織に入っても、確固たる自分をもって渡っていけると思います。

政策提言がゴールではない。それは研究のスタートです。そういう話をゼミ生にしました。


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