クリティカルアナリティクスのルール:持説と逆の立場で討論する。
上久保ゼミで行っている「クリティカル・アナリティクス」という独特のディベート・トレーニング。それは、すでに紹介した通り、1対全員で討論することです。1は立論者、その他全員とは討論者です。
ルールは1つだけ。絶対にお互いに同意せず、反論し続けることです。
それ以外にも、レベルが上がってくると、いくつかの決め事を追加します。その代表的なものが、「持説と逆の立場で討論する」ことでしょう。
端的な例を挙げると、立論者が中国からの留学生で、「ウイグル弾圧は人権侵害である」という、中国政府の公式な見解、多くの中国の方が信じる主張と逆の立場で論を立てる。それに対して、日本人学生が「ウイグル弾圧はテロ対策であり、治安維持に必要である」と討論するのです。
そうすると、中国人留学生は、自由民主主義国の人権感覚を学ぶことになり、日本人学生は、中国人の考え方が、いい悪いは別としていかに違うか、自由民主主義では当たり前の人権感覚を中国にぶつけても、話が噛み合わないのは何故なのかを知ることになります。
何より重要なのは、自らが信じる考え方から一歩引いて考えることで、論理性に徹してものを考え、議論することを体感し、身につけることができることです。
それは、自らの感情に基づいて、都合のいい話ばかりを信じたり、自らと違う考えを持つ人を排除するという、現代社会の風潮から離れる、第一歩となります。