『Glee』を観て聴いて歌って
刺繍をしていると考え事が捗る。きのうの会話を思い出してあぁ言えばよかった今度伝えようとか、理不尽な物事についてこういう解釈をしたらハッピーだなとか、前向きなアイデアは刺繍をしていると浮かぶことが多い。椅子に座って針を握って自分以外を覗く……そんな風につくる私の刺繍はきっと、社会であり、思想であり、政治なのだろうなとよく思う。ここのところ無性にモヤモヤすることに気がついた日から、毎日刺繍をするようにしてみると、スポーツのあとみたいに気持ちが晴れてきた。
音楽をかけると踊り出すこどもに「ごはんがおいしいね〜」とか「オムツをかえようよ〜」とかを歌にして伝えてみると、歌っぽい発声で返事をしてくれて、ミュージカルみたい。ミュージカルといえば、ひさしぶりにドラマ『Glee』を観たくなって「the scientist」とか「don’t stop believing 」とか「seasons of love」とかの歌唱シーンをNetflixで探して聴いた。ミュージカルはそれまで喋っていたひとが突然歌い出して喧嘩をしたり仲直りをしたりして、心が透けて見える感じがたのしい。こうやってコミュニケーションをとる世界だったら、ことばの他にメロディや手振りでも気持ちが汲み取れるぶん揉め事が減るのだろうか。『Glee』は絵本の制作中にBGMに流して励まされた思い出もあって、いつ観ても元気が出る。
私のビタミンとも言えるNetflixは最近まったく観る時間がない。一日中海外ドラマを観ていた休日が懐かしい。今はこどもと観れるディズニーシアターが元気の源で、特に『3匹のこぶた』や『ねずみの三銃士』などのクラシカルアニメの世界に心奪われている。動物たちが歌って動きまわる。そこにことばが乗ることで愉快なコミュニケーションが嵐のように巻き起こる。シンプル過ぎて、むしろ強烈。いつか私の刺繍も歌ったり踊ったりさせたい。明るい刺繍がいいなぁ、と最近はつくづく思う。