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「おもしろい!」の作り方5 『点ではなく線で考えるキャラクター』

こんにちは、神岡です。
「おもしろい!」の作り方 第5回目です。
今回のテーマは読者が物語を好きになるうえで欠かせない要素=キャラクターです。

今回は例として、「響け! ユーフォニアム」を取り上げます。
この作品はとにかく魅力的なキャラクターが数十名規模で登場するシリーズなので、ぜひ読んでください。めちゃくちゃ勉強になります。
文字がとっつきにくいという方は、まずアニメからでも!

ではでは、始めていきます。

概要

この記事では以下のことについて書きます。

・受け手がキャラクターを好きになる場合は二種類あり、作り手は両方を重視するべきである。

物語におけるキャラクターの役割

論文、条文、評論、新聞記事など……
世の中には、さまざまな種類の文章が存在していますが、それらと物語の明確な違いは、キャラクターが登場するかどうかという点にあります。

キャラクターは受け手に世界観や状況を伝える窓口であり、またキャラクターが動くことによってストーリーは進行していきます。
すなわち、キャラクターとは受け手が物語に入り込むための導き手であると言えます。

また、受け手が物語に最後まで付き合うかどうかの判断材料としても、キャラクターは重要です。
どんなにストーリーが面白くても、受け入れがたいキャラが出てきた瞬間、読むのを断念する場合もあります。
逆に、たとえ中身のないスカスカな話でも、キャラを見るために物語を追いかける場合もあります。

では、受け手はキャラクターのどういった側面に魅力を感じるのでしょうか?

実は、キャラクターの魅力の感じ方には二種類あると言われています。

一つは、キャラクターそのものに対する、絶対的な魅力
もう一つは、キャラクターの関係性に対する、相対的な魅力です。

参考

こちらの本にそのことについて議論されています。
(なお、以下ではキャラクターの魅力の種類についてのみ議論し、参考図書タイトルにあるような性差については議論しません。)

絶対的なキャラクターの魅力

ここでの絶対的とは一人だけのキャラクターという意味合いです。
キャラクターの容姿や性格、言動、仕草に魅力を感じる場合がこれにあたります。

絶対的な魅力を感じた受け手の需要として、そのキャラクターのフィギアやポスター、缶バッチといったグッズが存在します。

相対的なキャラクターの魅力

対して、相対的とは複数人のキャラクターの関係性という意味合いです。
2人の場合だとカップリングという言葉がありますが、要はキャラクターどうしの絡みや位置づけ、会話などに魅力を感じる場合がこれにあたります。

相対的な魅力を感じた受け手の需要として、キャラクター達の二次創作やアンソロジー、ドラマCDといったグッズが存在します。

両者を意識したキャラクターの作り方

私は、これまでいくつかの創作指南書やウェブサイトを見てきたのですが、
殊キャラクター創作については、後者について書かれたものが壊滅的に少ない印象を受けます。

どれも、キャラクターの性格や思考、魅力や欠点、容姿など絶対的な魅力については詳細に議論しているのに、キャラクターどうしの関係性については、その下位に位置付けられているのです。

これでは、点としてのキャラクターは魅力的でも、キャラクターどうしの線としての魅力は半減してしまいます。

さて困った、と悩んでいたところ「響け! ユーフォニアム」の創作秘話と出会いました。

こちらには「響け! ユーフォニアム」の作者である武田綾乃先生のインタビューが載っており、そこでキャラクター創作について語られています。

それによると武田先生はキャラクターを創作する際、あらかじめペアを想定しているとのことです。
つまり、一個人からではなく最初から関係性を視野に入れてキャラクター達を創作しているのです。通りでしんどい関係性のキャラが多いわけです。

これは相対的なキャラクターの魅力を引き出すために、非常に強力な方法だと思います。
他にもキャラクター創作について勉強になることを語っておられるので、ぜひ読んでください!

書き手から見たメリット

上記に従って、自分もキャラクター創作をしてみたのですが、この方法には素晴らしいメリットが存在しました。

ここで言う絶対的な創作方法の場合、キャラクターの人数分について、性格や思考、魅力や欠点、容姿をゼロから決定しなければなりません。
これはかなりの労力です。

しかし、もし二人のキャラクターの間に、あらかじめ「犬猿の仲」という線が引かれていたらどうでしょう?
片方の価値観を決めれば、おのずともう片方の価値観は相反するものになるでしょう。思考法や性格も似たように、関係性に準拠してパズルのピースを埋めるように決められます。

つまり、関係性というヒントがあることで、キャラが作りやすくなるんです。

ゼロからの創作が重ければ、先にイチを置く!

創作のメソッドは個人によって相性があるので、一概にこれが正解とは言い切れませんが、今の方法で行き詰っている場合は試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回のまとめです。

・キャラクターの魅力の感じ方には二種類ある。
・キャラ個人に惹かれる絶対的な魅力と、キャラの関係性に惹かれる相対的な魅力である。
・後者を意識したキャラクター創作は書き手にとってもメリットがある。

キャラクターに対する受け手の需要は二種類あります。
それを意識して、どちらも応えられるようにすれば「おもしろい!」は作れるはずです。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。
ではでは、次回もお楽しみに。

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神岡鳥乃の電子書籍です。
わずか100円ちょっとのお値段です。
今回の記事が缶コーヒー程度には役立ったなと思われたら、是非読んでいただけると幸いです。


感謝です!