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紹介したいnote記事「たんちゃんごめんね」

ゆーさんの「たんちゃんごめんね」という記事を紹介します。

 子どもの頃に引っ越しが多かったというゆーさんは、6年生の1学期に最後の転校をした時、新しいクラスのリーダー的存在である「たんちゃん」に出会いました。

「たんちゃんは、女子の中で一番背が高くて、気が強くて、そして声が大きかった。私の事をよく、にぶい、とか、ぼーっとしてる、と言った。だから私はたんちゃんの事がすこし苦手だった」

 子どもの頃は女子の成長が早く、男子よりも体が大きかったりします。そのうえ気が強いわけですから、自然とクラスのリーダー的存在になったのでしょう。

 そういう子にいじめられないようにグループが形成されていくわけですが、女子の人間関係は特に難しいですよね。

「6年生が終わるころ、女子の間でちょっとしたもめ事があった。そして、それまでリーダー的存在だったたんちゃんが嫌われるような感じになってしまった。もう一人のリーダー的存在のにっしんがたんちゃんの事を悪く言い始めたのだ」

 別のリーダー的存在「にっしん」の登場です。集団が形成されると必然的にいじめが発生するようで、それまでいじめる側だった人がある日突然いじめられる側になる時もあります。

 私などはそういう光景を見ながら「どうしてみんな仲良く出来ないのかな」と考えたりしていましたが、勝ち負けにこだわって一番になりたいと思う人がいる限り、なくならないのでしょうね。

「にっしんは言った。『ゆーちゃんもいじわるされたんやから、たんちゃんのこときらいやろ? きらいって、言ってやり』」

 こう言われると辛いですよね。いじめなんてしたいと思っていないのに、いじめるように強制されるわけですから。

「私は、下を向いてしまった。そんな事ないよ、って言えなかった。だってほんとに、私はたんちゃんの事が好きなのか分からなかったし、気の強いたんちゃんが私にきらいと言われた位で動じるとも思えなかった。重苦しい雰囲気の中、何も答えない私を見てにっしんは『ゆーちゃんもたんちゃんの事がきらいやって』と話を締めくくった」

 ゆーさんは何も言ってないのに、最終的にはいじめに加担した形になってしまいます。これ自体がいじめだと思うのですが。

「その日の学校帰り。私がひとりで歩いていると遠くからたんちゃんが歩いてくるのが見えた。私はなんとなく、たんちゃんが来るのを待っていた。近くまできた途端、私は涙が溢れた。たんちゃんは泣きながら歩いていたのだ」

 気の強いたんちゃんが見せた涙。ゆーさんも思わず泣いてしまいます。

「私の前をさっと通り過ぎようとするたんちゃんの腕をとっさにつかんだ。
たんちゃんは『ゆーちゃん私の事きらいなんやろ』と、手を振りほどこうとする。私は何も言えなかったけど、手だけは離さなかった。そして、ふたりでその場に立ち尽くして泣いた。ごめんね・・たんちゃん、ごめんね・・」

 これはもう、映画のワンシーンみたいですね。この場面がスクリーンに映し出されたら、観ている人全員が号泣してしまうでしょう。

「中学生になってクラスはばらばらになり、もめ事もいつの間にかおさまった。時々廊下やいろんなところで会うと、たんちゃんは何事も無かったように、私に接してくれた。つまり、今まで通り、にぶい、とか、ぼーっとしてる、と言われた。でも、それまでに言われてた時と違ったのは、言われたときの私の気持ちが変わっていた事だった。これは、たんちゃんの愛情表現なのかもしれない、そう思えるようになった」

 いろんな体験を通して、少女たちは大人になっていくんですね。

「だけどやっぱり、あの時のことを思い出すと胸が痛む。誰かを傷つけてしまった後悔はそんなに簡単に消える物じゃないんだね。どうしてあの時、たんちゃんの事きらいじゃないよ、ってにっしんたちの前で言えなかったのかな」

 ゆーさんは今でも後悔しているんですね。私だったら「大きな力の前に屈してしまうのは仕方のない事」として自分を納得させますが、ゆーさんはそんな自分を許せないようです。

「たんちゃんごめんね」

 文末のこの言葉が、何とも心に刺さります。


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