『劇場版少女☆歌劇 レヴュースタァライト』が信じられないくらい楽しかった

あなたはあの舞台を見ましたか?
私は見ました。楽しかったです。

7月上旬、私は『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』のことを微塵も知らずに映画館へ足を運びました。
そして先日、特にアニメ版や考察などを見て情報を深めることもせず、地元最後の上映にて二回目の鑑賞を終えました。

結果として、自分のこれまでの嗜好を覆されるような体験をしました。
我ながら気持ち悪いぐらい頭の中でぐるぐるしています。

あの日シェイクされまくった感情が落ち着きつつある今日この頃、この記憶と興奮が消えないうちに、感想、というよりは、振り返りと思ったことを記しておきたいと思いました。
ネタバレします。未視聴者は回れ右。

そもそもの話

私にはテレビアニメを見るという習慣があまりなく、スタァライトについては、タイトルすら聞いた覚えがありませんでした。
そんなアニメの劇場版と言われても、普段なら気にすることもないです。
自分には関係ないしーみたいな。

もっと言ってしまうと、女子高生だらけのしっとり百合っぽい作風は好みではありません。こう、肉肉しい感じが…。
なんなら映画を見終わった今でも、ビジュアルをじっくり見ると少し気恥ずかしく、目が泳ぎそうになります。

そんな私がスタァライトしちゃったきっかけが、同じくアニメ映画で、6月に映画館で見た『映画大好きポンポさん』です。
こちらも大変いい映画ですので、見ていない人は是非。

こちらの鑑賞後、未だ感動に揺れながら、珍しく他人のレビューを覗いてみたところ、ある方が『ポンポさん』への辛めの評価を書いているのを発見しました。
その方が「こちらの方が面白かった」と示していたのが、『劇場版スタァライト』だったわけですね。

入り込むタイプなので少しムッとしながらも、自分の中で絶対のものとなりつつあったあの映画、それより面白いものだったのか、と俄かに興味が湧き、軽く情報をチェック。「面白い」といった感想がよく聞こえ、無事映画館に足を運ぶ流れとなりました。

今思うと、なぜ自分がここまで素直に事を運んだか不思議です。おそらくポンポさんのおかげで映画欲みたいなものが高まっていたのでしょう。
『ポンポさん』と、遠慮なく比較してくれたレビュアーさん、ありがとう。

印象に残ったシーン

さて本題となる映画の振り返りです。
上手にまとめられる気がしないので、自分から文章として掘り出せる範囲で、特に印象に残ったシーンを適当に…。

開幕からセリフが堂々としててかっこいい。「今こそ塔を降りるとき!」とか「開演したのだ、今!」「運命は変わる。舞台も、また」とか。
青空の下に広がる砂漠に、東京タワーが場違いに赤く立っている画が、映画を通してすごく好き。
壊れる機材のカットと、鉄鋼の上で対峙する二人がかっこいい。

アニメ版を知らないうえ、特有のヘンテコ描写に連打されたわりには、全体のストーリーやキャラクターの関係などは、なんとなーく理解できました。多分意識して作られていて、また色んな描写やオブジェクトに意味があるんだろうなあと。
随所に見られる「┳」、スタァライトの先輩に教えられるまで、別れを示すT字路のことだと思ってました…。

「ワイルドスクリーンバロック! 開幕です…」
「私たちもう、死んでるよ」
人生初めてのレヴューが皆殺しのレヴューだなんて、なんちゅうもんを見せてくれたんや…。
列車変形から始まる初見のあの衝撃は、どう言葉を尽くしても納得できそうにないので、大場ななちゃんがかっこよかったです、とだけ…。
特に友人を淡泊に仕留めるところと、独唱するところ…。

「再演の果てに私たちの死を見た」
本当に死体が転がってるのゾクッとする。
「私たちはもう、舞台の上」
二回目でふんわりと話を理解し、結構感動したのが、決起集会で少女たちが既に舞台の上にいると自覚する(再び舞台に上がる?)シーンです。自らの死から這い上がるシーン。
ああいう自己を全うするために立ち上がるの、かっこよくて大好きです。
音楽とキリンのなんかパワフルな演出で大変アガる。

どうでもいい話。
思い出に出てきた「いじわるなラビニアお嬢さま役」という言葉。
最初にアニメをあまり見ないと抜かしましたが、どういうわけか世界名作劇場のアニメ版『小公女セーラ』を、Netflixで全話鑑賞したことがあります。ので、その役名を聞いたとき、「それってあのラビニアお嬢様?」となりました。
正否は分かりませんが、自身のなけなしのアニメ経験がこんなところでリンクするとはと、少し感動しました。良かったですね。

「行こう、あの舞台へ」
幼い二人がスタァライトを見に行く場面。舞台の上に自分たちの姿を見るシーン。暗い劇場、何本もの垂れ幕やカーペットの中心で、明りに照らされ息絶えた少女と、それを抱き上げる少女。とてもいい画でした。

「ひかりちゃんと同じ舞台に立てて良かった!」
「私も!まひるすっごく怖かった!本物の舞台女優だった!」
金メダル授与は屈指の名シーンですね。初見でもこういったシーンでやたら感動できるところが、この映画の凄いところ。
夢を追いかけながら、嫌いなライバルの背中を押せるって、性格良すぎか?
スタートピストルの口上も併せて、多分一番青春を感じたシーン。
あと、打ち合いしてるときのひかりちゃんの連続バク転が凄くかっこよかったです。

「こんななな、知らない…」
「お前は何者だ?お前は何者だ!?」
お互いまだ相手の底を知らなかったんだなってなるセリフ。どうしたって他人である相方との、決別と惜別の舞台ですね。よきよきじゃん。
振り返らず、涙をぬぐって歩き出す二人が好き。分かれ道の先が、いつか一瞬でも交差するときが来るといいですね。

「ああ、私にも、与えられた役割があったのですね…」
見つけた自らの役割に喜び震えながら、夕闇をバックに燃え落ちていくキリン。
良かったですね。

これだけ舞台に夢中になっていたので、いきなりキャラクターの視線で第四の壁を貫いてくるところは、だいぶ居心地が悪くなりました。ゲームだと『UNDERTALE』や『OneShot』などででその経験はあったのですが、まさかアニメで体験することができるとは思いませんでした。うーん楽しい。
ひかりちゃんしか見てなくて、これまで観客のことを意識すらしてなかったって、この子百合百合しすぎでしょ。

「舞台で、待ってる」
舞台での再会を信じ、再び招待状を添えて、いつか自分を蘇らせてくれた友の死体を送り出す名シーン。
見た目はとしては、まあタワーから宙へ死体遺棄しているだけなんですけど、なんだか水葬、あるいは宇宙葬的なかっこよさがありました。
よくできとる…。
ひかりちゃんってもしかして結構スパルタ的?

「アタシ再生産!帰ってきたよ、列車に乗って!」
「愛城華恋は、次の舞台へ!」
過去から現在までを総決算し、焼き払い、再生を果たして、新たな自分に目覚めるシーン。この回帰があったからこそ、『劇場版スタァライト』が心に残り続けているのかもしれないです。
音楽と、砂嵐に突っ込んでいく列車の画のパワー。
そうして出てきた最後の台詞があれとは、主人公に溢れている。
終幕は全部好きです。地面に突き刺さるタワーの先端を見てかっこいいと感じたのは、後にも先にもそうないと思います。

崩壊したタワーの横で二人が交わした会話が良かったですね。
卒業が背景にあるので、そりゃあセンチメンタルな気分になりますけど。
一つの物語の終わりと、次なる物語の幕開けを感じる、爽やかないい後味でした。

『劇場版スタァライト』という体験

最近いい映画に出会うと思うことなんですが、「公開が終わったら二度と映画館で観ることはないんだろうなあ」と、見終わった後ひどく寂しくなります。スタァライトは特にこの思いが強いです。

また、あまりに映画館で体験した『劇場版スタァライト』が良かったため、これ以上の情報を付け足したり補足する気が起きていません。
先のことは分かりませんが、少なくとも今はアニメ版その他を見る気が起きないです。
後ろめたい気持ちも多々あり。

これが最後のスタァライトと決めて鑑賞した先日。最後の台詞の後、弾け飛ぶ少女のきらめきと一緒に「終幕」の文字が見えたとき、興奮に座席の肘掛を握りしめながら、少し悲しくなりました。
その夜、寝る前に映画を頭の中で繰り返しながら、もう二度と映画館で観ることはないことを思い、少し悲しくなりました。

それを思うにつけ、「では、あなたは?」という作品の問い掛けに、なんだか励まされているような気持ちになります。

なぜこんなに刺さったのか、自分でもまだよく分かっていませんが。
何度でもループして見たくなる、いい映画でした。


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買っちゃった…。
初めての、アクリルスタンド…。
なな…。

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