波打際のテスティモニー

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」とある偉人は言った。
僕は前々からこの言説に対して違和感があった。
つまり経験を過小評価しているのではないかと。
経験は熱意を生み、歴史は物事の判断に際して複数の視座を与えてくれる。つまり優劣ではなく補完、両者はそういう関係性のように思えるのだ。


それに、歴史には致命的な弱点がある。彼らはいつだって後追いしかできない。何か歴史に記すべき出来事が起こったとしても、それをリアルタイムで観測できないし、それがアーカイブされるのはどれだけ早くても数年後。
彼らは今この瞬間に起きたことを観測できていない。さざ波の音にかき消されそうなくらい小さい、けれどもしっかりとした彼女の決意の言葉。それは間違いなく世界を、歴史を変える幕開けに相応しい。


さあ早速始めよう。早くて数年後には、彼らに感づかれる。
世界を変えるのに数年は短いだろうか、長いだろうか。
その答えは、今は誰も知らない。【続く】

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