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映画『上飯田の話』 映画監督・筒井武文さんからのコメント全文

映画監督・筒井武文さんから、映画『上飯田の話』へのコメントが到着しました。Twitterでは文字数制限があるため、こちらで全文を公開します。

映画には絶対見るべき2%と、見れたら見ればよい98%に分けられる。見なくていい映画はない。では、絶対見るべき映画とは何か? 思いがけない驚きを更新してくれる作品だ。世界が新鮮に見え、新たな認識に導かれる映画だ。まったく予想だにしてなかったのだが、たかはしそうたそうた監督の『上飯田の話』は、2%に含まれる。それは地域を描くことと、それをどう描くのかという、主題と手法が切り離せられない一致を見せてくれるからである。全三話のオムニバス構成だが、それぞれに、ある領域に侵入する人とそこに待っていた人との「間」の攻防が描かれる。その結果、高齢化が進み寂れていく地域の片隅が活性化し、生命保険の勧誘の駆け引きや弟の結婚式に出席を断る兄への説得や地域行事の遺物から歴史が露呈しながらも、一向に展開が読めない。一話一話切実なのに、初対面の双方の性格、体型の違いから不条理喜劇の様相を呈する。ここに、ケーリー・グラントやフランキー堺が登場しても全然異和感がない世界が、リアルな日常性のなかに立ち上がっている。そこでの奇妙に捻れた会話の面白さとそこに偶然(?)映り込む人々のバランスの奇跡的なこと! いつ切り返されるかと思えば、突如の360度パンが永遠の長さで続く。会話を聞くべきか、風景を見るべきか。このフィクションとドキュメンタリーの幸福な結婚を祝福しよう。

筒井武文(映画監督)

筒井武文さんプロフィール

1957年生まれ。大学卒業後、伊勢真一、渡辺哲也監督らの記録映画、教育映画、科学映画などの助監督をつとめる。編集者としては、『アクアの肖像ー横濱水道物語』や黒木和雄監督『四国・夢街道』(70ミリ立体映画)などの記録映画や、『新世界紀行』などTBS、NHK、テレビ東京のニュース、ドキュメンタリー番組を担当。演出作品は『シネマ100スペシャル・フランス篇』などがある。

レディメイド(1982年) - 監督
ゆめこの大冒険(1987年) - 監督・脚本
おかえり(1996年) - 編集・製作
どこまでもいこう(1999年) - 編集
オーバードライヴ(2004年) - 監督
バッハの肖像 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009より(2010年) - 監督
孤独な惑星(2011年) - 監督


横浜市泉区上飯田町を舞台にした
全く新しいタウンムービー
04月15日 ポレポレ東中野にてロードショー

監督インタビューはコチラ

監督インタビュー① −作品の着想について−
監督インタビュー② −町民の方々との撮影について−
監督インタビュー③ −俳優とのコミュニケーションについて−
監督インタビュー④ −劇中内の音楽について−
監督インタビュー⑤ −映画作品の自主制作について−

映画『上飯田の話』 予告編

コメント

上飯田という場所は実在するが、『上飯田の話』はどこにも存在しない。それは誰かの私的な記憶の場所でありながら、誰もが知っているはずの風景である。映画と現実。ドキュメンタリーとフィクション。歴史と現在。あなたとわたし。バナナの木とソフトボール。あらゆるものを結びつけながら分割する「と」という接続詞をヒョイと飛び越え無効にしてしまうたかはしそうたの大胆不敵さを御覧あれ。これもまた映画にしかできない離れ技である。

諏訪敦彦(映画監督)

その辺の普通の人たちのいつもの生活が、気味悪いほど確信に満ちた映像で撮られることによって何やら神聖なものに見えてくるから不思議。たかはしそうたは若くして映画の本質をつかんでしまったようだ。カメラがゆっくりパンを開始する度に、僕は自然と襟を正した

黒沢清(映画監督)

生きることを物語に要約しないことで、毎日の暮らしのどうでもいい細部にひそむ不安が見えてくる、隠された日常の発見。

谷川俊太郎(詩人)

その他のコメントはHPで閲覧ができます。

横浜の小さな町を舞台にした『上飯田の話』4月15日(土)ポレポレ東中野にて公開。

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