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男は誰しも並行世界に繋がっている

私は子どもがいないし、男兄弟もいない。なので、いつも不思議に思うけど解決していないことがあった。


スーパーや道で、5〜10歳くらいの男子が腕をブンブン振り回したり、やたら俊敏な動きで移動する理由だ。たまに何か効果音的な言葉を発し、長めの文章を話している時もある。

わかるのは、男子が楽しそうなことと、しばらくすると男子がお母さんに怒られると言うことだ。とにかく、スーパーに行くと同様の光景を見かける。

ある日、夫(男性35歳)とスーパーに行くと、やはり腕をブンブン振り回す男子に遭遇した。すると夫がその男子を見て『おー、戦ってるねー』と言った。
…何?戦っている?彼は空に向かって腕をブンブン振り回してるだけだが?
『……え、何と戦ってるの……?』『敵でしょ。』
夫に、え、常識でしょ?みたいな目線を向けられる。私には何も見えないし、その男子が何か攻撃を受けているようにも見えない。
『あなたにも見えてるんですか』
もしかしたら私にだけ見えていない何か透明宇宙人的な敵がいて、今まさにあの男子が地球のために戦ってくれているのかもしれない。

『いやーもう見えなくなったなー』

更に不思議な回答が来た。
『もう見えなくなった』これは過去に見えていた場合にしか出てこない台詞だ。
『昔、あなたも彼の年の頃は見えていた、と言うことですか』
『見えてましたね』

どうやら夫の解説によると、少年という生き物には敵が見えていてところ構わず襲われていてそれに応戦していると言うのだ。そしてその敵は成長するにつれて見えなくなる。見えなくなってくるともしかしたら年下の子たちに戦いが引き継がれているのかもしれない。

じゃあ、あの俊敏な動きは何か銃弾やエネルギー弾的な攻撃を避けていると言うことか。
面白い遊びだね、というと夫は『遊びって言うか本気だけどね。』
…そうか、本気か。

でも少年達は戦いによる汚れや怪我はないし、何か構えてるけど武器は持っていないから想像力が豊かなんだね、と言うと、夫は物凄く真面目な顔で、『恐らく、少年の体はここにいるままだけど、意識はあっちの世界に行ってるかもしれない。見えている景色は同じスーパーなんだけど、あっちの世界には敵もいて、本人は鎧とか剣とかを装備していて、その世界では怪我もしてるし、建物も破壊されてるのかも。ちょっとぼくは覚えてないけど』
『(あっちの世界?)あ、実体験エピソードじゃないんだ。…じゃあその並行世界であの少年が敵を食い止められれば私達のいる世界も守られるんだ。少年が倒されたら敵が並行世界からこっちの世界に来ちゃう、みたいな?』
『そう、日本中の5〜10歳男子はその使命を背負って戦ってるね。必死だよ。でもお母さんに静かにしなさいって怒られちゃうから、現実世界と並行世界のバランス取るの大変だよ。現実世界に並行世界のことバラしたらだめだから』
『あー、お母さんが並行世界のことを知っちゃうとお母さんも攻撃されちゃう系だ』
『そう、だからお母さんにいくら怒られても戦わないといけないし、暴れてる理由も説明できないというジレンマだね』

長年の疑問が一気に解決した。小学校低学年の頃、空中と戦う男子。ドシュッ、バキッ、デュクシッ、と効果音を口にする男子。一体全体マジで何やってるんだろうと思っていたが彼らは私達を守って戦ってくれていたのだ。

それ以来、町の中で並行世界の敵と戦ってくれている少年をつい探してしまう。そして見付けては笑いを噛み殺しながら応援している。そうか、夫もああやって世界を守っていたんだな。
頑張れ少年、並行世界へのリンクが切れて大人になってしまうその日まで。


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