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上町しぜんの国保育園 園内勉強会アーカイブ07

上町しぜんの国保育園の阿部です。
いつもアーカイブを見ていただき、ありがとうございます。

第7回園内勉強会では、世田谷ハーモニーの新澤克憲さんをゲストにお迎えしました。
今回のテーマは「幻聴妄想かるた~世田谷ハーモニーの「居場所」づくりから考える協働とか支援とか援助とか」です。

◎目次
・ゲスト紹介
・内容
・会場から
・最後に

◎ゲスト紹介
新澤克憲さん
就労継続支援B型事業所ハーモニー施設長
共著作『超・幻聴妄想かるた』(2018年、やっとこ)

◎内容
○人と会って、「おもしろい」と思ったことが始まり
・公務員を退職して木工を始めたけれど、という時期にクリスマス会に参加した。
そこで出会った様々な人
どんな人が精神病なのだろう?

○最初の現場で感じた違和感
・右肩上がりの成長だけが人にとって大切なのだろうか
そうでないといけないこと?
身障の自立生活運動や「青い芝の会」の考えに出会う。
・明日が必ずあるとは限らない人たちである。
 「今」を生きることの大切さ。
・学校で学んだことが全て崩れた。
・今の自分が良くないから治す?
 今の自分のままでなにが悪い!階段をつくったのは自分じゃなくて社会じゃないか!
→その人たちと何をやっていけるだろうか

○作業所をひらくときに掲げた約束
あえて「そのままでいられること」にこだわりたい
・間口を広く、敷居を低く
・いたずらに人を評価しない場所、人に評価されない場所

○統合失調症の主な症状
・陽性症状
 幻覚・幻聴、妄想、思考の混乱、異常な行動
・陰性症状
 感情・意欲の減退、集中力の低下、社会的引きこもり、無関心
・認知障害
 注意散漫など
発症するのは20代(大人になってから)
辛いことだけでなく、就職や結婚などの嬉しい出来事がきっかけになることもある
急激に陽性症状が出て、その後陰性症状へと変化していく。

○精神疾患の推移と現状
・うつ病は増加傾向がある
・日本の精神病床の在院日数は世界の中でダントツに長い。
 それは、日本の社会で精神疾患の人の受け皿がないということ。

○ハーモニーでの暮らし
・平均年齢50代
・区内在住が多い
重度、高齢、単身、合併症の方

・リサイクル屋さん
 地域の人が持ってきた衣類を洗ってリサイクル品として販売する
・公園清掃
・古着のさきおり

食事
・食べることが大事
・コロナが落ち着いて今は週3回

○ハーモニーの場合
・「自立」にむけた「昨日より今日、今日より明日がよくなる」という右肩上がりの目標設定とは、すこしずれがある。
・ハーモニーに集まった人たちの特徴、年齢、経歴、障害
・新澤自身の考えによるところが大きい

・とりあえずいきていく
・もしそれを「居場所」というのならば「居場所」にこだわる。
→ある時期まで行政にとって「居場所」は軽く見られていた。
 しかし、時代が変わる中で行政の在り方も変わってきた。
・家族と仕事というものを当たり前に生きている自分たち
 しかしハーモニーに来る人はそれがない(なくなった9
 だからこそ、「居場所」というのが必要だと感じるのではないか。
→水面下で「居場所」に来られるように支援する。
 明日ハーモニーに来られるように、いま困ったことを何とかする。
・福祉サービスでありながら、福祉サービスのその隙間を埋める。

○幻聴妄想かるたができるまで
・ミーティング
 近況報告や困りごとなどを語り、その経験や対処方法を共有する
 自分の話したいことを絵にかいて誰かに伝える、それがかるた

事例)「ジュリアンの頭の機械」
ジュリアン君「自分の頭には発信機が付けられていて、脳内が見られている」
仲間がそれに対して意見を言う 「頭にヘルメットしてみたら?」など
それをもとにそれぞれが絵札を書く
その絵札からジュリアン君が選んで完成。

・初めは劇団で劇をやろうとしたけれど、できなかった。
 そこでかるたにしてみようとなった。

・一人の心配事をみんなで考える。
・心のなかを見える形にすることで誰かと共有できる、そのことで安心できる。
・不安の種は日常の様々なところにある。
 でもその対処方法もそれぞれ考えてやってみている。
・仕事を続ける
 職場でのストレスに出会った時に、トイレに入って自分の気持ちを整える。
 しかし、社内の雰囲気が変わってできにくくなった。
→人に恵まれることの大切さ
→売るとよりも、かるたを持って外に出かけて行って人と出会うことを大切にしている。
 知ってもらえることは、病気を隠すよりも安心

○新澤の「幻聴妄想かるた観」の変化
初めのかるたは医学的に「病状を知るためのもの」と捉えられた。
そんな見方を受け入れながらも違和感
次に出したものは、日常への視点を大事にしたい。
また、場所の記憶、今はいない仲間たちの記憶や知恵を場の財産として残していく。
亡くなることが「敗北」ではなく、生活のどこかに感じて生きていく。

大学での「みんなのかるた」
→当事者だけでなく誰もが持っているもの

○最近
メンバーたちにとってのかるたとは?自分たちの「作品」としてのかるた?
→初めは自分のことを他人に渡したがらない、だんだん他者と分かち持つようになる
 社会に自分の「作品」として出すことで、語ることに傷つかなくなる。
 病状や症状を知ってもらうためのものではなくて…
・「ウソでもかまわない」ことを発見する。
 =本当のことをいわなくてもいい これってアートか?

◎上町・青山から
・「死は敗北ではない」という言葉
・「居場所」という言葉に感じた思い
 これまで育んできた言葉を行政が使うことで「消費」されてしまうことがある。

・かるたをつくるとき、他者が介在することの面白さ
 自分のことを他者が入ってああだこうだとすること、それがもうアート
 イメージをイメージとしてしか語れない
 事実かどうかということはどうでもよくなる、アート

・ハーモニーと世間との間にある「かるた」
 健常に働くために支援をするということを求められる社会
 保育の世界での「発達」という言葉
 新澤さんやハーモニーは自分たちのことを世間に開いている
世間とハーモニーの「間」をどう感じている?
→〈新澤さん〉
・行政とやっていくため、理論武装するためのものとして使うことがある。
 病状、症状の理解だと行政には伝えつつ、それを本当は信じていない。
・施設はやまゆり園の事件以降、閉じようとする傾向がある。
 なるだけどこかに風穴を開けておくようにする。
 ミーティングは外の人がいる方が面白い

・新澤さんから見た「病」とはどう見えているのか?
→〈新澤さん〉
・彼らと一緒にいると「病の人だ」と思わなくなる。
 しかし、社会に出ると「病の人」とされる。
 たまたまハーモニーがあるから社会の中で彼らが感じたことを話す場所があるけれど、なかったらどうなるだろうか。
彼らが社会に出ることで感じていることを共に感じながら、何とか変えていかなくちゃ。

・新澤さんの考える「専門性」とは?
→〈新澤さん〉
 新卒の人の方が詳しいと思うこともある。
 自分は出会うなかで、考えて修正しながらやってきた。
 「障害者」「発達障害」というのが時代と共に生まれてきた。

◎会場から
○自身のアパートでの近隣のおばちゃんとの話
これまで仲良いと思っていたおばちゃんが我が家にある機械の音がすると通報した。
早朝に大声を出したりする姿があり、その後アパートを退去していった。
隣人としては追い出したように感じた。
→〈新澤さん〉
・おばちゃんの周りにどんな応援団がいたか
「おばちゃん病院行った方がいいよ」と声をかけてくれる人がいたか
 しかし、孤立しているからそういう行動へと繋がっている。
・強制的に入院させるためには、自傷他害がないと動かない現実。
・世の中、誰とどう出会うか、どうマッチングするかで上手く生きていけることもある。
・「うるさい」だけで排除しないで欲しい

◎最後に
私が今回最も印象的だったのは、困った時にそばにいる誰かの存在の大切さということです。幻聴や妄想の世界のなかで生きている人の表現を「精神疾患」と一括りにして「専門性」と言う言葉に閉じ込めてしまってはなにも見えてきません。社会との間にある「狭間」を、自分たちのできるかたちで埋めていこうとすることは、社会のなかで生きる子どもたちと向き合う私たち保育者にとっても通じる部分があるのではないかと思いました。

◎次回予告
次回は、第8回上町園内勉強会は通常回になります。
上町職員・阿部より実践発表を行います!
最終回もおたのしみに!



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