見出し画像

北辰テスト攻略:国語(論説)編

前回は大問1の小説編じゃったが、今回は大問3の論説編じゃ。指定語句の設問や選択問題の解き方など、心得の部分では共通する解き方も多いが、文章の特性や構造は、やはり小説と論説では大きく異なるので、その辺りを意識して問題を解いてみるとよいな。


1.出題の傾向と特徴

小説文のように「児童の揺れ動く心」のような一貫したテーマはないが、論説文なので一定の構造はある。出題テーマの例で考えると、例えば次のような分類は成り立つかもしれん。

(1)理系:遺伝子、動植物の生存競争や進化の工夫、脳と認知
(2)文系:哲学、思想、概念、言語学
(3)人間(科学者、哲学者)や文明などの考え方や変遷

どんなテーマが出たとしても、埼玉県の高校入試や北辰テストに出題される論説の基本構造は同じと考えて良い。これは次で解説する。

2.構造的な意識

論説文の着地点は「筆者の意見の確からしさ」じゃ。いきなり結論じみた断定だけを示しても説得力がないので、仮説や他との比較、そして前例などを出して、自問自答(自己完結の問いかけ)をしながら読者の納得感を高める。その先にある結論が、筆者の主義主張の客観的な確からしさになっておる。子羊さん達が大学生になって論文を書いたり、大人になって企画書を作成するときに、どうやって相手に納得して支持してもらおうかと考える場面を想像すればわかりやすい。

例えば「埼玉県は誇れる郷土である」という着地点を論説するために、文章は仮説や問いかけから入る必要がある。
・皆さんは埼玉への郷土愛を持っていますか?
次に主張を裏付けるための比較や事例が2つくらい並ぶ。
・駅前アンケートを取ったら、9割以上が誇りを持っていた
・他県の例と比べても高い結果だった
やらせ感を出さないために、少しマイナスの話も織り交ぜる。
・ところが最近の若い世代は神奈川県や千葉の大学に進学する傾向が強い
最後に筆者の強い思いを述べる。
・突出しなものがないが、東京や周辺の経済圏との程よい距離感が、住みたい街No.1大宮を生み出しているのだ!
だいたいが、こんな流れになっている。

前半部分は「問いかけ」、中盤はいろんなパターンがあって読むのが疲れるところじゃが、凡そは「例示」「比較」などになっている。ここを上手く乗り越えて、最後の筆者の熱い思いまでに構造を大きな枠組みで理解してみよう。

3.パラフレーズ

小説でも鍵を握った宝探しのためのパラフレーズ(言い換え)じゃが、論説でも同じことが言える。問題文と同じ内容が同じ表現で本文中にあることはまずないが、言い換えれば、結果的に同じことを言っている部分がみつかるというパターンじゃな。例えば、問題文が

・経済的嫉妬とは所有する金銭の絶対的な価値ではなく、他者との比較が引き起こす不安定な認知から生み出される

という回答を求めている場合に、本文中で宝探しすべき部分には

・人間はどれだけの金銭を得たかで満足することはなく、自分の富の相対的な価値観の中で揺らいでいるのだ

となっている。パラフレーズは「絶対的」の裏返しで「相対的」だったり、「不安定」と「揺らいで」だったり、「価値観」と「認知」だったりする。このような一見すると違う表現ながら、最終的なアウトプットとして伝えていることが同じ部分を見つけ出す、パラフレーズの宝探しが大事じゃ。これは小説と同じじゃな。

4.留意点

論説文の留意点は小説に似ている。
(1)誰も子羊さん達の意見や感想は求めていない!
 だから自分の意見をまとめようと頭を使うことはやめるのじゃ。同じ単語や似た単語の宝探しからはじめて、最後は文レベルでのパラフレーズされた箇所をみつける。それが埼玉県の公立入試が要求する「読解力」なのじゃ。
(2)テーマに惑わされるな
 「私の好きな美術史の話だ」「ペットと人間の心理だって!面白そう」こういう、テーマに気持ちが流されたら要注意。特に自分が得意な分野が取り上げられたときほど、妙なケアレスミスや先入観を持ちがちじゃ。筆者の主張はエキセントリックで常識を覆している可能性もあるから、白紙の心で読むのが大事じゃな。究極のプロフェッショナルは、テーマや分野が違っても常に最高の仕事をする。例えば、真の包丁の使い方をマスターした料理人であれば、食材や料理の分野が変わっても、状況に合わせて最高の使い方をするじゃろう。いろんな会社や分野にお金を貸す銀行の融資部門も、いちいち「おっ!ラーメン店の開業かぁ。ラーメン大好き。どれ、サクッと貸してみるか」なんてんるわけないじゃろう?入試が求めているのは、特定の分野の知識や経験ではない。どんな問題でも、場合によって科目が違ったとしても、共通する生徒さんの読解力や論理性を評価したいのじゃ。
(3)難問がありえる
数学の最後の問題と同じで、時々、とんでもない問題が出される。だいたいは、抽象的な概念で、聴いたこともない横文字が繰り返される文章じゃ。例えば、

・カオスとフラクタルに共通する内在化された予測不可能な構造は、逆方向のフローで考えた場合のエレメントに対するトレーサビリティにも影響を与え、、、(適当な文章で意味はありません)

なんていう文章が続いたら、いくら注釈に解説があっても、読むのが嫌になるな。もっと難易度があがると、言葉レベルの難しさではなく、文章の論理構成としても難読な文章がでる。

じゃあどうすればいい?現代用語の基礎知識的な横文字耐性を付けて欲しいし、常識としても語彙を増やしては欲しいが、こと高校入試対策として考えると効率が悪すぎる。どうにも理解できず、頭が真っ白になった場合は、他の子羊さん達も時間を取られて困っていると判断して、取れるところをしっかりとるという方針に切り替える場面もありうることは覚えておこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?