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日本の学校教育は全面的にオンライン授業を導入すべし!


【1】コロナ禍、日本の学校はオンライン授業に対応できなかった!
2020年、コロナ禍が始まって、全国一斉休校になった頃、多く国がオンライン授業にシフトしました。しかし日本の学校でオンライン授業に切り替えられたのは5%ていど。なぜなら日本の学校教育はまるでその準備ができていなかったからです。

わたしは仙台市にある私立大学で教員養成の仕事をしています。大学もコロナ禍によって学生たちがキャンパスに来ることができなくなりましたが、徐々にオンラインでの授業がスタートします。わたしはZoomによるオンライン授業です。ICT教育に決して明るいとは言えないわたしがすぐにオンラインにシフトできた理由は学生たちが大学の貸与する一人一台のノートパソコンを持っていたこと。そしてZoomのようなビデオ会議システムを使えば普段やっている協同学習が造作なくできてしまう技術がすでに存在していたこと。(もう1つだけ加えれば、たまたま一年ぐらい前からZoomを使った勉強会に参加していて、その装置の簡便さを体験的に知っていたことです)

その証拠にわたしと同じように必ずしもICTが得意な人ばかりではない大学の他の先生たちもすぐにオンラインでの授業を実践し始めます。ちなみに3月末にはFacebook上に大学教員のコミュニティ「新型コロナ休講で、大学教員は何をすべきかについて知恵と情報を共有するグループ」が立ち上がって歴史的な実践交流が始まります。

ところが学校教育ではそれを支援する動きがほとんど起こらないまま子どもたちにプリント教材を配るだけのような「教育」が行われました。一方、4月以降に入ってくる中国や韓国のニュースでは全国を網羅するような形でオンライン授業が始められたと言います。また世界中の現地在住の日本人YouTuberによる「自分の住む国ではこんなふうにオンライン授業がはじまっています」という動画配信もありました。コロナ禍の中でオンライン授業に移行できていない先進国は本当に日本ぐらいでした。なぜでしょうか?

【2】長い間閉ざされたままだったデジタル教育のトビラ
2000年に沖縄サミットのプレイベントとして行われた「アイランドクエスト」という企画立ち上げに実行委員の一人として参画しました。このイベントは日本のICT教育が「ネット回線による外の世界とのやりとり」に動き出さない学校(先進校)の動きに業を煮やしたある民間グループが核となって企画・運営をしたものです。当時アメリカには「シルクロードなど世界の秘境から情報発信する(専属の)探検隊と学校をパソコンで結ぶアィティブティ教材パッケージ」が人気を博していました。調べてみると、そうしたアクティビィティ教材を実施・販売する会社が複数ありました。

「アイランドクエスト」の実行委員会はそうした会社のひとつと契約を結び、探検隊を沖縄に派遣してもらい、日本中の有志の学校・子どもたちとネットで交信をしながら沖縄の長寿の秘密に迫るという企画でした。このイベントは全国紙にも大きく取り上げられて、相応の注目を集めたのですが、そこから先のムーブメントは巻きおここりませんでした。あれから20年です。しかし日本の学校教育は相変わらず「オンラインでのやりとり」のあるICT教育に動き出さないままコロナ禍に突入をすることになったのです。

教育雑誌『授業づくりネットワーク』の編集長をしていたことのあるわたしは知り合いの現役教師たちに次々とコロナ禍のICT教育について取材しました。しかし学校に情報端末がない。回線が整ってない。教育委員会などによって回線に鍵がかけられているなどの状況が少しずつわかってきます。しかしだからといって何もせずにただ紙ベースでできる「教育」をしていればよいとは考えられませんでした。学校制度はコロナ禍をきっかけに閉じられていたデジタルによる教育の扉を開くべきだと考えました。

【3】「オンライン授業をオンラインで学ぶ会」立ち上げ
ネットニュースなどによって中国・韓国などの動きが次つぎと伝えられてきました。彼の国のオンラインインフラはほぼほぼ整っていました。そのインフラをベースに国を上げてオンライン授業をスタートさせます。一部どうしても端末や回線が不足する地域や子どもたちには寄付によってそれがカバーされているというニュースもありました。コロナ禍によってオンライン授業を突然フルスタートすることになった先生たちは戸惑いながら少しずつ前進しているようでした。中国の先生たちは従来の真面目なだけの授業をしていても子どもたちはオンライン授業から脱落していく。「エドュテイメント」(エドュケーション✕エンタテイメント)が必要なんじゃないかなどと議論し始めたと言います。

わたしは何日間かもんもんとした日を過ごした後、ある決断をします。『Zoomオンライン革命!』著者である田原真人さんのワークショップで出会った人たちに相談して『オンライン授業をオンラインで学ぶ会』という現場教員サポートグループを立ち上げることにしました。たとえインフラその他の準備不足によって実際の授業が出来なかったとしてもZoomなど無料の会議システムを使えば、オンライン授業に向けた自分たちなりの研修を作る出すことができるはず。「前進」のための行動をサポートしようと考えました。

facebookなどのグループを見ると、ICTに詳しい先生がオンライン授業を始めるための情報を教えてもらえるような1000人規模のグループもありました。しかしオンラインをただ動かすための情報を教えてもらうだけではダメだと思いました。自分たち自身が実際に試行錯誤しながら学び合うグループをつくらないと、けっきょくはドリルプリントをオンラインで渡すだけ、一斉授業を配信するだけの授業になると思いました。それでもオンラインはやれますが、授業としては圧倒的に後退してしまっています。教師自身による実践コミュニティづくりがぜひ必要だと考えました

4月末には100名規模のグループができました。現場教師だけでなく、オンラインの専門家やファシリテーションのプロフェッションなども混ざりつつのグループです。最初の頃じゃほぼ毎日、誰かしらがZoom上に集まって何かしらの話をしていました。放談会・哲学対話から始まって、4月21日、エイヤッと「オンライン授業の入門講座」を企画・運営しました。上海でオンラインを含めた研修の仕事をしている方にお願いをして公開の入門講座を2度実施しました。他にも毎週1つほどのペースで小さなオンライン研修会を実施してししまた。めちゃ熱気にあふれていました。そういうボランティア活動を夢中で続けて、8月20日、それまでの会の活動の軌跡をブックレットにして出版することができました。上條晴夫・オンライン授業をオンラインで学ぶ会著『子どもとつながり、学びが広がる!オンライン授業ハンドブック』(学事出版)です。

もちろん2020年8月ぐらいにはたくさんのオンライン授業のハウツー本が出ていました。しかしそれらアイデアブックと前掲書が決定的に違っていたのは自分たちが手作りをしたオンライン研修会や模擬授業の会などで学び合った教育への想いやそれを実現するために会のメンバーたちと積み重ねた実践の工夫が書き込んであることです。

【4】一人一台情報端末でゴールにすべきはオンライン授業の導入!
その後、文部科学省は、日本がICT教育において世界的に遅れていることを踏まえて、GIGAスクール構想の3年間前倒しを打ち出します。それによって2021年4月には「一人一台情報端末」が学校に揃うことになります。さらに「これまでにあった様々な規制も最大限取り払って、現場の知恵を結集しt新しい教育を作るろう」というメッセージまで動画配信します。めっちゃ素敵です。しかし現場の先生たちの話を少しつっこんで聴いてみると、現場は必ずしも動き出せてはいないようです。「なぜでしょう?!」

「GIGAスクール構想」ではそれまでの「構想」を引きずったまんま「ICTで各教科の習熟度を細かく把握し、個々に応じた指導をしやすくるする狙い」(日本経済新聞・2021/1月1日「教育ICT元年1人1台)を考えているようです。しかしこの考え方では現場の先生たちのエネルギーを結集するゴールとしてはめちゃめちゃ見えにくいです。何よりゴールまでの時間が長くかかります。わたしは「日本の学校教育は全面的にオンライン授業を導入すべし」というゴールを立てることを提案したいです。コロナ禍前に考えていたゴールの立て方が現場動き出しの初速不足を産んでいると考えるからです。

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