ショウ

96.tokyo

ショウ

96.tokyo

最近の記事

「カリギュラ効果」

「カリギュラ効果って知ってる?」 十五歳離れた従兄が聞いてきた。 私がまだ人形がないと眠りにつけないくらい幼い頃に。 「禁止されるとかえってやりたくなってしまうことのことを言うんだ」 すんなり理解できるほどまだ人生を経験しておらず、私は首を傾げた。 「例えば、絶対言わないでと言われると無性に言いたくなる。押さないでと言われると突き飛ばしたくなる。好きになってはいけないと言われるほど、その人のことを好きになってしまう。駆け落ちするお姫様みたいに。まあ、そんな感じ」 従兄は

    • 「マリッジブルー」

      憂鬱をたずさながら迎えた朝。 三度寝して眠ることにも飽き飽きしてきた。 布団を押しのける力が弱々しい。起床するだけなのにいつになく手こずった。 コップ一杯の水を飲む。トイレで用を足す。リビングのソファに腰を沈める。テーブルの上に置いてある紙袋と、一枚のメモ書きと、婚姻届が目に入る。 「マリッジブルーなのかもしれない」 私は思わずため息をついた。 結婚を控えた女性というのはこんな風ではなかった。 なんというか、そう、もっと浮かれていた。 周りの知り合いを思い返してみても一

      • 映画 「ドライブ・マイ・カー」

        原作は、作家・村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編小説「ドライブ・マイ・カー」 脚本と監督を務めるのは、「群然と想像」でベネチア映画祭で銀熊賞を受賞した濱口竜介。 日本映画では史上初となるカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した本作は、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の独立賞も受賞して、合計で四冠を獲得している。 村上春樹の喪失と再生の物語が、執拗に丁寧に人間の深部を掬い上げる濱口監督の演出によって新たな命が吹き込まれた。 物語の

        • 村上龍 「半島を出よ」

          これは、経済破綻を迎えた架空の日本に、北朝鮮のコマンドが降り立つ物語である。 国際社会で孤立していた日本に、これを好機と目論んだ北朝鮮の特殊戦部隊が侵攻してくる。いとも簡単に福岡ドームを占拠した彼らは、自らを「高麗遠征軍」と名乗って、あくまで北朝鮮の反乱勢力であると宣言し、今後福岡を統治して最終的には日本から独立することを目指す旨を大々的に発表するのだった。 これ対して日本政府は何一つとして有効な対策を打つことができない。そして徐々に不利な状況へと追い込まれていく。 あ

        「カリギュラ効果」

          森見登美彦「太陽の塔」

          「あの時の自分はバカだった」 昔を思い出してそう言いたくなる人も多いのではないだろうか。 誰しもに若かりし日の後悔は付いて回る。 しかし、少し思い出してほしい。 現在の自分がその行動に後悔していても、あの時の自分はできる限りの最善を尽くしていたのではないだろうか。 「太陽の塔」を読むと、過去の自分をそう簡単に見捨てる気分にはなれなくなる。 1、あらすじ 主人公は、京都大学農学部の五回生で自主休学中の「私」。 体育会系クラブの後輩である「水尾さん」を、先輩としての特権を

          森見登美彦「太陽の塔」

          生理的にムリ

          生理的にムリ

          無感情で断る女

          無感情で断る女