【読書日記】4/13 どうしてここに。「大江戸あにまる/山本幸久」
大江戸あにまる
山本幸久 著 集英社
石樽藩の江戸下屋敷に務める小暮幸之進は、小禄で剣術も苦手でさほど切れ者でもないが、頼まれれば嫌といえないお人好し。
本草学の好事家の集まりに福助という藩士とともに出ていたことなどから、駱駝、豆鹿、羊、山鮫(ワニ)、猩々(オランウータン)などの絡む事件にまきこまれていく。
「私はどうしてここにいるのだろう。」というフレーズが繰り返し現れる。
人も動物も、なぜ、今、ここにいるのか。「今、ここで、あなたとともにいる」というのが「ご縁」。
ゴーギャンの有名な絵に「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」というものがあります。思いもよらない境遇に陥ったとき、自分はなぜ生まれてきたのか、なぜここで生きているのか、この先どうなるのか、ということを考えざるをえません。
本書では、本来、日本にいるはずのない舶来の動物たちと、近い将来に幕府瓦解、開国という政治的天変地異が待ち受けている(読者はそれを知っている)人々の物語を紡いでいます。だからこそ、「私はどうしてここに」のフレーズが響きます。
動物たちもですが、なんだか、色々な歴史上の人物人物がてんこ盛りに出てきてにぎにぎしいな~と思っていたのですが、終章で収まるところに収まっていき、なるほどこれも「ご縁」。
江戸時代は、本草学が盛んで動植物に興味を持つ人々が身分を問わず多かったといいます。そんなところにも興味を惹かれました。