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【読書日記】8/19 「令嬢」の生き方。「華に影 令嬢は帝都に謎を追う/永井紗耶子 」

「華に影 令嬢は帝都に謎を追う」 永井紗耶子  双葉社文庫

永井沙耶子さん。「木挽町のあだ討ち」で話題なのに、まったく別の作品を読んでいるこのズレ感。

正確に言うと、木挽町のあだ討ち、読みたいなあ、と思ったのですが、別作品を積んであるのを思い出して、こっちを読んでいないのに先に別の作品を読むのは著者と本に対して申し訳ないなあ、と読んだというところ。

私は、「令嬢」とか「帝都」とかのキーワードが割と好きなのです。

明治三十九年、帝都東京。
千武男爵家の令嬢・斗輝子は、書生の影森怜司を供に、黒塚伯爵家で行われた夜会に当主である祖父の名代として出席した。しかし夜会の最中に伯爵が毒殺されてしまう。不当な疑いをかけられた千武家の名誉のため、勝ち気な華族令嬢と怜悧な書生、対照的な二人が事件に隠された大きな秘密に挑む!

双葉社商品紹介より「華に影 令嬢は帝都に謎を追う」

さて、面白く読みましたが、話の肝心なところに触れずに感想を述べるのが難しい。

私も一応本のご紹介する時は、話の内容に踏み込む場合でも、初読の興を削がない範囲で、と心がけています。
ただし、私の感覚はかなり緩いです。ミステリのトリックや犯人が分かっても物語が面白ければ問題なし。

そんな私でも、今回は、その匙加減が上手くいきそうもないので、物語自体の説明は避けることにします。
斗輝子の名付けについての御祖父さんとの会話が気に入ったので、そこをご紹介します。

「(略)私は、名づけを慎五郎から頼まれた時に、思ったのだ。この子は、己の手で闘うことができる娘にしようと。だから、闘いを意味する斗の字を入れた。」

「そうだ。女だとて、闘えばいい。泥にまみれて闘い、その先にある幸いを掴みなさい。それを一瞬でも放棄すれば、奈落はすぐそこだ」

斗輝子の祖父の言葉。とある女性の人生を思い、孫娘の名づけに願いを込める。

祖父の言葉を胸に、斗輝子は誓います。(名前のところは伏せてご紹介します)

「○○のように、夢見るままに逃げるのではなく、○○のように、理不尽な力に屈するのではなく。確かな力をこの手に宿し、足元を踏みしめて生きていく。
それができるのだと信じるだけで、緊張と共に高揚も覚えている。
「私は、闘える」
斗輝子は顔を上げ、真っ暗な廊下の向こうに見える明かりの射す方へと大きく一歩を踏み出した。

斗輝子の決意。がんばれ。

斗輝子さん。なかなか鼻っ柱の強い、小生意気な御令嬢。
田舎から出てきた純朴な書生が、「大富豪の男爵令嬢」という自分に簡単にのぼせ上がるのをやや冷めた目で見ながら面白がる困ったところも。
 ところが新顔の書生、影森怜司にそれを上回る皮肉っぽい態度であしらわれて、癪に触って仕方ない。だから余計に構う、という・・・かわいらしいですね。

最近、日本の近代の女性の生き方を描く小説を多く読んでいる気がします。
自分のあり方、また、娘にどのようにこれからの生き方を伝えるかを、考えているからかもしれません。