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2020年9月号 秋の風になりました

春夏秋冬亀成園便りの21作目です。三重県松阪市飯高町での自給率の高い暮らしをする小さな自然養鶏農園からの季節レターをお楽しみください。 

【亀成園便りここから】
 とても暑かったのが幻燈だったかのように、また季節は巡ってきました。毎年夏はいつも足りない感じですが、今年はとりわけただ過ぎるのを見送っていた感じがします。整理できるくらいの思い出というのも混乱がなくありがたいものなのかな。
 この地域では毎年8月の終わりに伊勢神宮から雅楽の音と共にお獅子さまが各家を一軒一軒回ってくる風習が残っています。家のお祓いをして頂き、子供の頭をかじってもらいます。家内安全・無病息災。いままで慣習でなんとなく唱えていた願いをとりわけひしひしと切望することになりました。

 亀成園では園主の好みもあり、亀に居てもらっておりますが、亀は昔から長生きや知恵の象徴としてモチーフにも好まれてきました。亀さえいれば永く繁栄できるというわけではないですが、日々亀に倣いながら淡々と暮らしていくのは時代に合っている気がします。焦らなくていい。隠れてもいい。でも良い環境は守っていきたい。

 ところで香肌峡は川と共に在る地域で、2つの町で70もの橋があるのですが、8つほど沈み橋もあります。川のすぐ上にかけられた橋は増水すると沈んで使えなくなります。普段は釣りや川遊びや農地への道として使われている橋が沈んで見えたり浮いて見えたり。そんな見え隠れする様子がなんだか好ましくて、大きな雨の後は通り道にある沈み橋を見て回ります。雨による川の変化はダイナミックです。いつもは穏やかに澄んだ川の別の顔を見ておくことは、防災意識にもつながるのだとも思います。これも9月のテーマですね。
 虫の声が夏から秋に変わると焦るのは薪です。溜め込み癖のない亀成園でも薪だけは溜めておかないといけないのに、今年もやっぱり準備不足でした。ゲストハウスのお客様は「時間無制限薪割り体験」もして頂けるのですが、希望者はなかなか現れず。つくづく学ぶこと、慣れなければいけないことの多い暮らしです。
【亀成園便りここまで】
 川のそばで暮らすことは豊かな恵みも多いけれど、防災意識は持っておかなければなりませんね。蓮ダムが建設されて以来、台風でのとても大きな被害は出ていないのですが、勢いのある川を安全なところで体感しておくことが私の防災意識訓練です。大きな自然を畏怖する気持ちこそ、生き物の日常をたくましくするのではないでしょうか。
 獅子舞の音楽は何度も生で聴いているので、思い出せるようにもなっています。毎年繰り返される形ある祈りが子供たちにも染み渡っていくのかな。


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