MBA1年目を終えて:授業編

はじめに

先日の記事でMBA1年目を終えた振り返りとして、英語力がどれくらい伸びたのか、について書きましたが、今回は授業についての振り返りをまとめていきたいと思います。

MBAの授業は価値があるのか

まず初めにMBAの授業について簡単に触れておくと、大きく「ハードスキル」と「ソフトスキル」の2つに大分されます。ハードスキルは会計、財務、マーケティング、戦略、オペレーションなどの所謂経営に関する専門的な知識を学ぶ科目と思っていただければと思います。一方でソフトスキルは、リーダーシップ、コミュニケーション、倫理、多様性への理解など、リーダーとして資質や素養を学ぶための科目と思っていただければ結構です。
それぞれについて簡単に振り返っていきたいと思います。

ハードスキルについて

ハードスキルを学ぶ科目は上記にも記載した通りですが、よく言われるのが「これらの科目は本やネットで学べるのでわざわざ高額な学費を払ってまでMBAで学ぶ価値はない」というものです。
これに関しては、「半分正解、半分間違い」というのが私の見解です。純粋に会計や財務の基礎や概念、戦略やマーケティングのフレームワークなどは本や動画で十分学ぶことが出来ます。なのでただただ"知識を得る"という観点においてはわざわざMBAに来て学ぶ価値は無いと言ってもいいと思います。
一方で、得た知識をその場で使ってみる(試してみる)という点において、MBAの授業は非常に価値があると思っています。
というのも全ての授業には課題やグループワークがあったり、授業中でも頻繁にディスカッションが行われます。その過程で今学んだことをその場でアウトプットする、ということが求められるのですが、この点が一番価値のある部分なのではないかと思います。
またそのアウトプットの過程は、ケーススタディなどを題材に答えのない問いに対して色々なバックグラウンドを持った同級生達と議論しながら行われます。そのため、フレームワークの有効性を理解するとともにその限界も知ることになり、ここが非常に学びの大きい部分なのだと思います。
そして当然グループワークなどを行っていると、チームの中で意見の食い違いが発生します。そこでお互いの解釈をぶつけて議論していく中で、自分が誤認していた部分や気づかなかった部分が見えてきて、理解が一層深まる、という経験を何度もしました。
そのため、ただ授業に出て特に発言もせずに授業を聞いて、グループワークの時も貢献せず所謂フリーライダーとしてやり過ごす、というような時間の使い方をしている場合には、MBAの授業は本で学ぶものと同じ価値しか持たないことになると思います。
(MBAはそれでもテストさえ何とかすれば単位は取れてしまうので危険・・)
一方で授業中にも積極的に議論に参加したり、グループワークでも率先してチームをリードするなどの貢献をすればするだけ、知識に上乗せした"経験"を獲得できるので、非常によい学びの時間となると思います(ただしそれ相応の準備が必要で負荷も大きくかかります)。

ソフトスキルについて

さて、続いてリーダーシップ、コミュニケーション、交渉術、多様性への理解などといったソフトスキルの方について、この1年で感じたことを書いていこうと思います。
まず第一に強調しておきたいことは、ソフトスキル系の授業も概念やセオリーを学び部分と授業中のディスカッションやロールプレイ、授業後のグループワークなどで構成されているので、基本的にはハードスキルで書いたことがそのまま当てはまります。
ただし大きな違いはソフトスキル系のロールプレイやグループワークでは話術が求められたり、抽象的な議論が非常に多いという事です。この違いはこれまで高純度なドメ人材(笑)として生きてきた私にとってはかなり苦労する要素の1つでした。
例えば、”部下に対してどのようにフィードバックを行えば効果的か”というテーマについての授業だったとします。授業の前半で基本的なセオリーを学び、その後2人1組に分かれて上司役と部下役でそれぞれロールプレイをしてフィードバックをする、といったワークがあります。この時に頭ではセオリーを理解していても、それを第二言語で言葉巧みに表現していくことは非常に困難です。また授業によっては人が陥りやすいバイアス(偏見)の話や倫理の話などに話題が及ぶため、正直日本語でも抽象度が高くて理解するのに時間がかかる、というような内容を英語で学ぶことは本当に大変でした。
アメリカで就職してマネジメントを行っていくには、仕事のパフォーマンスとは別にこういうことやっていかなくてはいけないのか、と思うとアメリカで就職して昇進してくことの難しさを目の当たりにしました。
なので、ソフトスキルについては、知識的には学べたもののそれを実践(練習)するだけの英語力がなく正直言うと消化不良という結果になったと思います。

その他の学び

さて、ここまで主にハードスキルとソフトスキルについて書いてきましたが、最後に少し違った視点でMBAの授業の価値について書きたいと思います。
まず1つ目は、選択科目についてです。上記に紹介したハードスキルやソフトスキルに関する授業は、必修科目が中心になります。そのため、知識を得るだけならMBAの授業の価値は薄い、という書き方をしました。
しかしMBAの授業の本当の魅力は選択科目にあると思います。多種多様な科目があるので、これらの選択科目については学ぶだけでも本に書いてある知識以上のもの、もしくはそんな内容は一般書籍化されていない、というようなものも多くあります。その代表例がプロジェクトベースで行われる授業です。基本的な知識は必修科目で身に着けているという前提で、実際の企業相手にコンサルティングを行う授業や、新しいビジネスアイディアを考える授業など、色々な機会があります。これらの選択科目は正にMBAに来ないと学べない、という要素が盛りだくさんです。
私はまだ1年生なので、選択科目には限りがありましたが、それでも必修科目とは全く違う毛色の授業ばかりだったので、次年度が非常に楽しみです。

そして最後にもう1点、授業を通じて非常に学びが多かったことがあります。それは「圧倒的マイノリティの中で(英語で)いかに自分の価値を出すか」という事です。これまで記載の通りMBAの授業はグループワークが非常に多いのですが、自分のことなど全く何も知らない人たちに対してどうやって価値を出すのか、またリーダーシップを発揮するのか。これは非常に難しく学びの多い体験でした。
日本の大学や企業なんてアジア人が少しだけ知っている程度で、アメリカ人は全く知りません。つまりこれまでの自分の経歴(学歴や職歴)は無に等しい状況です。MBAに来る日本人の多くは、所謂(日本では)高学歴であり(日本の)有名企業に勤めていた人が多いと思います。恐らくこれまでの人生の中でも周りから無意識に「優秀」とか「頼りになる」というイメージを持たれていた方が多いのではないでしょうか。しかしMBAではそれらを全て剝がされて裸一貫で勝負しなくてはいけません。しかも自分が圧倒的にマイノリティで言語も片言である、という状況でです。
当然最初のうちはネイティブ同士の議論になかなか入っていくことが出来ず、全く貢献できない日が続きます。そして周りも自分に対して全く期待をしてくれません。この状況は本当に辛いものがありました。
そこからどうやって脱するか、どうしたら貢献できるか、どうやったら自分の価値を出せるのか、リーダーシップを発揮できるかを考えて、不安を抱えながらも行動に移していく、という経験はものすごくストレスが溜まりましたが本当に良い経験でした。
そして悪戦苦闘しながらも、徐々に徐々に貢献できることが増えていく、リーダーシップを発揮できる場面が増えていく、という体験は今後の人生において、ものすごくプラスになる経験になったと思います。

最後に

今回は授業編という事で、1年目を終えて感じたことを素直に書いてみました。もちろんスクールの特色やプログラムによって差は出てくると思いますが、MBAを目指している方、興味がある方などに一例としてご参考になれば幸いです。
次回は"キャリア"という視点で書いてみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?