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六月のチェリーセージ

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連作詩「あかんべ草」

ひとむらの花の移ろいを、一月間記録する。作品としての、構成と流れが完成しているか、とりあえずまとめてみました。

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チェリーセージ

初夏だというのに寒い

今年もあかんべーしながら

二枚舌でこいつらが群れ咲く

おお痛快に笑いのめされ

私はのけぞる

これは快感

皮肉な風は地球からのお便り

歴史を旅するとすべては

廃墟となる

少年の時に与えられた啓示

美しく廃墟たれわが街よ

私が歩む世界は

すべて滅びにむかい

美しい二枚舌で愛欲を味わう

****

チェリーセージの咲く庭に

いつも君がたたずむ夕刻

すこし疲れた顔で

わざと他人のふりをして

遠くを見ている

初夏の風のように

ぼくがあなたをつつみこんで

初めての出会いのように

目と目を合わせ

夜を迎えるために

チェリーセージが揺れる庭で

****

風のいたずらに

揺れて震える小さな花

指先でそっと支えて

微細な造形を覗いてみる

ぼくの指に

あなたが指を

添える

チェリーセージが震えるのは

風のせいではなく

ぼくとあなたの思いの

はかなさのまじわり

****

つつじとあやめが枯れはじめ、今日はチェリーセージの悦楽。

雀のなかには、巣だったばかりなのか、体は大きいのに、まだ羽をふるわせて、餌を口移しでもらっているのがいます。親鳥はまだ子ばなれしないでつきっきりなんです。

雀の子身をふるわせていざ生きん

花のうつろう星にうまれて

****

赤く群れていたチェリーセージが

白い群れに変わっていた

赤い花を指で触れ

あなたの指が重なった

あの夕暮れから

幾日もたたない

今朝ひとりで歩みながら

こうして春を見送るのは

祝福だろうか哀しみだろうか

****

あかんべ草と僕が名付け

チェリーセージよと

あなたがただす

そっとふれた指先の感触

幾重にもよみがえり震え誘う

まだ肌寒い初夏の花の記憶

梅雨空のしたもうまばらな二枚舌

やはりあかんべ草と

書きしるしましょう最後の名残に

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