六月のチェリーセージ
連作詩「あかんべ草」
ひとむらの花の移ろいを、一月間記録する。作品としての、構成と流れが完成しているか、とりあえずまとめてみました。
🍒🍒🍒🍒🍒🍒
チェリーセージ
初夏だというのに寒い
今年もあかんべーしながら
二枚舌でこいつらが群れ咲く
おお痛快に笑いのめされ
私はのけぞる
これは快感
皮肉な風は地球からのお便り
歴史を旅するとすべては
廃墟となる
少年の時に与えられた啓示
美しく廃墟たれわが街よ
私が歩む世界は
すべて滅びにむかい
美しい二枚舌で愛欲を味わう
****
チェリーセージの咲く庭に
いつも君がたたずむ夕刻
すこし疲れた顔で
わざと他人のふりをして
遠くを見ている
初夏の風のように
ぼくがあなたをつつみこんで
初めての出会いのように
目と目を合わせ
夜を迎えるために
チェリーセージが揺れる庭で
****
風のいたずらに
揺れて震える小さな花
指先でそっと支えて
微細な造形を覗いてみる
ぼくの指に
あなたが指を
添える
チェリーセージが震えるのは
風のせいではなく
ぼくとあなたの思いの
はかなさのまじわり
****
つつじとあやめが枯れはじめ、今日はチェリーセージの悦楽。
雀のなかには、巣だったばかりなのか、体は大きいのに、まだ羽をふるわせて、餌を口移しでもらっているのがいます。親鳥はまだ子ばなれしないでつきっきりなんです。
雀の子身をふるわせていざ生きん
花のうつろう星にうまれて
****
赤く群れていたチェリーセージが
白い群れに変わっていた
赤い花を指で触れ
あなたの指が重なった
あの夕暮れから
幾日もたたない
今朝ひとりで歩みながら
こうして春を見送るのは
祝福だろうか哀しみだろうか
****
あかんべ草と僕が名付け
チェリーセージよと
あなたがただす
そっとふれた指先の感触
幾重にもよみがえり震え誘う
まだ肌寒い初夏の花の記憶
梅雨空のしたもうまばらな二枚舌
やはりあかんべ草と
書きしるしましょう最後の名残に
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?